第104話 3年ぶりの王都、そして親友
ダストレア大樹海から帰還して2週間が経過した。
僕は今、スティード家全員+クラリス王女殿下と共に、アステリア王国の首都、エスカフィールに向かっている。
「凄いです凄いです!レオお兄様が作った馬車は快適です!」
「レオお兄様、これは今までの馬車とは比べ物にならないですよ!さすがです!」
「いやホント、レオは凄い物を次々に作り出すねぇ?頭の中、どうなっているの?」
「こんなのを見せられたら、城で使っている魔導具を全てレオが作ったという話も、信じるしかないですね・・・・これが将来の義弟の力の一端ですか・・・」
妹、兄、義姉(仮)に大絶賛されているのは、僕が作った馬車です。
見た目は普通の馬車だけど、各種付与をふんだんに盛り込んだ、動く家と言っても過言ではない代物、いや、過言ではなく、まさに家そのものですね。
今回はちょっと工夫を凝らし、2階建てにしてみました。
僕達子供がいるのは、その2階にいくつかある部屋の1つである、展望室です。
もちろん空間をいじってあるので、実際に2階の高さにいるのではなく、その高さから見える光景が展望室の壁に映し出されているだけですが。
内部の空間をいじり、スペースを拡張した馬車はこちらでは初お披露目で、馬車の中に入った皆の反応は面白かったですね。
馬車の扉を潜ったら、馬車の大きさの何十倍もの空間が広がり、キッチンにソファー、寝室まで用意されているのだから、そりゃ驚きますよね?
大人達とメルト兄様、クラリス王女殿下は、馬車の内部に入った途端、目を大きく見開いて固まっていましたね。
基本的には殆ど動じないお母様も、これには驚いてくれていましたよ。
無邪気な2人の妹は、早速馬車の内部を走り回って探検していましたね。
あ、もちろんもう1台、使用人や護衛の騎士用の馬車も用意してありますよ。
内装はこちらよりも質素にしてありますが、作りは同じです。
この馬車のおかげで、長時間の移動によるストレスを極限まで減らすことができます!
馬車自体の作成は1時間もかかっていないのですが、内装にこだわりすぎて、2日もかかってしまいましたよ。
その事を皆に話したら、
「いや、レオナルドよ?どこの世界にこんな代物を、たった2日で完成させられる奴がいるんだ?早すぎるぞ!?」
と、皆を代表してお父様にツッコまれてしまった。
まあ、ちょっと大きめの家を2軒作ったようなものですからね。
長いダストレア大樹海での生活のせいで、一般的な感覚ってものにズレが生じていたようです。
え?始めからだろうって?
気のせいです!
この馬車、本当は自動車タイプにしたかったんだけど、まだ運転できるのが僕とお父様しかいないので、諦めました。
だって車の運転手って、馬車に置き換えたら御者って事でしょ?
さすがに貴族の当主や子息が御者をやるってのは、よろしくないですよね?
あれ?そういえばエドおじさんも運転出来るんだっけ?
クラリス王女殿下に聞いてみたら、たまに車を運転しているとのこと。
じゃあ、空間拡張した自動車を作って、また王家に贈ろうかな?なんて話しをしたら、クラリス王女殿下に喜ばれましたよ。
そうそう、今回王都に行く目的は3つです。
1つは僕の帰還報告の為です。
一応、ダストレア大樹海の調査が目的だったので、その調査結果を報告しなければならないんですよね。
もう1つは、メルト兄様とクラリス王女殿下を王都に送る事。
実は2人は王都の学校に今年から通っており、今は夏休みだったため、クラリス王女殿下は婚約者のメルト兄様の家、つまりスティード家に遊びに来ていたのだそうです。
2人の関係は良好で、当初懸念されていた他の貴族からのやっかみも全くないそうです。
『王都黒龍事変』で獅子奮迅の活躍をし、僅かな時間とは言えたった1人で黒龍と渡り合ったメルト兄様に、正面切って文句を言う勇気ある者などいないでしょう。
それと、僕がセレス様にお願いした、2人が末永く幸せでありますように、という願いも反映されているのかもしれないですね。
で、最後の目的が、スティード家の女性達による王都観光。
これは、僕が付いていれば安全だろう、という事で、ダストレア大樹海の調査報告が終わったら、家族と一緒に王都を周る、と言うものです。
特にシャルは初めての王都だから、楽しみにしすぎて昨日は眠れなかったとか。
遠足前の子供のみたいですね。
いや、まあ、まだ子供ですけどね?僕も含めて。
それと、毎回恒例の悪者退治だけど、どうやらやりすぎたようで、スティード家が通る道には野盗、山賊の類が一切出なくなったそうです。
たまに魔物が出るそうですが、今回は何事もなく、順調に王都エスカフィールに到着。
戦闘狂のお父様を筆頭としたスティード騎士団は物足りなそうで、帰りは別ルートを通ることになりました。
どんだけ暴れたいんだ、ここの騎士団員は!?
