第100話 アステリア王国へ
「セシリアと婚約する気はないかい?」
薄々ではありましたが、いつかこれ言われるんじゃないかな、とは思っていました。
何でも、同じ時代に女神の使徒と聖女が現れたことは今までで1度も無く、それ故に多くの人々から、2人が結婚することを望まれていたそうです。
これに目を付け、女神の使徒を騙ってセシリアと結婚しようとしたのが、まだ女神城の上空で時間を止められたまま放置されてるピエナスです。
で、フォルセシウスさんに質問に対する答えですが、
「ええ、ありますよ」
です。
何せ、僕とセシリアがこの世界に転生する前は、最期の時のほんの一瞬だけでしたが、僕らはお互いに思いが通じ合った仲でしたからね。
そしてこの世界に転生する時、お互いに同じ世界に転生できるように望んでいたんですよね。
そしてダストレア大樹海で出会い、今日まで一緒に過ごし、未だにお互い好意を持ち続けている。
断る理由は無いでしょう?
「おお、そうか!ありがとう、ありがとう!」
フォルセシウスさんは満面の笑顔で喜び、マリアンヌさんはうっすらと涙すら浮かべていますよ。
セシリアも嬉しそうにしてくれているし、断らなくて良かったですよ。
けど、少しだけ問題があるんですよね。
「ただ、申し訳ないのですが、貴族の子として、両親の許可を得なければならないのですが・・・」
そう、貴族の結婚には、政略結婚と言うのがたくさんある。
繋がりを作る為に、自分より高い地位の家に息子や娘を差し出したり、援助を受ける為に裕福な貴族と結婚したり、または国を守るために、もしくは友好の証として自国だけでなく、他国の有力貴族や王族と結婚したり、と、好きでもない相手に、家の都合で結婚相手を決められてしまうのが貴族です。
もちろん、恋愛結婚する場合もありますが、貴族に生まれた以上、政治の道具として扱われてしまう事もある、と言うのは覚悟しなければならない事の1つです。
まあ、スティード家に限っては大丈夫だとは思いますが、それでもまだ成人を迎えていない為、婚約に関しても両親の、と言いますか当主の許可が必要だったりします。
「む、そうだったね?でも、キミの家族も、セシリアとの婚約は喜んでくれるんじゃないかな?」
「ええ、それは間違いないと思いますよ。ただ、念のために確認はしたいのですよ。それに、僕は故郷であるアステリア王国の王家とも付き合いがあるので、さすがにセレストメディエル聖教国の聖女と婚約をするとなると、国王陛下に報告しない訳には行きませんからね」
新国王となったエドおじさんと、ウィリアム先王には、しっかり報告しないと、後で何を言われることやら・・・
「へぇ、レオナルド君は、王家とも繋がりがあるんだね?」
「ええ、何しろ祖父、父と2代に渡って先王陛下と国王陛下の親友ですからね。それに、僕自身も第一王子とは親友ですから。あ、それと、僕の兄が第一王女殿下と婚約していますね」
よくよく考えてみると、とんでもない一族だな、スティード家!
まあ、権力に興味が無いからこそ、伯爵家なのに王族の親友となれたんだけどね?
「それは、凄い家だね?でも、そうか。それなら一度、国許に返って報告しないとならないね?」
「あ、確認は戻らなくても出来るから大丈夫です」
「は?戻らないでって、どうやってだい?あ、手紙?」
「手紙だと、僕が直接行った方が早いですよ。そうではなくてですね、僕の作った魔導具を使えば、僕の家となら連絡が出来るんですよ」
「どういう事?詳しく聞いても良いかな?」
僕はスティードの屋敷に設置してある魔導具、異空間ポストについて説明しました。
その魔導具と、僕の異空間収納を繋げることにより、遠く離れた場所でも手紙や物の受け渡しが出来る、という事を話しました。
「何ですか、その魔導具は!?そんな魔導具、我が国にいる一級の技師でも作れませんよ!?誰がそんな場道具を作ったのですか!?」
「えっと、僕です」
「レオナルド君が?そう言えば、例の馬車も1人で作り上げていたよね?なるほど・・・」
このセレストメディエル聖教国には、その役割上、様々な人材が集まり、実はこのレシタクルス大陸において、最も栄えている国の1つとされています。
その為、この国にも魔導具を作れる職人はいるのですが、やはり複数人でチームを組んでいる人達ばかりで、僕のように1人で魔導具を作れる人はいないそうです。
当然、その佐合スピードも完成度も、僕に遠く及ばないらしいです。
ちょっと話が脱線して来ましたね。
「なので、婚約については、すぐにでも家族に報告できますし、国王陛下にもすぐに我が家が報告してくれるでしょうね。もちろん、返事もすぐに来ると思いますよ」
「そうなんだね・・・あ、じゃあさ、このままここでずっと暮らさないかい?」
「それはお断りします」
いきなり何言い出してんですかね、この人は?
