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第114話  襲撃前

 翌日、まあ上級街ならそれなりに他の貴族もいるだろうから、中級街に比べて多少は気が楽かな?なんて思っていたら、


「昨日の街に行きたいです!もっと色々見たいです!」

「私もです!活気に溢れている中級街をもっと見たいです!」


 と、妹2人が言い出した為、二日連続で中級街に行くことになりました。

 確かに上級街と中級街では、街の活気が全然違う。

 上級街は、その名の通り上級階級の人が多くいる為、街中には犯罪の抑止として中級街とは比べ物にならない数の衛兵がいる。

 ちょっとした騒ぎでも、すぐに多くの衛兵が集まって来るおかげで、犯罪の件数は中級街と比べて極端に低い。

 その反面、街全体が落ち着いている、と言うか、静かすぎる。

 上流階級の人は、この雰囲気を大事にしている節があるけど、僕からしたら、いや、活気に溢れたスティード領ノーティスの街で育ったスティード家の子供達からしても、退屈な街だとしか思えない訳です。

 そんなことを言うと、これだから田舎者は、とか他の貴族達から言われてしまいそうですが、こちらから言わせてもらえれば、こんな眠ったような街のどこがいいのか、さっぱり分からない。

 人が多く集まれば、それだけ賑やかになるのは当然の流れなのに、そこに防犯がどうのとか言い出して、金のあるヤツ等が自分を守るために警備を厳重にした結果、自由に騒ぐことのできない窮屈な空間を作ってしまっただけではないのか?

 で、自分達でそんな結果にしてしまった金や権力のある連中が、上流階級の住む場所=静かで落ち着いた場所、とか言い出しただけではないだろうか?

 なんて、以上、我が父グレン=シオン=スティードが言っていた、スティード家から見た退屈極まりない上級街の感想でした。

 それを聞いた時、僕も激しく同意しましたけどね。

 犯罪発生率は確かに上級街よりは高いけど、人々が自由に生き、騒ぎたい時に騒げる中級街の方が、多くの人が集まり生活している空間としては自然だと、僕は思います。

 常に抑制された安全な場所と、危険もあるけど自由も認められる場所と、どちらが好きか?と問われたのなら、僕は後者を選びますね。

 もちろん、その答えは人それぞれでしょうから、どちらが正しいかなんて言えませんが、少なくとも我が妹達は、僕と同じ意見のようです。

 つまり何が言いたいのかと言いますと、まだまだ遊びたい盛りの妹達からしたら、退屈な上級街での買い物よりも、活気に溢れた中級街の方が面白い、という事です。

 なので本日の予定は、まずは中級街を周り、次に上級街へ移動して少し遅めの昼食を摂る。

 そしてそのまま上級街を周る、となりました。

 で、僕達を乗せた馬車は今日もまた、中級街の大通りを走っています。

 走ると言っても、ここでは馬車はゆっくり移動しているので、ほぼ歩いていますね。

 今はいくつかの店を周り、上級街に移動する前に公園に行こう、となったので、そこに向かっている途中です。

 昨日と同じく、2人の妹も展望室から外の景色を見てはしゃいでいて、お母様達は上級街に移動したらどこに行こうかと話し合っている。

 僕達男衆は、束の間の平穏を満喫すべく、ソファーで寛いでいます。

 寛いでいる、と言うより、休んでいます。

 ええそうです。

 昨日に引き続き、疲れているんですよ!

 精神的に!

 理由は昨日と同じで、女性の買い物に付き合ったからです。

 こう言ってしまうと、まるで女性の買い物が悪と言っているようなので補足しますが、単純に僕とフィル、そしてお祖父様の3人は、買い物を楽しめるタイプではない、と言うだけですからね?

 だって、僕はこの世界に転生してからまともに買い物をした経験が少なく、転生前も、人助けをするために体を鍛えることが趣味だったから、そこまで買い物好きでは無かったんですよ。

 たまに雪乃、こっちの世界に転生したセシリアだけど、の買い物に付き合ったくらいかな。

 フィルは王族だから、自由に街に買い物に行くこと自体が珍しく、と言うか、初めてじゃないかな?

 そしてお祖父様。

 お祖父様は貴族の当主を長くやっていた、と言うより、結婚して奥さんがいたのだから、このような状況は何度も経験していると思うのだけど、どうしてここまで疲れているのだろうか?

 率直に聞いてみたら、


「私は昔からこういうのが苦手でな。正直、買い物に時間を使うくらいなら、体を鍛えていた方が何倍もマシだ」


 とのことでした。

 お祖母様、よくこんなのと結婚したよ。

 お祖父様の事を伴侶として、どこが良かったのか聞きたかったけど、もう故人なので分からないですね。

 まあ、今でこそこうだけど、若い頃はもっと違ったのかな?