王都に入り、そのままスティードの屋敷まで移動。
その間、スティードの女性たちが2階の展望室を占拠し、普段見ることのできない高さから王都の街並みを愉しんでいた。
王都散策で行きたい場所を物色していたようだけど、聞かなかったことにしましょう。
だって、あそこ行きたい、と言った回数が、優に50を超えているんですよ?
そしてその散策には、僕が同行することが決定しています。
絶対に1日じゃ回りきれないですよ・・・・
ちょっとこれからの事を考えて気が重くなっている内に、馬車はスティード邸に到着。
出迎えた使用人たちが、馬車の大きさからは考えられない人数が下りてきたことに驚いたけど、この馬車を作ったのがレオナルドだと聞かされると、一瞬で納得してしまいましたよ。
王城にはすでに使いを出していたそうで、謁見は明日の昼からとなっていました。
なので、今日はこのまま屋敷で休むことに。
あ、クラリス王女殿下も今日はウチに泊まっていき、明日一緒に王城に帰ることになっています。
余談ですが、スティード領にいる時も含め、メルト兄様とクラリス王女殿下は別々の部屋で寝泊まりしています。
お父様は一緒の部屋にしようとしたそうですが、ジェシー母様が2人が結婚するまではそれを許さなかったそうです。
2人共学生なのだから、せめて学校を卒業するまで待ちなさい、とのことでした。
どうしよう、僕、セレスハートにいる間、ずっとセシリアと一緒のベッドで寝てたんだけど・・・
よし、黙っておこう。
で、翌日。
ここはいつもの応接室。
実に3年振りですね。
今この場にいるのは僕ただ1人。
王城まではお父様、メルト兄様、クラリス王女殿下と一緒だったんだけど、馬車を降りたらメルト兄様とクラリス王女殿下は王族の居住区へ、お父様は伯爵家当主として謁見の間へと先に行ってしまった。
で、僕はここで何をしているのかと言うと、人が来るのを待っています。
お、来たかな?
「レオ!お帰り!」
勢いよく応接室の扉を開け、肩で息をしながら入って来たのは、金髪碧眼の顔立ちが整った美少年だった。
彼はこのアステリア王国の次期国王である、アステリア王国第1王子、フィリップ=ヴィルヘルム=アステリアであり、僕の最初の友人だ。
「ただいま、フィル!3年振りだね!」
僕は立ち上がってフィルを迎え、3年ぶりの握手を交わす。
「レオ、最初の予定だと5年位かかるって言ってなかったっけ?2年も早く終わったんだね」
「あ~うん。実は学校に入学する直前までに戻るつもりだったんだけど、思った以上に順調に進んでね。おかげで2年も短縮できたよ」
うん、嘘は言っていないよね?
途中、ミコトさんと数カ月間遊び倒していたけど、誤差だよね?