僕にはまだまだやりたいことが山ほどあるのに、ここで暮らしてしまえば、間違いなく女神教に組み込まれてしまい、身動きが出来なくなってしまうのが簡単に想像できますよ。
「あ、やっぱりダメ?」
「ええ。だって、僕にはアステリア王国でやりたいこと、やらなければならないことが沢山ありますしね。だから、この後アステリア王国に戻ったら、数年はあの国で過ごすつもりです」
「やっぱりそうかぁ・・・・キミがこの国にいてくれると、非常に嬉しいんだけど、こちらの都合でキミを束縛することは出来ないからね。うん、諦めるよ」
ずいぶんとあっさりと引き下がるから、驚いてしまいましたが、それで良いなら、良いよね?
「ありがとうございます」
「それで、レオナルド君が出立する日だけど、すまないんだけど、もう2ヵ月待ってもらいないかな?」
「構いませんが、どうしてですか?」
「ああ、大したことじゃないんだけどさ、せっかっくだから、セシリアともっと仲良くなってほしいと思ってね?2ヶ月間、ずっと一緒にいて欲しいんだけど、どうかな?」
「2ヶ月ですか?ええ、大丈夫ですよ」
「そうか!ありがとう、レオナルド君!」
フォルセシウスさん、嬉しそうだね。
娘の幸せを願っている、いいお父さんですね。
周りを見ると、今この場にいる全員が、今の話しを聞いてニコニコとしている。
勘繰りしすぎかもしれませんが、こうまで皆が笑顔だと、何か企んでいるのではないかと不安になりますね?
あ、ただ1人だけ、セレス様は一心不乱に食事をし続けていますよ。
「それで、セシリアとの婚約発表なんだけど、アステリア王国のご両親から返事が来てからでどうだい?」
「ええ、それでお願いします」
もう、ここからはトントン拍子で話が進み、この後すぐに僕が手紙を書き、返事が来たら婚約発表と言う流れとなりました。
もしかしたら、僕の両親が反対する可能性もほんの僅かにあるかもしれませんが、その時は僕が空間転移で家に乗り込んで説得するので、問題なしです。
そんなこと出来るなら、初めから空間転移で行けよ、と思われるかもしれませんが、それは極力やりたくないんですよね。
僕のただの拘りなんですけど、折角自分の足で歩いて旅をしているんだから、空間転移なんて言うチートは使いたくないんですよ。
だからこそそれは、緊急事態が発生した時にのみ使用する、最終手段だと思ってください。
もちろん、お父様とお母様が僕とセシリアの婚約に反対した時は、緊急事態なので、遠慮なく使いますよ。
その後もしばらく話し合いは続き、僕は極力人前に出ないという事、僕が寝泊まりするのは基本的にセシリアの部屋という事、そして、僕専用の工房を貰えることになりました。
魔導ポストの話しから派生して、例の馬車の話しになった時、あれはどうやって作ったのかを聞かれ、素直に僕には『魔導具作成』のスキルがあることを話したら、すぐに工房が手配されていましたよ。
当然、僕が作った魔導具の完成度は、この国の技師たちより群を抜いているのは言うまでもないです。
そんな唯一無二の貴重な人材を、ただ遊ばせておくのは勿体ない、ということで、たまにでいいので魔導具を作ってほしいと依頼されてしまいましたよ。
今、作成を求められているのは、空調装置と馬車、それと魔導ポストです。
今まで僕が作った物を説明し、異空間収納にストックしておいた実物も見せたら、この3つを優先的に作ってほしいと頼まれました。
やはり空調装置は、大人気ですね。
冷風と温風が装置から出た時は、この場にいる全員が感動していましたよ。
取りあえず、ストラテラ家の皆さんの各部屋と、謁見の間、各応接室、食堂用という事で、30個発注されました。
それと、馬車。
パレードで使ったのはそのまま寄贈するとして、それとは別にもう2つ、作成を依頼されました。
セシリアが、セレスハートに来るときに乗った馬車について熱弁を振るった為、なら一度乗ってみよう、と言う話になり、試乗してもらった結果、こうなりました。
皆さん、とても気に入られたみたいです。
まあ、あの馬車は、言わば移動できる家、と呼べる代物ですし、全く揺れないですから、長時間の移動も快適ですからね。
ついでに、魔導具である以上、MPを消費し続けるのですが、それも付与によって負担は最小限になっているので、MP切れを起こす心配も無いです。
何より、超級の魔物に襲われても無傷でいられるほどの防御結界も付いているので、超安全ですよ!