 ・・・・・・・あり得ないか?

 以上の理由?で、僕達3人は3人とも、買い物、特に女性の買い物に慣れていない為、このように疲れているのです。

 決して、女性の買い物が悪いと言いたいわけでは無いですからね?

 現に、お連れの女性と楽しそうに買い物をしている男性も多く見かけています。

 昨日、僕達と話していた男性は、こちら側の人間だっただけの話しですね。


 さて、脱線してしまっていたので話しを戻しましょう。

 こんな状況でも僕は『支配圏』を展開し、常に周囲の状況を把握し続けています。

 そして、少し面倒なことになりつつあるんですよね~。

 昨日から僕達を監視していた連中が集まり出し、つまらない事をやろうとしているんですよ。

 さっき僕達が出た店に数人が入り、店員さんに僕達がどこに行ったのか聞いていましたよ。

 今日も貴族であることを隠しているので、僕達は裕福な一般人として認識されています。

 だから、相手が貴族だったのなら絶対に行先などは教えないであろう店員さんも、結構簡単に情報を渡してしまっている。

 監視している奴は、普通に一般的な格好をしていて、


「さっき出て行った女性に一目惚れした。告白したいから、どこに行ったか知っていたら教えてもらえないだろうか?」


 と、銀貨を数枚握らせて、僕らが公園に向かっているとの情報をゲット。

 その事を素早く仲間に伝え、僕らを襲おうとしているのですよ。

 もちろん、自分達が直接手を下すつもりは無いようですね。

 下級街にいるならず者を1人銀貨5枚で大勢雇い、自分達は高みの見物を決め込むようです。

 雇った数は150名。

 目的は僕とお祖父様以外の誰かの誘拐。

 ただし、フィルが王子だという事は分かっているので、なるべく手を出すな、とは言われているようです。

 なるべく、であって、多少ケガをさせるのは構わない、と言っていましたね。

 標的は、僕の家族であるお母様、ジェシー母様、アン、シャルの4人。

 この4人から最低1人と、おまけとして付き添っている数名のメイド。

 つまり女性狙いという事ですね。

 ちなみに誘拐に成功した場合は全員の報酬が倍になり、一番貢献した者、つまりMVPにはボーナスとして金貨10枚が支払われる。

 さらに誘拐した相手は自由にしていい、という特別手当まで付いているみたいです。

 銀貨1枚は日本円にして約1万円で、金貨1枚は約100万円の価値があります。

 この誘拐が成功した場合、合計で約2500万円の報酬が支払われることになる。

 時間にして1時間もかからない仕事で、参加するだけで5万円貰うことができ、成功すれば更に5万円貰える。

 さらにさらに、誘拐に一番貢献した者は1000万円も貰う事ができる。

 おまけに、誘拐した女は好きにしてもいい、という条件だ。

 ああ、コイツ等に対してフツフツと殺意が湧いて来た。

 普通、ここまで美味しい仕事だと怪しいと思いそうなものですが、彼らは提示された報酬に意識を全て持って行かれていた。

 だから、彼らならず者たちは誰1人疑う事も無く、喜んでこの仕事を引き受けた。

 まあ、僕とお祖父様がいれば、たかが150人程度なら、一切の被害を出すことなくあっさり壊滅させられるんですけどね。

 でも、お母様達に余計な心配をさせたくないし、何より妹達を危険な目に遭わせたくない。

 まあ、危険度は限りなくゼロですけど。

 じゃあ、どうするか?

 そんなの決まってますね。


「すみません、お祖父様。どうやらこの先で、良からぬことを企んでいる命知らずな連中がいるようなので、ちょっと再起不能にしてきます」

「ほう、それは面白そうだな?どれ、私も行くとしようか」

「ダメです」

「私も行くとしよう」

「だからダメです」

「私も行くとしよう!」

「だからダメですってば」


 ある程度予想はしていましたが、やっぱりお祖父様も一緒に行くと言い出した。

 しかも、とてもいい笑顔で。

 いや、この状況にストレスが溜まっているのは知っていますよ?

