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第105話   茶番劇

「よくぞ戻った、レオナルド=シオン=スティード。3年に及ぶ前人未踏の地、ダストレア大樹海の調査、ご苦労だった!そして、かの地の踏破、そして往復を成しえたとは見事!これは、人類史に残る偉業であることは疑いの余地が無い!」

「勿体なきお言葉、ありがとうございます、国王陛下」


 僕は謁見の間を進み、玉座に続く階段の手前で膝を付き、国王陛下であるエドおじさんとの謁見に臨んでいる。

 いや、国王陛下だと言うのは分かっているんだよ?

 けどね、相手があのエドおじさんなんだから、どうしても違和感を感じてしまうんですよ。

 先王陛下の時は、初めて会った時から国王陛下だったから普通に接することが出来たけど、子供の頃から親戚の叔父さんだと思っていたエドおじさんだと、何か、こう、やり辛い。

 つい気が緩んで、いつもの口調で話してしまいそうだよ。

 ただ、この場の空気がそれを許さない事も知っていますとも。

 だって玉座は2つ用意され、1つは当然国王であるエドおじさんが座り、もう1つにはウィリアム先王陛下が座っている。

 え、何で先王陛下いるの!?

 更に、玉座の前にはカルナバル宰相がいつも通り立っている。

 あ、カルナ宰相、3年前よりも顔色がいいぞ?

 渡した魔導具が役に立っているのかな?

 国王を引退したウィリアム先王は、肩の荷が下りたせいか、3年前よりも活力に満ちているね。

 エドおじさんは若王とは言え、国王としての威厳が出始めているね。

 でも、僕の中ではどこまで行ってもエドおじさんはエドおじさんなんだよなぁ・・・

 おっと、脱線していた。

 それで玉座の下、つまり僕の両側には、ズラッと国中の貴族が並んでいる。

 この時期は偶々、年に2回の大会議が行われるため、殆どの貴族が王都に集まっていた。

 この時期に執り行う理由が、王都にある学校の夏休みが明けるのに合わせ、帰省していた貴族の子弟が親と一緒に戻ってくることで、無駄な出費を抑えられるから、と言う、なんとも経済的なものだったりする。

 なのでこの場には今、僕が初めて謁見の間に入った時よりも多くの人がいる。

 貴族だけでなく、文官や騎士もいるからです。

 当然お父様もいれば、ブタ侯爵、じゃなかった、ザカート侯爵もいる。

 おい、こいつ更に太ってないか?

 ダストレア大樹海で頻繁に狩っていたオークに似て来ているぞ!?

 いや、比喩表現とかではなく、本当に!

 強いて言うなら、オークの方がもっとスリムだね。

 あいつの所だけ、1人で3人分くらいの場所取ってないか!?

 いや、よく見るとオーク侯爵以外にも丸々と肥えた貴族がチラホラといるね。

 大丈夫か、この国?

 まあ、もしかしたら有能な貴族かも知れないし、見た目で判断したらダメだよね?

 あ、ノーマン伯爵もいる!

 今度そちらの2人の息子、ダラシィードさんとオーガスト君を交えて話したいことがあるから、何とか時間を作ってもらえないかな?

 あれ?あそこにいて口を大きく開けているのはガロウデットじゃないかな?

 え、何アイツ?貴族になったの?ふ~ん・・・・

 この瞬間から、ガロウデット男爵の破滅へのカウントダウンが始まった。


「しかし、おかしいな?私はレオナルドが死んだと聞かされていたのだがな?」


 エドおじさんの言葉に、オーク侯爵がジロリとガロウデットを睨み、そのガロウデットはビクリと体を震わせている。


「ザカート侯爵よ、お前は私に、いや、先王にレオナルドは死んだ、と報告したな?」


 エドおじさんの質問に対し、オーク侯爵がその巨体を揺らし、1歩前に出て弁明を始めた。


「はっ、陛下。私も調査団の副団長であったガロウデット男爵より、そのように報告を受けておりました故、そう申し上げました」

「だが、レオナルドはこうして生きているではないか?どういう事だ?」

「死んだと思っていたレオナルド団長が生きていた。それは大変喜ばしいことでございます。何か不都合でも御座いましょうか?」


 オークがしれっと答える。

 まあ、実際問題、生きていて良かったね!程度の話しだからね?

 でも、ちょっと雲行きが怪しくなってきたかな?


