第111話 王子に対する我が家の対応
僕らがスティード邸に帰って来た時には、もう、妹2人は寝ていました。
僕とお父様が帰って来るのを、頑張って起きて待ってくれていたらしいのだけど、睡魔には勝てず、眠ってしまったそうです。
今は時間にして、夜の9時頃ですからね。
初めての王都に興奮していた幼い妹たちが寝てしまうのは、仕方がないですね。
ついでに2人のお母様も寝ていて、お祖父様は冒険者ギルドに顔を出しに行ったまま、まだ帰っていないそうです。
お祖父様は、王都に来ると必ず冒険者ギルドに顔を出し、大抵の場合、そのまま夜遅くまで宴会になるそうです。
スティード家の当主をお父様に譲ってからは、冒険者となったお祖父様にとって、冒険者ギルドの仲間と大騒ぎするのが楽しみの1つになっていると、以前本人から聞きましたね。
元々アステリア王国では有名な騎士であり、あの性格も合わさって、多くの冒険者にリスペクトされているとか。
せっかくだから、僕の親友であるフィルを紹介したかったんだけど、それは明日にしよう。
「フィルは、レオと話したいことがたくさんあるだろう?滞在している間は、同じ部屋でいいか?」
「そうですね。ではグレン伯爵、レオと同じ部屋でお願いできますか?」
「分かった。使用人たちに準備させるから、しばらく広間で寛いでいてくれ。あ、夕食は食べたか?」
「いえ、実はまだでして・・・・父上を待っていたら、食べ損ねてしまいました」
「そうか。実は私達もまだだったから、一緒に食べるとしよう」
と、言う訳で、フィルは僕の部屋で泊まることになりました。
それにしても、相手が王子なのにお父様の接し方はフランク過ぎないか?
それでいいのか、伯爵?
あ、でも、考えてみれば、ウチの当主はプライベートでは国王にも先代国王にもタメ口だったっけ?
ついでに、王女が義理の娘になる予定だから、別にいいのかな?
フィル自身も気にしていないみたいだし・・・・よし、気にするのを止めよう。
あと、ウチの使用人の対応が冷静過ぎるね。
王子が来たって言うのに、慌てず騒がず、いつも通りに仕事をしている。
さすが何度も国王や王女が遊びに来るから、いい加減慣れてしまったようですね。
広間で3人で話していると、程なく食事の用意が出来たという事で、食堂に移動。
その後は風呂に入り、僕の部屋に行くと、ベッドが2つに増えている、何てことはありませんでした。
え、何これ?フィルと一緒のベッドで寝ろってこと?
とか考えていたら、お父様が部屋に入って来て、
「お前、空間収納の中にベッドあるって言っていたよな?それを使えば問題ないだろう?」
「あ~、ありますね、確かに。じゃあ、そうします」
そう言って、僕は空間収納の中からベッドと布団一式を取り出し、もとからあったベッドの横に置く。
すでに寝ている妹たちを起こさないように、ゆっくり丁寧に置いたので、音は一切出ていませんよ。
このベッドは言うまでもなく、僕がダストレア大樹海で寝泊まりしていた時に作ったベッドです。
見た目は簡素だけど、素材にこだわり、技巧にもこだわった一品であります。
実はちょーっとだけベッド作りにハマリまして、空間収納の中に、まだベッドが134個あったりします。
ダストレア大樹海を歩いている時にですね、あ、あの木いいなぁ、何て思ってしまったら、その木を使ってベッドやイス、テーブルを作っていたんですよ。
いや、だってね、ただ樹海の中を歩いているだけってね、暇なんですよ?
そりゃあ最初は、色々な発見があって楽しかったんですけどね、そんなのが何ヵ月も続くとね、飽きるんですよ、皆さん!
だから、せっかく物作りのスキルがあるんだから、気分転換に色々作ってみたんですよ。
その結果、空間収納の中には、とんでもない数の家具類があったりします。
家具屋が普通に開けるくらいの品揃えですね。
副産物として、物作りの作成スピードが桁違いに早くなりました。
やったね!