 けどね、


「僕とお祖父様がいなくなったら、誰がこの馬車を守るのですか?」

「そんなの、護衛の騎士に任せればよかろう?あ奴らなら、賊が数十人来ようが難なく撃退できるぞ?」

「ダメです。お祖父様には万が一に備えて、ここで待機してもらいます。気付いているでしょう?僕達が監視されていることは」

「え?」


 横で黙って聞いていたフィルが、監視されている、と聞かされてビックリしているけど、今は無視するよ。


「まあな。数は分からぬが、この感じだと10人以上か?」

「正確には181名です」

「え!?」

「ほう、そんなにか?」


 人数にビックリしているフィルは、今回も無視。


「で、今動いているのはこの内の36名です。残りの145名はまだ監視をしているので、僕達がいない間に襲われでもしたら、負けることは無くても被害は出てしまうでしょう。ですが、そこにお祖父様がいれば、それだけで牽制になって襲撃されることはまずないでしょう。ですから、お祖父様はここでお留守番していてください」

「う~む・・・・では、レオが残って、私が潰しに行くのはどうだ?」

「賊がどこにいるか知らないでしょう?僕は教える気なんて有りませんからね?」

「ぐぬぬぬ・・・・いいだろう。大人しくここで待つとしよう・・・」


 やっとお祖父様が諦めてくれました。

 けど、顔が・・・・・

 仕方がないなぁ。


「ありがとうございます。今度、ダストレア大樹海の奥で、超級の魔物と戦わせてあげますから、少しだけ我慢してください」

「それならば、今回は我慢してやろう・・・・だがな、レオ。今の約束、決して忘れるなよ?いいな?」

「え、何?今のどういう事?」


 よし、お祖父様の買収、もとい、説得成功!

 今度領地に帰った時にでも、一緒に狩りに行けばいいよね?

 それと、


「じゃあフィル。ちょっと僕は出かけてくるけど、今の会話は深く考えない方がいいからね?」

「え、あ、うん・・・分かった・・・」


 よし、親友の説得も完了!

 説得、だったかな、今の?

 まあいいや!


「では行ってきます」


 そう言って僕はリビングルームを出て、フィルから見えない位置まで来たら『空間転移』で外に出た。

 この『空間転移』は、一度行ったことがある場所にしか行けません。

 なので、賊が集まっている場所は分かっているのですが、そこは行ったことが無かった為、その近くまで転移しました。

 その後、すぐに移動を開始し、賊が集まっていた建物、と言うか倉庫に侵入。

 そこでは丁度、僕らの行先を聞き出した監視者の1人が、僕らの目的地を伝えていた。


「なるほど、あそこの公園か。それなら馬車で移動している奴等より、徒歩で移動する我他の方がはるかに速いな」

「そうだな。何せ馬車だと、その幅のせいで通れる道に限りがあり、遠回りをしなければならないからな」

「ならば今すぐ移動を開始すれば、人払いをして、一般人を装って待ち伏せもできるな」

「よし、ならばすぐに行動を開始する!」


 説明じみた会話、ありがとう。

 いや、例を言うのは違うか?

 そして、その中の仮面をつけたリーダーっぽいのが少し高い台に乗り、声を上げた。

 あれ?あの仮面の男って、もしかして・・・


「待たせたな!いいか、お前ら!何度も言うが、馬車から出てくる男は無視しろ!メイド以外の女だけを狙うのだ!誘拐に成功すれば報酬は倍!さらに、一番貢献した者には金貨10枚だ!」

「「「「「うおおおおおおっ!!」」」」」


 ならず者×150名が、改めて報酬を聞いて盛り上がる。

 と言うか、雄叫びを上げている。


「そして約束通り!誘拐した女はお前達の好きにして構わない!余裕があれば、メイドも攫ってもいい!お前達が何をしようが、私達は一切関知しない!もちろん!そのことでお前達に何らかの罰が及ぶことも無い!それは我らの主人が守ってくださる!」

「「「「「うおおおおおおおおおおおおっ!!」」」」」


 さっきよりも大きな雄叫びが響いた。

 その理由は、女を好きにしてもいい、と言う言葉に、コイツ等が興奮しているせいだろうね。

 でも、お前らに好きにされる女ってのは、僕の家族なんだよね?

 普通に考えて、お母様かジェシー母様のどちらかだよね?

 それと、一緒にいる、元は僕付きの、現シャル付きのメイドであるヒルデさんを始め、4名のメイドも標的にされちゃうんだよね?

 さすがに幼い妹達に手を出すとは考え・・・・いや、ピエナスの件があるから、否定できない・・・・

 ただ、このならず者たちはザカート侯爵傘下の監視者に唆されているだけで、それを指示しているのは監視者なんだよね。

 なら、ならず者たちは、ちょっと脅すくらいでいいかな?

 監視者は当然、そんなふざけた事を考え、実行させようとしている事を後悔させてやりますよ。


「よし、それではお前ら!行って・・・・」

「行かせませんよ」


 殺気を放って発した僕の言葉に反応し、その場にいた全員がこっちを向いた。

 さて、と。

 お仕置きを開始しますか。

誤字、脱字など、お気付きの点が御座いましたらご指摘をお願いいたします。

もし、この作品を読んで面白い、と思って頂けたら幸いです。

気が向いたらで構いませんので、評価もお願いいたします。

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