「不都合も何も、私はお前から、レオナルドは突然現れたケルベロスと、それに率いられたオルトロスの群れに襲われた調査団を逃がすため、深手を負いながらも勇敢に立ち向かって戦死した、と言ったな?」

「はい、ガロウデット男爵からそう報告を受けていましたので」

「レオナルドはピンピンしているではないか?これはどういうことだ?」

「それに関しては、ガロウデット男爵に直接聞いてみたいと思いますが、よろしいでしょうか?」

「よい、許可する」

「ありがとうございます。ガロウデット男爵!前に出て陛下に説明せよ!」

「は・・・・」


 肥満侯爵に呼ばれたガロウデット、こいつ男爵になったんだ、は、フラフラとした足取りで前に進み、僕の隣に立って説明を始めた。

 だが、真横から僕の強烈なプレッシャーを浴び、まともに説明することが出来ない。

 あ、プレッシャーという名の殺気は、ガロウデット以外には分からないように発しているので、他の人には気取られることはありませんよ?

 『空間支配』を使って、殺気が周りに漏れないようにシャットアウトしてありますからね!

 ただ、僕が殺気を放った瞬間、お父様だけが感じ取り、少し反応していましたね。

 さすがです、お父様!

 で、ガロウデットの説明が遅々として進まない為、


「国王陛下、発言をよろしいでしょうか?」

「何だ、レオナルド?」

「ガロウデット男爵に代わり、僕が当時の説明をしようと思いますが、いかがでしょうか?」


 と、僕が話しをすることにしました。

 だって、そっちの方が早いですからね。

 色々な意味で。


「そうだな。当事者であるレオナルドが一番詳しいだろう。よろしい、説明せよ」

「はっ!それでは・・・」


 と、言う訳で、僕が説明することになりました。

 でもまあ、エドおじさんと先王陛下とカルナ宰相は、真実をすでに知っているんですけどね?

 だって僕が手紙を書いて教えたんだから。

 だからこれは、ただの茶番だったりします。


「・・・と、言う訳で、僕は薬を盛られてケルベロスの住処の手前で放り出され、ガロウデット男爵達はその場から撤退を始めました。しかしそこで彼らに誤算が起きました。それは、1匹のオルトロスがガロウデット男爵を始めとした調査団員に襲い掛かったのです」

「ちょっと待て、レオナルドよ。お前はその時薬を盛られていたのであろう?なぜその当時の事が分かるのだ?」

「簡単な話しです。その程度の毒では、僕の動きを一時的に封じることは出来ても、それ以上のことが出来ないからです。僕はすぐに起き上がり、襲ってきたケルベロスとオルトロスを屠りましたが、オルトロスを1匹、取り逃がしてしまいました。そのオルトロスを追いかけ、仕留めた時には、調査団の全員が逃げた後でした」

「なるほど。それで、お前はその後どうしたのだ?」

「正直、オルトロス程度で逃げ出すような弱輩は僕の邪魔にしかならないので、彼らが全員無事に帰還できるように、調査団を襲いそうな魔物を排除しながら後を付いて行きました」

「ほう?しかし、彼らはヘルハウンドに勇敢に立ち向かい、それを仕留めたと聞いているが?」

「え?いやいや、そんなはずありませんよ。ヘルハウンドは僕が倒しましたが、彼らはヘルハウンドを見た途端、みっともなく逃げ出しただけですよ?我がスティード騎士団ではあんな醜態をさらす者など1人もいなかったので、とても良く覚えています。あ、そう言えば、僕が仕留めたヘルハウンドを持って帰ろうとしていましたね。あんな小物を態々時間をかけて解体し、容量に限りがある空間収納鞄に入れているのを見て、呆れたものです」

「ほう、聞いていた報告とかなり違うな?それで?逃げる調査団を追って行ったお前は、その後どうしのだ?」

「その後、彼らはダストレア大樹海の出口にほど近い、僕が教えた安全地帯に逃げ込み、そこで休息を取りました。そこからダストレア大樹海を抜けるのはすぐだったので、僕はそれを見届けた後、周辺にいた魔物を一掃し、彼らが安全に脱出できると確信したので、調査の旅に戻りました」

「ふむ、そのあたりの話しは聞いていた報告と一致するな。ところでレオナルドよ?その時生き残っていた調査団員は何名だったか覚えているか?」

「はい。運悪くオルトロスに襲われたのは3人で、彼ら以外の47人が安全地帯に逃げ込んだのを確認しました」

「47人だと?間違いないか?」

「はい、間違いありません。内わけは、ザカート侯爵配下の騎士が6名と、寄せ集めの冒険者で構成された騎士の格好をしたのが41名でした。全員、逃走による疲労で衰弱していた以外は無事でしたね。大したケガもしていませんでしたよ」

「冒険者が41名?おかしいな。私達は全員が訓練を受けた正式な騎士だと聞いていたのだが?」

「訓練されたにも関わらず、あんなにまとまりのない騎士なんて有りえません。現に、ガロウデット男爵は常にザカート侯爵配下の騎士と一緒にいて、何事かをずっと話し合っていましたが、他の冒険者達には一切情報共有をしていないようでしたので。あ、でも、その冒険者達の方が、騎士達よりも良い動きをしていましたね。今まで1人、もしくは数人のグループで行動していたからこそできる動きでした」