この能力、いつか役に立つことでしょう!
多分、きっと・・・・
「じゃあ、フィルはそっちのベッドを使ってよ。僕はこのベッドで寝るからさ」
フィルには初めから置いてあった、見た目は豪華なベッドを使ってもらい、僕は今取り出したベッドを使おう。
さすがに客人に、しかも王子様に、こんな見た目普通のベッドを使わせることは出来ないからね。
と、思っていたら、
「え、いいよ。僕は突然お邪魔したんだから、レオがこっちのを使いなよ。僕はそっちの、レオが今出したので良いよ?」
なんて言い出した!
お前本当に王子か!?
こんな見た目普通のベッドで良いのか!?
良くないだろう!?
と、言いたくなるのをこらえ、
「いやいや、客人には良いのを使ってもらいたいからさ、遠慮しなくていいよ?それに、このベッドはダストレア大樹海にいる間に使っていたから、僕にとってはこっちの方が使い心地が良いんだよ」
「そう?レオがそう言うなら、こっちのを使わせてもらうけど・・・・いいの?」
「いいって、いいって!気にしないでよ!」
これでベッド問題が解決したね。
今日は色々と説明ばかりさせられて疲れたから、もう寝よう。
そう思ってベッドに入ると、
「じゃあレオ!昼の続きを話してよ!」
しまったーーーーー!
そうだった、フィルは昼の話しの続きを聞きたいがために、夕食も食べずに謁見が終わるのを待ち、僕の家まで来たんだった。
せっかく来たのに、疲れたから明日にしよう、なんて言えないよ・・・・
だって、フィルの顔が期待に満ち満ちているんだよ?
表現するなら、目をキラキラと輝かせているんだよ?
そんな親友を、裏切れないよ。
だから、僕が取った行動は、
「じゃあ、僕がノイシュヴァン山脈の龍王と友達になってからの話しだけどね・・・」
結局、フィルが睡魔に負けて落ちるまで、ずっと話し続けました。
おおよそ、夜中の3時くらいだろうか?
疲れた・・・・・僕も寝よう・・・・・
しかし、僕はまたしても忘れていた。
明日、何をする日だったのかを・・・・
翌日、僕とフィルの目覚めは決して良いとは言えなかった。
その原因は、昨夜遅くまで話しをしていたことによる寝不足ではない。
では何かと言うと、
「レオお兄様、朝です!朝が来たです!起きてください!」
バンバンバンッ!
「ちょっと、シャル!?ダメだよ!ここにはレオお兄様だけではなく、フィリップ王子殿下もいるんだよ!?静かにしなさい!」
バンバンバンッ!
「でも、今日は皆で街でお買い物する日なのです!レオお兄様と約束したです!でも朝になったのにレオお兄様が起きてこないです!だから起こしてあげるです!」
バンバンバンッ!
「分かったから、シャル、分かったから!もっと静かに、優しく起こしてあげて!」
バンバンバンッ!
シャルは早く買い物に、と言うか、初めての王都の街に行ってみたいようで、とにかく寝ている僕を一生懸命起こそうとしてくれている。
大声で。
そしてアンは、フィルに気を遣って騒いでいるシャルを大人しくさせようとしているんだろうけど、気付いているのかな?
アンの声も、結構デカいよ?
そして、さっきからずっとバンバンと鳴っているのは、シャルが寝ている僕の上に跨り、布団ごと僕を叩いている音だったりします。
そしてこの大声に、僕だけでなく、隣のベッドで寝ていたフィルも起きている。
ただ、フィルは自分に対して気遣ってくれているアンを更に気遣い、寝たフリを続けているみたいだ。
ここで起きてしまったら、きっとアンがフィルに謝るのが分かりきっているからだろうね。
けど、ここでフィルが気を遣っているとアンに悟らせてはいけない。
アンがその事に気付いたら、きっと落ち込んでしまうだろう。
では、この状態をなるべく円満に解決する方法は何か?