「そうなんだ?じゃあさ、早速だけど、ダストレア大樹海でどんなことがあったのか教えてよ!」
「う~ん・・・・この後エドおじさん、じゃなかった、国王陛下に報告するから、まだ話しちゃマズイかもしれないけど、フィルの頼みだからね。謁見の間に呼ばれるまでの間に教えちゃうよ!」
「さすが親友!そう来なくっちゃね!」
それから謁見の間に呼ばれるまでの約1時間、ダストレア大樹海調査団がすぐに瓦解してから1人で調査をして、神獣フェンリルに出会ったこと。
ダストレア大樹海の中央にはノイシュヴァン山脈があり、そこには神龍がいたこと。
その神龍は女神セレス様の眷属のドラゴンを束ねる龍王で、すぐに意気投合し、友達になったこと。
その道中に出会った魔物や、ダストレア大樹海の中は空間が歪んでいて、想像以上に広大だったこと。
ノイシュヴァン山脈の空間の歪みを通ると、なぜか海があったこと。
などなどを話した。
もちろん、僕が女神の使徒だという事や、神龍がかつての勇者ドラグルだった、などといった秘密は伏せてあります。
これはいかに親友と言えど、おいそれと話していい内容ではないからね。
ここまで話した所で、遂に謁見の準備が整ったとの連絡が入り、フィルとの再会は一時中断されることになった。
「せっかく良い所だったのに、もう時間になってしまったみたいだね?続きはまた後で聞かせてくれるかい?」
「もちろん!ただ、今回の謁見は調査報告だから、結構時間がかかってしまうかもしれないけど、いいかな?」
「そうだね、さすがに深夜になってしまった場合は遠慮したいけど・・・なら、また明日とかはどうだい?」
「明日か・・・・多分だけど、明日以降はしばらく家族で王都を周ることになるから、ちょっと難しいかな?」
「そうか・・・・」
残念そうにしている親友を見て、何とかしてあげたいと思った僕は、1つ提案をしてみた。
「じゃあさ、明日フィルがウチに来るってのはどうかな?」
「え?」
「ウチにはクラリス王女殿下も泊まっていたわけだし、弟のフィルが遊びに来てもいいんじゃないかな?」
「それだ!よし、この後皆に相談してみるよ!」
「何なら今日、ウチに泊まりに来る?」
「レオは天才か!?よし、早速許可を取りに行こう!アステリア最強のスティード家なら、きっと許可が下りるだろう!」
そう僕らが盛り上がっていると、不意に横から、
「あの、フィリップ殿下、レオナルド殿?謁見の間に急がないと・・・」
「「あ・・・・」」
そこには案内係の文官さんが、心底困り果てた表情で立っていた。
いくら子供とは言え、ここにいるのはこの国の第1王子とその友人で、王国の英雄であるスティード家の子息なのだ。
口を挟むのにも相当な勇気が必要だっただろうことは、その顔を見れば簡単に想像できる。
「すまない・・・」
「すみませんでした・・・」
そんな2人から謝罪され、更に恐縮してしまった文官さん。
ホント、ごめんなさい・・・・
「じゃあフィル、そう言う訳だから謁見の間に行ってくるよ」
「ああ。また後でね、レオ」
そうして僕は、やっと応接室を出て謁見の間に向かった。
「お待たせしてしまい、申し訳ありませんでした」
「いえいえ、そんな!私ごときがお2人の邪魔をしてしまい、申し訳ありませんでした!」
謁見の間に向かう道中、案内係の文官さんに改めて謝罪した所、さらに恐縮させてしまった。
大丈夫か、この人?
「何を言っているのですか?貴方は職務を忠実にこなしているだけではありませんか?さっきのは、時間になっているのにいつまでも話し続けていた僕達が悪いのです。むしろ、貴方が声をかけて下さらなければ、僕達はあのままずっと話していたかも知れないのですよ?貴方がやったことは褒められこそすれ、怒られる謂れのない事です。だから、もっと堂々としてください」
「は、はいっ!ありがとうございます!」
などとやり取りをしている間に、もう間もなく謁見の間に到着しそうですね。
「あ、あの!」
急に文官さんが声をかけてきましたよ。
今まで何度も色んな人に謁見のままで案内されたけど、ここで声をかけられたのは初めてですね。
「何でしょう?」
「私はマイルと申します!謁見、大変だと思いますが、頑張ってください!」
何と、応援されてしまいましたよ!?
いや、普通に考えたら、僅か10歳の子供が1人で国王との謁見に臨むなんて有りえないか?
きっと、そんな異常な光景に対し、マイルさんはつい応援してくれたのでしょう。
あ、そういえば文官さんで名乗ってくれたのもマイルさんが初めてだ。
よし、しっかり覚えておこう!
「ありがとうございます、マイルさん。では、行ってきますね」
そして僕は、3年ぶりに謁見の間に踏み入った。
誤字、脱字など、お気付きの点が御座いましたらご指摘をお願いいたします。
もし、この作品を読んで面白い、と思って頂けたら幸いです。
気が向いたらで構いませんので、評価もお願いいたします。




