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第107話  2年後の予定が決まりました

 それを見た醜い豚と不愉快な仲間たちは、先王陛下が息子である国王陛下に異議を申し立ててくれると思ったのか、さっきまで必死だった表情が希望に輝いた。

 けど、現実はそんなに甘くないんですよ。


「では、今異議を申し立てた者は全員、レオナルド案内の元、ダストレア大樹海の内部探査に赴け。そうすれば、このレオナルドの報告が真実か虚偽か分かるであろう?」

「「「「「なっ・・・・・」」」」」


 証拠を出せ、そんなのは信用できない!

 どんな物を出したところで、こういったずる賢い貴族は屁理屈をこね、言い逃れるだろう。

 厄介なことに、なんだかんだで理に適っていることも織り交ぜてくる、と言うか、どこかに突っ込むべきポイントを見つけたら、すぐにそこを正論でついてくる。

 伊達に長年権力争いをしているわけではない、という事ですね。

 見た目はともかく、相当頭がキレると言うのは分かっていましたよ。

 そんな連中も、国のトップに「じゃあ、実際に現場に行って確認してこい」と言われてしまえば、もうどうにもできない。

 そうならないように頑張ってきたはずなのに、まだ若い国王にはそこまでの決断は出来ないだろうと思っていたのに、なんと経験豊富な先王が出張って来てしまった。


「あ、いや、先王陛下。私達が抜けてしまうと、この国はどうなりましょうか?私達が少しの間でも抜けてしまえば、経済は悪化し、領民たちが苦しみ・・・」

「安心しろ、お前程度が抜けた所で、この国はびくともせんわ。それにザカート侯爵よ、お前は平気で3ヶ月くらい領地を抜けて遊んでいるではないか?その事を王家が知らぬとでも思ったか?もちろん、他の者たちもだ。お前たち、領地を離れて外遊しているであろう?その時間を使えば問題あるまい?」

「いえ、先王陛下、それは・・・」

「何、安心せよ。お前達がダストレア大樹海に行っている間、こちらから優秀な執政官を送る故、政はその者に任せるがよい」

「ちょ、お待ちを・・・」

「おお、すでに王位を退いた私一人では、このようなことを決めることが出来なかったな。すまん、失念しておったわ。で、エドワードとカルナバルよ?この案に何か意見はあるか?」

「いえ、ありません」

「私もです」

「では、これでよいな?おお、そうであった。レオナルドよ」

「はい」

「こちらで勝手に話しを進めてしまったが、よいか?」

「はっ、この方々が調査報告を信じられないのであれば、現地に行って確認して頂くしかないと、僕も考えておりました。しかし、どこまで案内すればよろしいでしょうか?」

「ふむ?そうだな・・・と、私が主軸となってしまっていたな、すまない。エドワードよ、ここから先は任せてもよいか?」

「ええ、お任せください。ではレオナルドよ?逆に質問するが、どこまで行けばその報告が真実だと理解してもらえるだろうか?」

「そうですね・・・やはりダストレア大樹海の中心である、ノイシュヴァン山脈まででしょうか?そこまで行けば、僕が報告した空間の歪みや魔物には大抵遭遇できますし、その広さも実感できるでしょう」


 いや~何か楽しくなってきましたよ!

 人間社会に紛れ込んだオーク侯爵とその手下どもが、面白いくらいにハマってくれて、かつ先王陛下がノリノリで追い詰めてくれたので、もう言いたい放題ですよ!

 あ、気付いたらまた人間扱いしていなかった・・・

 もう何度目か分からないけど、気を付けます。


「なるほど。で、そこまで行くのにどれくらいの時間がかかりそうなのだ?」

「僕が全力を出せば、3日ですね」


 本当は1日で行けるし、空間転移を使えば一瞬だけどね。


「そんなに早く行けるのか?」

「ええ、僕だけでしたら。けど、この方々だと、そうですねぇ・・・・仮にガロウデット男爵達と進んだ時間を基準にすれば、軽く半年はかかるのではないでしょうか?あ、でもザカート侯爵の体形だと、もっと遅いかな?う~ん・・・・早くても片道1年ですかね?」

「1年か・・・・まあ、仕方がないか。当人達が望んだことだ。まさか、そこまでレオナルドの報告が信用できない、と言っておいて、証拠となるダストレア大樹海の中に行かないなどとは言うまいな。なあ、ザカート侯爵?」


 いや~、エドおじさん、凄い威圧感出してますね。

 王としての威厳がありますなぁ~。

 でも、僕の知っているエドおじさんとのギャップがありすぎて、違和感がハンパないです。

 と、さあザカート侯爵はどう答えるかな?

 さっきまでは顔面蒼白にしていたのに、今は落ち着きを取り戻し、薄く笑ってすらいる。

 あれは何か良い方法、というか悪だくみを思いついた感じだね?


「分かりました。陛下がそこまでこの報告を信じると言うのであれば、臣下である私がこれ以上異議を申し立てるのは不敬でありましょう」


 うん、その結論に達するにはだいぶ遅すぎやしませんか?

 今は僕の報告がどうこうの話しではなく、アンタ等がダストレア大樹海に行くという決定事項の話しなんだけど?

 で、エドおじさんは、いいからお前らは首を縦に触れ、と言っているんだけど、当然気付いているよね?

 なのにこのオッサン、何ズレたこと言ってんのかな?