魔導ポストは言わずもがな、そんな便利な物があるのなら、我が家にも是非、と言う話でした。
この程度なら、その気になれば3日もあれば全部作れますが、そうするとすぐに次のを頼まれそうな感じがしたので、製作期間は1ヵ月を貰いました。
一通りの話し合いが終わり、食堂を出た僕は、当然のようにセシリアに手を引かれ、またしてもセシリアの部屋に来てしまいました。
いや、この部屋で過ごすように言われているから、ここに行くしかなかったんですが、それでいいのか?
まだ正式に婚約が決まったわけでもないのに、未婚の男女が同じ部屋で2ヶ月も寝泊まりするんですよ?
「さあ、レオ君!自分の部屋だと思ってくつろいでよ!」
「いや、こんな女の子の部屋に通されて、自分の部屋のようにくつろげって言われても、無理でしょう?」
「え~、別に良いじゃん。どうせ将来結婚するんだしさあ。そんなの気にするだけ無駄じゃない?」
「もう結婚するのは確定なのか・・・まあ、努力するよ」
「そうそう、頑張れ!どうせすぐに慣れるよ」
何とも気楽に言ってくれるね、我が婚約者(仮)は。
「さて、レオ君。今からなにをしようか?」
「あ、悪いんだけどさ、手紙を書いても良いかな?」
「手紙?誰に?」
「僕の家族に。さっき話していたでしょ?僕の両親にセシリアとの婚約のことを伝えるって。その手紙だよ」
そう言えば最近、全然家族に手紙を書いていなかったんですよね。
それと、家族からの手紙にも目を通していなかったんですよ。
いい機会だから、今までの報告もしておきたいからね。
「ああ、そっか。そうだよね。うん、レオ君のお父様とお母様にも伝えないとね。私達の婚約の事を!えへへ・・・」
「嬉しそうだね、セシリア?」
「そりゃそうだよ!だって、前世からずっと待っていたんだよ?」
「待っていた?何を?」
「レオ君が、ううん、星夜君が私に告白してくれるのを」
「そうか・・・」
「さっきレオ君が、私と婚約したいって言ってくれた時、すっごい嬉しかったんだからね?もう、泣いちゃうかと思ったよ」
「ずいぶん、待たせちゃったみたいだね。では、改めて。貴女の事が好きです。僕と婚約してください」
「はい、喜んで!」
それからは、あっという間に時間が過ぎていきました。
まず、両親に宛てた手紙ですが、送った30分後には返事が来て、ただ一言、
「お前の好きにしなさい。父より」
と、書かれていました。
さすがお父様ですね。
でも、余りにも返事が早かったから、他の皆は、特にお母様は僕の手紙を見たのかな?
と思っていたら、更に1時間後、今度はお母様から手紙が届きましたよ。
すごい長文でしたが、要約すると、セシリアと大切にしなさい、できれば結婚する前に、一度顔を見て見たい、と言うものでした。
両親揃って、僕とセシリアの婚約を歓迎してくれたみたいですね。
その事をフォルセシウスさんとマリアンヌさんに伝えると、翌日には婚約発表をしましたよ。
大勢の、そう、セレスハートにいる大勢の人々の前で、僕とセシリアの婚約が発表されるわけですよ。
何この羞恥プレイ!?
さらに、僕ら2人を乗せた馬車に乗り、またセレスハートの街を周りましたよ・・・
2度目のパレード、キツかったなあ・・・
それと、婚約発表からパレードの最中に、ずっと「聖下」コールがされていました。
それに対し、僕とセシリアはずっと笑顔で手を振り続け、精神がゴリゴリ削られましたよ・・・
それと、セレス様の分身は消え、ステータスは無事戻りました。
セレス様は最後に、ピエナスのステータスとスキルをごっそり奪い取り、適当な場所にランダムで飛ばしたみたいです。
ここからどう生きるかは、ピエナス次第ですね。
ただ、飛ばされた場所によっては、すぐに人生が詰んでしまっているかもしれませんが、そこは彼の運に任せましょう!
