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第110話  肉は正義

 その後も話しを続け、気付いたら夜になっていました。

 今日は本当にやることだらけで、長いよ・・・・


「では、私はこれで失礼させていただきます」

「お、それじゃあ、私も帰る準備をするかな。馬車の用意をさせてくるから、レオはもう少しここで待っていなさい」


 ルドルフ伯爵とお父様が退室し、この場には僕とこの国のトップ3であるエドおじさんとウィリアム先王陛下、それとカルナ宰相だけが残った。

 あれ?この3人は帰らないのかな?

 そもそも、お父様と一緒に行った方が、早いんじゃない?

 と、思っていたら、


「グレンめ、気を効かせてくれたようだな」

「そのようですね、先王陛下」


 お父様が気を効かせてくれた?何で?

 え?この後まだ何かあるの?


「レオナルド、頼みがあるんだけど、聞いてくれるかい?」


 エドおじさんが、これ以上ないくらい真剣な表情で頼みを聞いてほしい、と来たよ。

 これ、断れないですよね~・・・


「もちろん、無理なら無理で構わないのだが、どうだ?」

「いや、他ならぬエドおじさんの頼み事だから、可能な範囲で何でも協力するけど、どうしたの?」

「おお、そうか。ありがとう!」


 エドおじさんだけでなく、両横にいる2人までホッとした顔をする。

 え、ホントに何なの?

 僕、何をさせられるの?


「実はな・・・」


 ゴクリ、と生唾を飲み込む。

 さあ、何でも来い!

 よほどの無理難題でないのなら、何でも引き受けましょう!


「実は、ミノタウロスゼファロスの肉を譲ってはもらえないだろうか!?」

「・・・・・・へ?」


 まさかの肉の話しでした。

 確かにあれは、幻の、とか、伝説の、とかが頭に付く極上にして超希少な食材だけど、そこまで真剣になるほどか?

 いや、よく考えてみたら、そうなってしまうよね。

 数百年に1度しか出回らない、という代物でしたね、アレ。

 でも、僕はこの3年間で相当量食べたから、ありがたみが殆ど無いんですよね~・・・

 それに、僕の『空間収納』の中には、まだ10体分くらいあるし。

 あ、そう言えば、ミコトさんと初めて会った時に振る舞ったのも、ミノタウロスゼファロスの肉でしたね。


「1度グレン経由で食べさせてもらったけど、あの味が忘れられないんだ!グレンが言うには、レオならまだいっぱい持っているだろう、という事だったから、譲ってはもらえないだろうか!?あ、もちろん対価は払うよ!ねぇ、どうだい!?ねぇ!?」


 エドおじさんが僕の方を掴み、ガクガク揺すりながらまくし立てて来た。

 今まで見たエドおじさんの中で、最も真剣で、最も鬼気迫る何かを感じています・・・


「落ち着いてよ、エドおじさん!ある!まだあるから、譲るよ!」

「「「本当か!?」」」


 何だコレ?

 国の最高責任者3人が、まだ10歳の子供に肉をねだるって・・・・

 よし、考えないようにしよう。


「まだまだ僕の『空間収納』の中に保管してあるから、譲りますよ」

「本当か!?では、対価だけど・・・・レオ、何が欲しい?」

「いや、別に、対価なんて・・・」

「この王都にある屋敷などどうだ!?いくつか空いているのがあったな!?」

「確か、その中で一番の優良物件は、王城まで2分のガラシナ公爵家が建てたはいいけど、その後財政難に陥り、国で買い取った屋敷ですね。結局ガラシナ公爵は、1度も屋敷に入れぬまま手放さざるを得なかったから、状態はいいはずです!」

「おお、それだ!どうだ、レオナルドよ?」


 別に欲しい物なんて無いから、無償で譲ろうとしたんだけど、なぜかウィリアム先王とカルナ宰相が、王都の超1等地にある元公爵邸で手を打とうとしているんですけど!?

 ちょっと待ってくださいよ!?


「いや、あの、対価なんて要りませんよ!?タダで上げます!献上しますから!」


 僕限定ではありますが、手に入れようと思えばいつでも手に入る食材ですからね。

 僕にとっては、そんな貴重な物でもないんですよ。


「え・・・いいのかい?だって、ミノタウロスゼファロスだよ!?」

「良いんですよ。だって、食べたくなったらダストレア大樹海に狩りに行けばいいんですし」

「本当か?本当にいいんだな!?」

「やっぱり今の話しは無し、とか言うなよ!?そんなことを言われたら、私達は一生お前を恨むぞ!?」

「大丈夫ですから、落ち着いてください。ね?」


 少しずつではあるけど、やっと3人が落ち着いてくれましたよ。

 そんなにあの肉が食べたいんですね。


「では、ミノタウロスゼファロスはどこに持って行けばよろしいでしょうか?」

「ん?それならここで私達に直接渡してくれればいいよ?」

「ああ、そうだな。受け取った後、私達が食糧庫まで運ぶから、ここでいいぞ?」

「え、ここでですか?」


 こんな狭い部屋で、あのミノタウロスゼファロスの巨体なんか出したら、部屋が壊れちゃうんだけど、いいのか?

 いや、良くないよね?


