第11話 お披露目会に行こう
ついにやってきました!お披露目会に出発するの日が!この家を囲む壁の外に出る日が!どれだけ待ちわびたことだろうか?もう僕は、早く家から出たくてウズウズしていますよ!貴族とはどれだけ過保護なのか、僕はまだ一度も外に出たことがない。たったの1度もだ!おかしいでしょ!?これが普通なのか?それともウチだけ?
だけどそれも、さっきまでのお話し。あと少しで、僕は念願の外出が出来るのだから!家の外に出たら、土の感触を楽しんでみよう!前世の世界とは、何か違うのかな?走り回るのもいいな!思いっきり外の空気を吸ってみよう!やってみたことがたくさんあるんだよ。朝食を食べ、準備が整い、いよいよその瞬間が訪れた。
初めて玄関をくぐって外に出た。記念すべき、家からの第一歩!もちろん自分の足で外に出る。そして目の前には大きな2台の馬車が、扉を開いて待っている!玄関出て僅か5歩で、お母様に抱きかかえられて馬車の中にイン!
アレ?もう終わり?え?もう出発しちゃうの?じゃあ、せめて外の景色でも見てみようかな?アレ?何でお母様とお祖父様に挟まれて、真ん中に座らされてるの?外が見えないじゃんか!オイ!どうなってんの!?
「メルトとレオは真ん中に座りなさい。私たちが隣に座ろう。どうだ?嬉しいだろう?」
「はい、おとうさま。ありがとうございます!」
僕は抗議しようとしたが、お父様の言葉に嬉しそうに返すメルト兄様を見て、そして、さらに嬉しそうにしている他の大人たちを見て、諦めた。
仕方が無いので、支配圏を発動させて、周りの状況を見ることにした。この目で見られないのは残念だけど、支配圏の内側ならば、何でも把握できるので、これで我慢することにした。
1台目の馬車には、僕たちスティード家の家族が乗り、2台目の馬車にはメイドと執事が乗り、さらに荷物が積んである。
馬車の周りには、護衛の騎士20人が僕らを護るために隊列を組んでいる。全員騎馬に乗っていて、スティード家の旗を掲げている騎士もいる。さすがに護衛も無しに移動するのは危険なようで、貴族ならばこうするのが普通なのだそうだ。
家を囲む壁の門を抜けて市街地に出て、そこも通り抜けて街の外周を囲う壁も、門を通って抜ける。そこから街道を通り、クローク領のカルファの街に向かう。そこで1日滞在し、お披露目会会場となる、アイゼン領のフレテクスの街を目指す。予定では3日後に到着する。馬車の速さは時速12㎞くらい。休憩時間を込みで、大体1日に60㎞くらい進む。
カルファの街では、お母様の両親と兄夫婦、従姉弟に会った。お母様とお母様の兄は8歳離れており、その子供である長女サラリスが8歳、長男ゼロスが6歳だった。2人に気に入られ、メルト兄様ともども可愛がられてもみくちゃにされた。とくにゼロスは弟が出来たと喜び、微笑ましく兄貴風を吹かしていた。
翌日にはお暇し、また帰りに寄ることを伝え、再びフレテクスの街に向かう。馬車の中でお父様とお祖父様の2人は、二日酔いで苦しんでいた。お父様とお祖父様、クローク家当主の叔父さんとクローク家のお祖父様の4人で、遅くまで酒を飲んでいたからだ。フレテクスの街までまだまだかかるから、それまでの間に治るのを願うばかりだ。
道中は特にトラブルもなく、スティード邸のあるノーティスの街を出てから、予定通り3日目にフレテクスの街に到着した。おおよそ150㎞くらいの距離だったかな。トラブルを考慮し、1日余裕を持って移動してきたため、今日1日はフレテクスの街の宿に泊まることとなった。
カルファの街では、クローク邸から1歩も出してもらえなかったので、主にもう暗くなりつつあったことと、従姉弟に捕まっていたせいだが、今度こそはと思い、フレテクスの街に出ようとする。
「では、僕は街を見てきますね」
「レオ!待ちなさい!!」
が、ここでもお父様からストップがかかる。
今は他の貴族の家族もこの街を訪れているため、いつも以上に衛兵が街を巡回しているため、治安はすこぶる良い状態だったりする。しかし、貴族とは面倒なもので、大なり小なり派閥があったりする。スティード家は、この国でもトップクラスの武力を持つ一族であり、ここの領主であるアイゼン侯爵家とも仲が良いい。しかし、中には我が家を快く思わない貴族もいるとのこと。特に、同じ爵位である伯爵家には敵視している家もあるらしい。理由としては、伯爵家であるにも関わらず侯爵家並みの領地と、辺境伯家並みの武力を持っていることがあげられる。領地に関しては武功を上げたからであり、武力に関しては、スティード領が魔物の氾濫を押さえているからであり、王国でも有数の実力者であるお祖父様とお父様を慕って、実に様々な騎士が我がスティード領に集まってくるからである。