それは、僕がとっとと起きることだろう。
そして、起きた僕がフィルを起こせば、あくまでフィルは僕に起こされたことになるから、妹たちが騒いだのとは関係なし、ってことで万事解決だね。
だから、
「ふあぁっ、ん~~~~~っ!ああ、おはよう、シャル、アン。起こしに来てくれたんだね?ありがとう」
まずは起きることにしました。
と言うか、僕が起きなければ話が進みませんから。
「レオお兄様!おはようございますです!」
「おはようございます、レオお兄様。シャルが騒がしくしてしまい、すみませんでした」
うん、シャルだけじゃなく、アンもかなり騒いでいたよね?
きっと、気付いていないだけだろうけどさ。
ここは黙って、起こしてくれた2人に感謝して頭を撫でる。
「騒がしいい?何の事?僕は今、気持ちよく起きた所だよ?」
「そうですか?それならいいのですが・・・」
「それよりもレオお兄様!今日は街に行く日です!早く行きたいです!」
「うん、そうだったね。でも、ちょっと待っててもらえるかな?まずはフィルを起こさないとね?」
まずは2人に断りを入れ、と言うか、主にシャルにだけど、そして、隣のベッドで寝たフリを続けているフィルを起こす。
「フィル、フィル。朝だよ」
軽くフィルの体を揺すると、すぐにフィルが体を起こした。
よし、これでフィルが起きたのは僕に起こされたからであって、妹達が朝から騒いだせいではなくなったね。
「ああ、おはよう、レオ。それと、こちらはレオの妹のアナスタシアとシャルロットかな?初めましてだね。この国の第一王子、フィリップ=ヴィルヘルム=アステリアだよ。それとも、メルティウム殿の婚約者であるクラリスの弟、と言った方が分かりやすかな?」
そこからフィルと妹達の自己紹介が始まり、その後、僕らは着替えて食堂に移動した。
もちろん、着替え中は2人の妹には部屋の外に出てもらったよ。
そして食堂に到着すると、そこにはお父様とお祖父様、お母様とジェシー母様がいたので、そこでもフィルは自分から挨拶をしていた。
って、お前王族でしょ!?
普通は臣下であるこっちから挨拶するもんじゃないの!?
あ~、ほらお父様とお祖父様!
さもそれが当然だみたいに構えてないで、せめて席を立つくらいはしてくださいよ!?
お母様も!
確かにフィルは僕が連れて来た友達だけど、そんな息子の友達に挨拶するお母さんみたいな反応はどうなの!?
そしてこの中で唯一、ジェシー母様だけが膝をついてフィルに挨拶していた。
さすがはスティード家が誇る常識人!
なんて関心していたら、
「ジェシカ様、頭を上げてください」
ん?今ジェシカ様って言ったか、フィル!?
何で様付けしてんの!?
「貴女は私の義理の兄となるメルティウム殿の母上なのですから、私に頭を下げる必要なんてありませんよ。もちろん、グレン殿、ジルベスト殿、クリスティーナ殿も、です。私はこの家にお邪魔させていただいている身ですので、どうかそのようにお願いします」
と、フィルは僕の家族に頭を下げてお願いをしていた。
だから!お前は王族だよな!?臣下の家族に頭を下げるな!
と言う、頭を引っ叩いて全力でツッコみたい衝動を抑える。
だって、ジェシー母様を除いた全員が、それを聞いて即座に了承してしまったのだから。
ジェシー母様、諦めましょう・・・・
それと、やはり夜遅く、と言うか、明け方まで冒険者ギルドで大騒ぎしていたお祖父様は、相当な量のお酒を飲んだにかかわらず、全く酒が残っていない!
何でも、どんなに酔っていても、僕が以前渡した状態異常無効化のアミュレットを装備すれば、すぐに酔いが醒めるそうです。
なので、宴会中はアミュレットを外して酒を楽しみ、帰宅する前には装備して酔いを醒ましているそうです。
なるほど。
誤字、脱字など、お気付きの点が御座いましたらご指摘をお願いいたします。
もし、この作品を読んで面白い、と思って頂けたら幸いです。
気が向いたらで構いませんので、評価もお願いいたします。