「あの、さすがにここでは出せないですよ」

「何故だ?せいぜい10kg程度の量だろう?別にここで良いではないか?」


 先王陛下の言葉に、他の2人も頷く。

 ああ、なるほどね。

 話が噛みあわない理由が分かりましたよ。


「あの、何か勘違いされているようなので、ハッキリ言わせていただきますが、僕が渡そうとしているのはミノタウロスゼファロス1体ですよ?」

「「「は?」」」


 うん、やっぱり勘違いしているようですね。


「ですから、たった10kgではなく、1体丸ごと献上しますよ。重さにして、20tくらいありますし、何よりデカいので、ここでは狭すぎて出すことが出来ませません」


 この後、アステリア王国トップの3人が絶叫したのは、まあ、当然の反応でしょうね。

 そこからまた色々とあったのですが、割愛します。

 結果として、僕が空間収納鞄を5分で作り、その中にミノタウロスゼファロスを入れて渡しました。

 鞄作りで一番時間がかかったのは、王家の紋章の刺繍ですね。

 せっかく王家に献上するのですから、それなりに見栄えが良くないと、と思ってやってみました。

 この鞄の中なら、時間による劣化が起こらない為、いつでも新鮮な肉が食べられる優れ物です。

 これだけの容量を持つ空間収納鞄自体が超々高級品であるため、それを受け取ることをエドおじさんが躊躇ったけど、無理矢理渡しました。

 とかやっていたら、馬車の準備が出来たとお父様が迎えに来てくれたので、本日はそのままお暇しました。

 で、馬車の前まで行くと、そこにはフィルの姿が。

 あ、やっべ、忘れてた。


「うん?フィル、こんな所でどうしたんだい?」


 僕達を見送りに一緒に付いて来たエドおじさんが、なぜがいた息子に声をかける。

 いや、待って?

 歩いている時は全然気にしていなかったんだけど、国王が臣下を見送るってアリなの!?

 ホラッ!衛兵の皆さんが戸惑っているじゃないですか!?

 そんな僕や衛兵さん達の事は無視して、フィルがエドおじさんに近付く。


「父上、本日から数日間、レオの家に、スティード邸に泊まりに行っても良いでしょうか?母上の許可も得ております」

「ああ、いいよ。行っておいで」

「ありがとうございます!」


 なんともあっさり許可を出したエドおじさん。

 え、だって、大事な次期国王ですよ?

 もっと悩んだりしなくてもいいんですか?


「お、そーなのか?じゃあ、歓迎するぜ!でもいいのか、そんな簡単に決めて?」


 さらにそれをあっさり受け入れる我が父。

 受け入れたけど、ちゃんと聞くべきことは聞いているのは流石ですが。


「他の家だったら絶対に許可できないが、お前の家なら話は別だ。お前もいるし、ジルベスト殿もいるのだろう?何より、レオナルドがいる。ならそこは、この国で最も安全な場所ではないか。それに、今日からメルトが城に泊まっているしな。まあ、長男を入れ替えたみたいなものだろう?」

「まあ、そうだな。お前が良いって言うなら、問題ないだろ」


 と、言う訳で、あっさりフィルのお泊りが決定しました。

 そんな軽くていいのか、王族!?

 もちろん、フィルに危害を加えようとする奴がいても、絶対に守りきるけどさ。

 それにしても、エドおじさんもお父様も、よほど疲れているのかな?

 ここにはたくさんの衛兵がいるんだけど、いつもの軽い口調で話し合っているよ?

 いや、今更かな?


「よし、じゃあフィルは俺の所で預かるから、メルトの事は頼んだぞ」

「ああ、任せてくれ。フィル、ゆっくり羽を伸ばして来なさい」

「ありがとうございます、父上。行って参ります」

「レオ、悪いけどフィルのこと頼んだよ」

「承りました」


 そうして馬車に乗り込み、スティード邸へ向かった。

 長かった・・・・

 どれだけ王城にいたんだろう・・・・


 レオナルドが帰った後の応接室にて


「レオナルドは帰ったか?」

「ええ。それと、フィルがスティード家に泊まりに行きました。レオがいるなら、危険なんて無いでしょうからね。たまにはフィルにも、友達と遊ぶ時間を作ってあげたいと思っていたので、許可しましたよ」

「そうか・・・・まあ、レオナルドがいるなら、下手したらこの城にいるよりも安全だろうからな。問題あるまい」

「それよりも陛下。今、先王陛下と、やはりレオナルドには何かしらの対価を渡すべきでは?と言う話になりまして。ミノタウロスゼファロスの肉、丸々1頭分と、高性能な空間収納鞄まで貰ってしまいましたからね」

「うむ。だが、アイツの事だ。一度断ったのなら、そうそう受け取らんだろう?何か良い案は無いか?」

「それでしたら、2年後、レオが領主となる時に、先程のガラシナ公爵邸を与えてはどうでしょうか?どうせ、いずれはザカートに代わって侯爵になるのですから、あの屋敷でちょうどいいのでは?」

「それだ!カルナよ、それまであの屋敷は丁寧に管理させよ!」

「御意!」


 こうして、レオナルドが預かり知れぬところで、貴族街の超一等地に建つ豪邸が下賜されることが決定した。

誤字、脱字など、お気付きの点が御座いましたらご指摘をお願いいたします。

もし、この作品を読んで面白い、と思って頂けたら幸いです。

気が向いたらで構いませんので、評価もお願いいたします。

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