ようは、特に何もしていないから何も得ていない貴族から、体を鍛え技を磨き、武功と名声を得たスティード伯爵家に対する嫉妬、という、くだらない理由だったりする。今回護衛として付いてきてくれた騎士達も、相当な実力者揃いなので、一緒に出かけるならば問題ないだろうと思っていたが、余計なトラブルを回避するため、おとなしくしているように、とのことだった。
また、もし下位の貴族、子爵や男爵、準男爵の家族と鉢合わせてしまって、もし、何かしらのトラブルをが起きてしまったら、場合によっては相手に責任を取らせなければならない。さすがにそれは忍びない、という理由もあるらしい。残念だけど、ここは諦めました。
結局、旅の疲れを癒し、明日のお披露目会に万全の状態で臨むため、このまま宿の中で家族と過ごすこととなった。
そして翌日、ついにお披露目会が始まった。
「さあ、すぐに行きましょう!」
僕はすぐに会場となるアイゼン邸へ行きたかったのだが、
「まだダメだ」
お父様からまたしても、ストップがかかってしまった。
「良いかレオ?貴族の礼儀として、このような場にはまず、爵位の低い貴族から順に出向くんだ。まずは準男爵から、男爵、子爵、伯爵といった流れになる。ああ、爵位には一番下に騎士爵、というのもあるが、これは1代限りの爵位だからな、お披露目会に出ることはない。で、今回のお披露目会に参加する貴族の中で、我が伯爵家は、ホストであるアイゼン侯爵に次ぐ爵位だから、一番最後に行かなければならないんだ。」
貴族って面倒くさい。そう思うしかなかった。なので、ある程度時間が過ぎてからの出発となるようだ。じゃあ、それまではメルト兄様と一緒にいようかと思い、メルト兄様を見ると、ガッチガチに緊張していました!ジェシー母様に、挨拶の仕方を確認したり、歩き方を確認したり、忙しなくしている。子供なんだから、もっと気楽でいいのにね。
僕にとっては退屈な時間が過ぎ、いよいよ出発の時間が来た!
「では行くか」
お父様の言葉で、全員が動き出す。来た時と同じように、馬車2台と護衛の騎士20名が並んで、会場であるアイゼン侯爵の邸宅へ向かう。邸宅に到着すると、騎士は4人と16人に分かれ、4人はそのままアイゼン邸へ、16人はアイゼン邸を囲む壁の周りへ展開する。今、このアイゼン侯爵の邸宅には、この地方の5歳になった子を持つ貴族が集まっており、何かあった時に備え、同行してきた騎士たちを警備に回し、守りを固めているようだ。ついでに、一緒に来たメイドと執事は、邸内に入ったらこちらも他の家と協力して仕事をする。と言っても、メインはアイゼン侯爵のメイドと執事がやってくれるので、基本的には主人の家族の世話をするだけらしい。
で、アイゼン侯爵の邸宅なんだけど・・・
デカい。ウチよりも当然デカい。相手は伯爵よりも上位の侯爵だから、予想はしていたけど、3倍以上デカくないか?それともウチが小さいだけか?お祖父様が陞爵するまで、子爵だったって言うし。
とか考えている内に、会場である大広間に到着した。人数は、大人と子供を合わせて30名くらいの貴族と、同じく30名くらいの執事、メイドが居た。空間支配とMAPを起動させて調べたら、全体の合計は63名。ここに、僕たちスティード家6人と、そのメイドと執事が5名合わさり、合計で74名となった。え?多すぎるんじゃないかって?まあ、準男爵や男爵は、両親と子供1人、メイドか執事が1人の4人で参加しているからね。
僕らが入ってくると、次々と貴族の当主たちが子供を連れて挨拶に来た。基本的には、皆笑顔で挨拶してくれていたが、1人、というか1家族だけ、睨んでくるのがいた。同じ伯爵である、ノーマン伯爵家だ。
先に説明で聞いていたように、同じ伯爵なのに、いろいろと差があるのが面白くない、という手合いのようだ。その証拠に
「おお、ルドルフ伯爵、お久しぶりですな!本日のお披露目会、共に息子の成長を祝いましょう!こちらが私の長男、メルティウムです」
と、お父様が朗らかに握手を求めたのに対し、
「ふん。あまり図に乗るなよ?貴様の息子など、儂のダラスと比べたら、まさに天と地ほどの差があるわ!それを今日、証明してやろう!行くぞダラス!」
と、握手をすることもなく、お父様を睨んで離れてしまった。ダラスと呼ばれた息子さんも、メルト兄様を見下したように一瞥し、無言で去って行ってしまった。