「そうか・・・」


 一通りの説明を聞いた後、エドおじさんはガロウデットを見据え、


「レオナルドはこう言っているが、貴様の報告とはずいぶん相違点があるな?説明してもらおうか、ガロウデット男爵?」

「あの・・・その・・・」


 ガロウデットは顔面蒼白になりながら、何とか弁明しようとするのだけど、僕から放たれる殺気に当てられて上手く話すことが出来ない。


「どうした?なぜ何も言わないのだ?貴様には、レオナルドに対する殺人未遂と、同行した41名の調査団員の殺人容疑が掛けられているぞ?何も言わない、という事は、全て肯定しているという事でいいか!?」

「ひっ!?・・・・あのっ!」

「何だ!?」

「あ・・・・いえ・・・・」


 いつまで経っても説明しないガロウデットに、エドおじさんが裁きを下そうとした時、


「陛下!この者がレオナルド団長を殺害しようとしたこと及び、調査団員41名を殺害したことは明白です!同行した調査団員に不備があったのは、私がガロウデット男爵を信頼し、人選を一任してしまったのが原因であります。私の元配下が取り返しのつかないことをしでかしてしまい、申し訳ありませんでした!」


 オークの皮を被った侯爵が、声を張り上げ謝罪を始めた。

 それを見たガロウデットは、きっと助けてもらえると思ったのだろう、目に希望の光が灯った。

 だが、その希望はあっさり打ち砕かれる。


「つきましては、私なりのけじめとして、ガロウデット男爵を私自らの手で処刑させていただけないでしょうか!?また、被害に遭われた方々のご遺族には、十二分な補償をさせていただきます!」

「そんな、ザカート侯爵!?私は貴方のし・・・」

「えーい黙れ!」

「ぷぎゃっ!?」


 ガロウデットは、大量の脂肪という名の重さが乗った拳を顔面に叩き込まれ、しゃべることが出来ずに吹き飛ばされ、そして気絶した。

 おおっ!?あの贅肉の塊に、こんな用途があったとは!?

 やるな、贅肉侯爵!

 いや、そもそも、騎士の中でも手練れに入る実力を持っていたガロウデットを、無抵抗だったとは言え一撃で気絶させるなんて、もしかしてコイツ、本当にオーク並みのステータスを持ってるんじゃないか?


「そうか・・・・分かった、任せよう。補償に関しては、すでにスティード伯爵家が善意で遺族に支払ってくれているが、それはどうする?」

「はっ、スティード伯爵家が支払った補償金は全て我がザカート家から返金させていただき、さらに、遺族が納得する補償金を追加で支払わせていただきます」

「よろしい。その件は早急にまとめ、三日後までに提出せよ。出来るな?」

「はっ!もちろんで御座います!」


 そうして、破滅へのカウントダウンが0となったガロウデットは、口封じの為、ザカート侯爵によって処刑されることが決定された。

 まあ、あそこであの脂肪の塊が何も言わなかったとしても、ガロウデットの処刑は確実だったけどね?

 流石は腐っても、いや、どこまでも腐った侯爵!

 そういった駆け引きだけは上手いね!

 ああすることによって、自分に降りかかる被害を最小限にしようとした。

 この件はあくまでガロウデットの独断であり、暴走だったため、元主である自分には責任が無い、とアピールした訳です。

 けど、お咎め無し、と言う訳にはいかず、何らかのペナルティーが発生するのは明らかですね。

 そのペナルティーも、遺族補償の上乗せと言う形で回避してしまいましたよ。

 どうせザカート侯爵家は裏で色々やっているので、お金は掃いて捨てるほどあるから大した痛手ではないみたいですからね。

 まあ、そもそも?

 僕がダストレア大樹海の調査を踏破を成し遂げた時点で、この醜い豚男は侯爵じゃなくなるんですけどね?

 僕との約束で、侯爵の地位を僕に譲るのと、コイツを含めた僕を嵌めようとした貴族はダストレア大樹海探検ツアーに行くことになっている。

 こいつ、覚えているのかな?

 え、僕?

 別に侯爵なんて地位はいらないので、適当に有能そうな貴族に侯爵の地位を譲る予定ですよ?

 もしそんな人物がいなかったら、国に返しても良いとも思っていますしね。

 あ、気絶したガロウデットが、近衛騎士に運ばれていく。

 きっと尋問された後、処刑されるんだろうね・・・・

 僕が旅をしていた3年間、男爵になってうまい汁をこれでもかと啜っていたのだろうし、今回の件は、自業自得でしかないから同情する余地すらないね。

誤字、脱字など、お気付きの点が御座いましたらご指摘をお願いいたします。

もし、この作品を読んで面白い、と思って頂けたら幸いです。

気が向いたらで構いませんので、評価もお願いいたします。

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