あと、出来れば2度と会いたくないですね。
頼まれた魔導具も全て作り終わり、予想通り、新しい魔導具を要求され、それもゆっくり時間をかけて作りましたよ。
そうそう、レジスタンスの皆さんがどうなったかと言いますと、戦闘要員だった1000名は、そのまま聖騎士団の外部部隊、という立場になりました。
正規の聖騎士とは別に、能力に優れるがどこかに難あり、と判断された人達が集まる、聖騎士と同等の立場を持った傭兵部隊、とでも思ってください。
その部隊長には、ヴァンドさんが就任しました。
ヴァンドさんはそれなりになの通った人物だったらしく、聖騎士からも批判されることなく、認められていましたよ。
もちろん、戦闘要員じゃなかった4000名にも、結構な額の報奨金が出ましたよ。
もちろん、彼らは褒美の為に立ち上がったわけでは無いのですが、セレスハートに住んでいる全員が彼らに感謝し、なんであれお礼がしたいという事で、報奨金となりました。
あ、僕からは、セレスユカティスの街に放置して来た、大理石でできた巨大女神像を、あのまま寄贈することにしました。
僕としては、ただデカいだけで処分に困っていたアレを貰ってくれると言うので大助かりですが、彼らにとっては、女神の使徒からの贈り物という事で、大層喜んでもらえましたよ。
ちょっと罪悪感が・・・・
そして、この2か月間をフルに使って、セシリアと楽しく過ごしました。
身分を隠して色んな街に遊びに行ったり、色んな魔導具を使って遊んだりしましたよ。
あ、それと、セシリアから
「スマホみたいな魔導具って作れないの?」
と言われたので、作ってみました。
ただ、この世界では電話とメールが出来ればいいだろう、と言う話しになり、結局その2つの機能しかないのが出来上がりました。
これは僕とセシリアだけしか持っていない、というか、僕らにしか使えない魔導具です。
だって、メールで使っている文字が日本語なんですよ。
この世界の人には、決して理解できない言語なので、僕たち専用です。
あ、そう言えばミコトさんも元日本人だから、コレ使えるね。
いつか機会があったら、渡してあげよう。
これが、この2ヵ月間でやったことをざっくりとまとめた話しです。
で、今僕は何をしているかと言いますと、女神教の上層部の皆さんに見送られ、この街を出ようとしている所です。
場所は女神城の中庭で、僕がピエナスと戦った場所ですね。
そこに、ストラテラ家の皆さんを始め、5人の枢機卿や、この街にいる大司祭、聖騎士団、さらに女神城で働いている人、シスターや執事、料理人までいますね。
聖騎士団の中には、チェスカさんもいます。
チェスカさんは、今回の功績が認められ、遂に見習いから聖騎士に昇格したそうです。
「それじゃあ、レオナルド君。また会える日を、首を長くして待っているよ?」
「ええ、向こうでやるべきことをやり終えたら、またこちらに来ますよ。ただ、学校は卒業しておきたいので、数年はかかってしまいますが」
「それくらいなら待つさ。では道中、気を付けてね?」
「ええ、フォルセシウス教皇も、お元気で。今までお世話になりました」
「レオ君。私、会いに行くからね?」
「え?別に良いけど、結構遠いよ?往復するだけで、相当な時間がかかってしまうよ?」
「それなら大丈夫だよ。私に考えがあるしね?」
何だろう?ちょっと気になりますね?
けど今は、見送りに来てくれている人に挨拶をしないとね。
「じゃあ、そろそろ行きますね」
「うん、いってらっしゃい」
多くの人に見送られ、僕は宙に浮かび、高度を上げていく。
下の方からは、大勢の人が僕に声をかけてくれていますね。
じゃあ、最後くらいは女神の使徒らしく、光に包まれてこの地を去りましょうか?
僕は『空間支配』と使い、僕の体を光で包み、さらに光輝く大きな翼を出現させました。
女神の使徒、ということで、イメージは天使です。
そして、大きく羽ばたきながら、北の空に向けて飛び去ります。
さあ、アステリア王国に帰りましょうか!
100話連続投稿完了!
いつも読んで下さている皆様には申し訳ありませんが、これを1つの区切りとし、しばらくはお休みさせていただきます。
予定では、早ければ今月中に、遅くても来月中には再会する予定で、その間に作品の見直しをしようと思っています。
いくつかご指摘を頂いている箇所もあり、また、初期の設定とずれている場所が散見されるので、この機会に修正したいと考えております。
修正した個所は、その話の一番上に書いていく予定です。
また、以前からやろうとして手付かずだった、文章の改行作業も行うつもりです。
勝手で申し訳ありませんが、次の投稿はしばらくお待ちください。