「うーむ。ルドルフ殿には、昔からこう、対抗心を燃やされていてなあ。いつもこうなってしまうんだよ。だがな、あいつは決して悪い奴じゃない。国のことを、民のことを憂う男だからな。統治者として優秀なんだよ。よく覚えておきなさい」
お父様は困ったように、僕とメルト兄様に説明してくれた。
一通り貴族同士の挨拶が終わった頃、タイミングを見計らったように扉が開き、40代くらいの立派な服を纏った紳士が入ってきた。
お父様を含めた全ての貴族の大人達が、一斉に動き、中央の通路を開ける。その通路をゆっくりと進み、一番奥、ステージの前で止まった。
「みな、本日は子供達が5歳になったことを祝う、このお披露目会に、よくぞ集まってくれた。当主の皆は知っていると思うが、子供たちはそうではないだろうからな、名乗らせていただこう。このアイゼン領の領主であるアルバート=サイス=アイゼン侯爵だ」
やはり、ここの領主であるアイゼン侯爵だった。
「今、鑑定石を用意しておるのでな、お披露目はもう少し後になる。それまで皆、そのまま食事と歓談を楽しんでくれ。何か分からないこと、困ったことがあったら、壁際にいる我が家の執事かメイドに声をかけてくれればいい」
なるほど、あの壁際で待機している人たちは、アイゼン家の執事とメイドだったのか。この大広間には9家の貴族がいて、ほぼ等間隔に両壁際に4人ずつ、入り口の扉付近に2人、合計10人が待機してる。1つの家に1人ずつ+αで対応できるように配置されているようだ。
と感心している間に、歓談が再開された。大人達は他の貴族と話し、子供たちは食事に夢中になりながらも、子供同士で話をしている。僕も子供の輪に加わりたかったけど、何せまだ2歳です。お母様に抱えられて、大人たちに囲まれています。同じように母親に抱かれた2歳くらいの子供と一緒になっているけど、ほとんどが片言だったりするので、会話が成立しない。だから適当に聞き流しながら、大人たちの会話を聞くようにしていた。
そこへアルバート侯爵がやってきた。すると、お祖父様が僕をお母様から一瞬で取り上げ、
「よう、アル!久しぶりだな!見てくれ、これが私の2人目の孫、レオナルドだ!」
気安くアルバート侯爵に話かけ、僕を紹介し始めた。
「相変わらずだなジル義兄さん。久しぶりだな。冒険者の仕事は順調か?」
苦笑いしながら応えていた。ってジル義兄さん!?
「なんでお祖父様が兄と呼ばれているのですか?」
僕は疑問を口にした。
「ああ、亡くなった私の妻、つまりお前の祖母が、このアルバートの姉でな。私とこいつは義兄弟なんだよ」
まさかの身内でした!
「なんだレオ、知らなかったのか?」
「さすがに初耳でした」
そんな僕たちの会話を、アルバート侯爵を始め、周りの大人たちが驚いた顔で聞いていた。
「ん?どうした?」
お祖父様が気付き、声を掛けると
「義兄さん、レオナルドが普通にしゃべっているようだけど・・・」
「ああ、しゃべっているな」
「レオナルド。今いくつだ?」
「2歳です」
前世での年齢を加算すると、19歳だったりするが、それば秘密にしておこう。
「普通の2歳は、こんな流暢に話せるものだろうか?」
もっともな疑問である。家族の皆は慣れているので、もう、そうは思っていないようだが、やはり、端から見ると異常らしい。そういえばお祖父様は、何も言わずに普通に接してくれているな。と、思っていたら
「そういえばそうだな?なんでお前はそんな普通に話すことが出来るのだ?」
気付いていなかったのかこの人は!?さすがは脳筋だよ・・・
「何でと聞かれましても、気付いたら出来るようになっていたとしか・・・」
そう答えると、周りから「天才だ」「きっと将来大物になるぞ」「あの脳筋一族にこんな頭の良い子が生まれるなんて」とか聞こえてきた。やっぱりスティード家=脳筋は浸透しているようだ。
大人たちが驚いている内に、鑑定石の用意ができたようで、前方のステージの上に、台座が運ばれてきた。
「む、どうやら準備が整ったようだな。ではこれで私は失礼しよう」
アルバート侯爵が、そう言ってステージの方へ向かっていった。その間に、各家のメイド達が本日の主役となる5歳の子供の所に向かい、そろそろお披露目が始まることを伝えている。
「皆、待たせたな!鑑定石の準備が整った!これより子供たちのステータスのお披露目を行う!」
その宣言と共に、お披露目会のメインイベントが始まった。
誤字、脱字など、お気付きの点が御座いましたらご指摘をお願いいたします。
もし、この作品を読んで面白い、と思って頂けたら幸いです。