「ほう?先程まであれだけ喚いていたのに、それを取り下げるのか?」

「あれは、客観的に見ても怪しいものでしたので、臣下としての務めとして声を上げさせていただいた次第に御座います。陛下がそこまでおっしゃるのならば、このライストル=アガド=ザカート、陛下の判断を支持させていただきます。お前達もそれでよいな?」


 一緒に喚いていた傘下の貴族達も、それに同意した。

 おそらく、ザカート侯爵が何を考えているか分からないが、きっと付いて行けば大丈夫だと言う安心感があるんだろうね。

 ザカート侯爵って、そういう信頼は勝ち得ているんだね。


「そうか。では、レオナルドへの報酬の件、忘れてはおらぬな?」

「はい、レオナルド君に私の爵位とそれに付随する財産を全て譲渡する、ですね?」


 それを聞いていた他の貴族達がざわめき出す。

 それはつまり、ザカート侯爵が失脚する、ということだからだ。

 この話しは、先王とエドおじさん、カルナ宰相にお父様、それとザカート侯爵とその傘下の貴族しか知らない為、他の多くの貴族はそりゃ驚くでしょうね?


「ですが申し訳ありません、陛下。その前に、少し猶予をいただけないでしょうか?」

「猶予?そんな物、お前に必要か?」

「いえ私ではなく、レオナルド君に、です」


 はい?何で僕?

 そう思ったのはエドおじさんも同じだったみたですね。


「なぜレオナルドに猶予が必要なのだ?説明せよ」

「はっ、それは・・・」


 あ、コイツやっぱり何か企んでるぞ?

 だって、顔が気持ち悪い笑顔になっているんだから、間違いないね。

 いや・・・・もしかしたら、あれが普通の笑顔なのかな?

 しかも、さっきまで僕の事を呼び捨てにしていたのが、急に君付けで呼んでいるし。


「それは、まだ若すぎるレオナルド君に、我がザカート領の全てを引き継いだとしても、上手く領地経営ができるのか甚だ疑問だからです。彼には知識はあるかもしれませんが、間違いなく経験は無いでしょう。何せ、彼のまだ少ない人生の約1/3が、ダストレア大樹海の調査に費やされてしまったのですから」


 いや、調査に行けって言ったのアンタでしょう!?

 まあ、言われなくても行く予定はありましたけどね?


「そんなレオナルド君が、我が広大な領地を任されたとして、上手く出来る保証が御座いません。もし失敗してしまったら、被害を受けるのは民たちです」

「確かに、そうではあるな。それで?」

「なので、レオナルド君には2年間勉強してもらい、その後、私の管轄している領地の一部を使って仮領主として領地経営をしてもらいたいと思います。そして、そこで出た結果を見て、レオナルド君に領主が務まると判断したら、その時は喜んで我が爵位を譲ろうと思います」

「なるほど。民の事を考えるのであれば、理に適っているな。で?その判断は誰がするのだ?まさかお前ではなかろうな?」

「もちろんで御座います。その判断は、畏れながら陛下にお願いしたいと思います。陛下なら、公正な判断を下されると信じております故、いかがでしょうか?」

「ふむ・・・・」


 エドおじさんはしばらく考え込んでいるけど、やっぱりザカート侯爵、口が上手いなぁ。

 だって、前面には民たちの暮らしを最優先させていますってアピールして、僕の能力だと確実に領民たちに被害が出る、と、僕のマイナスだけを伝えているんだから。

 確かに、領地経営なんてお父様のやっているのを見ただけだから、未経験なのは確かだしね。

 でもこいつはちゃっかり、最低でも2年は侯爵の座にいられるようにしているんだよね。

 いや、僕の結果次第では、この後何年でも侯爵を続けられるでしょう。

 でも、そんなことは全く意図しておらず、あくまで領民の為です、って言っているから、エドおじさんも考えさせられちゃっているんだよね。

 もちろん、僕が気付いているんだから、エドおじさんだけでなく、先王陛下もカルナ宰相も気付いているんだろうけど、あえて無視しているっぽいね。

 あ、エドおじさんの結論が出たみたい。


「よかろう、ザカート侯爵。お前の提案を受け入れようではないか」

「ありがとうございます」

「それで?どの地をレオナルドに任せるのだ?」

「申し訳ありません、陛下。それは少し精査させていただいてからでもよろしいでしょうか?何分、急な話しでございましたので、レオナルド君の実力を試すのに適した地を選定するのに時間を頂けないでしょうか?」


 要約すると、僕を嵌める為に丁度いい土地を見繕って、ついでに下準備もしておきたいから時間をくれ、ってことだね。

 え?まだザカート侯爵が僕を嵌めようとしているとは限らないって?

 そんなわけ無いでしょう?

 あの人間とオークが奇跡の融合を果たしたような侯爵が、そんなあっさり僕に爵位を譲ろうとするなんて有りえないですよ!

 絶対に僕を嵌める為の手を打って来ますね、間違いなく。

 まあ、何をしてこようが、全部叩き潰しちゃえば問題無しなんですけどね?

 さて、エドおじさんはどう答えるのかな?


「いいだろう。では、準備が出来次第、報告するように。よいな?」

「はっ!ありがとうございます!」


 こうして、2年後に僕が仮領主となる事が決定しました。

 ダストレア大樹海探検ツアーはどうなったかって?

 それは後のお楽しみに取っておくことにしましょうか。

誤字、脱字など、お気付きの点が御座いましたらご指摘をお願いいたします。

もし、この作品を読んで面白い、と思って頂けたら幸いです。

気が向いたらで構いませんので、評価もお願いいたします。

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