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守るために無双します~お前はこの世界をどうしたいの?~  作者: 枯山水庭園
第1章 アステリア王国 幼少期編
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第10話 帰ってきた先代(脳筋)

 お披露目会への準備も着々と進み、後は当日を待つだけとなっていた。

 メルト兄様は、お披露目会で少しでも良いステータスを披露するため、お父様は息子を自慢したいため、ここ数カ月は毎日特訓をしている。何のって?筋トレと剣術です。これをすることによって、STRとVITが上昇するそうだ。また、5歳で武術のスキルを持っている者は稀なので、この特訓で剣術(小)のスキルを会得し、自慢したいらしい。主にお父様が。

 以前1度だけ鑑定して見た、メルト兄様のステータスからすると、STRよりINT、ようは攻撃力より知力の方が成長しやすいように見えたんだけどな。メルト兄様がヤル気を出しているので、それでも良いかもしれないけど。

 ちなみに、武術系のスキルを習得すると、ステータスにプラスされるらしい。もちろん、魔法系のスキルを習得した場合も然り。スキルによっては、ステータスが上がるものが数多く存在するそうだ。スキルは鑑定で見ることが出来ないので、ステータスが高い理由を聞かれたときに、お父様が自慢して答えたいらしい。

 ただ、メルト兄様の表情を見る限りでは、まだ剣術(小)のスキルは習得していないらしい。すごい焦っているのが分かる。お父様も察しているのか、焦っているのが分かる。だって、どんどん雑になり、声が荒くなってきているから。こんなので習得できるのかな?


 お披露目会出発まで、残り5日となった日の昼。家族みんなで昼食を食べているときに、ヤツは来た。

 その時の食堂は、お父様がピリピリしているのが原因で、空気が重かった。メルト兄様も思い詰めた表情で食事をしている。母様たちもメイドも執事も、もちろん僕も、何も言うことが出来ない。そんな時、玄関から

「帰ったぞー!!」

 デカい声が聞こえた。え?帰ったぞ?誰が?僕が混乱している内に、ズンズンと足音が近づいてくる。慌てて支配圏を発動させた時には、すでに食堂の目の前まで来ていた。

 バンっ!

「今帰ったぞ!皆の者、元気だったか!?」

 筋骨隆々のナイスミドルが入ってきた。短く刈り込んだ金髪と、綺麗に整えられた髭、鍛え抜かれ、はち切れんばかりの筋肉。そして暑苦しい中にどこか爽やかさを感じさせる笑顔。誰!?この人!?ん?よ~く見るとこの人、誰かに似ているような・・・

「お義父様!?お帰りなさいませ」

「お久しぶりです、お養父様。お帰りなさいませ」

 真っ先にジェシー母様とお母様が席を立ち、挨拶をする。

 お義父さま?てことはもしかして

「おじいさま、おかえりなさいませ!」

「父上!お帰りになられるなら、連絡をください!家族で出迎えたものを!」

 メルト兄様とお父様も席を立つ。

 アンはジェシー母様が抱えているため、僕だけがイスに座ったままだ。てか、僕のお祖父さま!?確か43歳だったと聞いているけど、30代にしか見えないよ!?


 よく分かっていない僕に気付いたお祖父様はこちらを向き

「お前はレオか?大きくなったな!私がお前の祖父で、グレンの父でもあるジルベスト=シオン=スティードだ。最後に会ったのは、お前がまだ生まれてすぐだったから、私のことは覚えていないだろう?気軽にお祖父ちゃん、と呼んでくれていいぞ!」

「そうでしたか。改めまして、孫のレオナルド=シオン=スティードです。お帰りなさいませ、お祖父様」

 お祖父様、と呼ぶと、ちょっと残念そうな顔をしていた。本当にお祖父ちゃんの方が良かったのかな?

「で、父上。どうして急にお帰りになられたのですか?」

「決まっているだろう?もうじきメルトのお披露目会だからな!初孫の雄姿を見に来たんだよ!」

 え?てことは、お祖父様も一緒にお披露目会に行くのかな?

「そうでしたか、5日後の出発となりますが、父上の予定は大丈夫なのですか?」

「うむ。依頼は全て片づけてきたからな。しばらく何も仕事は無いぞ!」

 そういえば、お祖父様は冒険者をやっているんだっけ。貴族の元当主が冒険者って、普通なのかな?いや、そんなはずはないか。ジェシー母様が以前ボソッと、脳筋一族、って言っていたしね。たぶんウチだけだ。と思うことにした。

「で、メルトよ!お披露目会に向けて、ちゃんと鍛えてあるのだろうな?なんなら、お祖父ちゃんが力を貸すぞ!?」

 お祖父様の暑苦sh、もとい、溢れるエネルギーの塊のような存在感に、しばし吹き飛んでいた重い空気が戻ってきてしまった。

「ん?どうした?」

 1人だけ状況が分からないお祖父様が困惑し、キョトンとしている。

「実は、メルトに剣術(小)のスキルを取得させようと、以前から特訓をしているのですが、なかなか成果がでずに・・・」

 お父様が苦しそうに話す。

「何がいけないんだ!?メルトは私の特訓に、必死に食らいついてきているんだ!メルトに問題は無いはずだ!私の教え方がダメなのか?どうすればいい?どうすればメルトの努力に報いてあげられるんだっ!?」

 お父様が今まで必死に押し殺してきた感情が、ついに爆発した。お父様がピリピリしていたのは、メルト兄様にスキルを習得させてあげられない、自分の不甲斐なさに苛立っていたようだ。

 やはりお父様は、どこまで行ってもお父様だった。表面では子供に厳しく接していようとも、内側では常に子供の事を考えている。今回だって、スキルを習得できないメルト兄様に指を差さず、自分に指を差している。僕もいつか、こんなカッコいい大人になりたいね。


「何だ、そんなことか?」

「は?」

 お父様が呆けた顔をお祖父さまに向ける

「その程度のことなら、私に任せなさい」

「いや、しかし・・・出来るのですか?」

 最初は拒否しようとしたようだけど、考え直したのか、僅かな希望に縋るようにお祖父様に聞く。

「そうだなぁ。たぶんだが、明日までには習得させられると思うぞ」

「明日まで!?」

 これには一同びっくりした。何せ今まで、そう、何カ月も費やして特訓してきたのにできなかったスキルの習得を、1日で習得させると言っているのだから。

 絶句してしまっている僕らを無視し、お祖父様は

「どうする、メルト?私の特訓を受けてみるか?ただし、グレンのよりも厳しいがな?」

「はい。おねがいします!」

 メルト兄様は即答した。

「よし。では食事が終わったら早速始めようか。何、私は今までに無数の戦士を育ててきたのだ。剣術(小)スキルの習得ぐらい、あっという間よ!」

 はっはっはっ!と大笑いしている。本当に大丈夫だろうか、この人?

「父上」

「ん?」

 お父様が、真剣な表情でお祖父様に向かって

「メルトのこと、よろしくお願いいたします!!」

 深々と頭を下げた。初めてお父様が、誰かに頭を下げたのを見た。今まで一緒に特訓してきたのだから、最後までメルト兄様とやり遂げたかっただろう。だが、そんな自分の我が儘より、息子のことを考え、お祖父様に託したのだ。頭を下げてもなお、そこには立派な父親の姿があった。

「うむ、任された。だがその前に」

 まだ何かあるのだろうか?

「私にも昼食をもらえないだろうか?腹が減っていては、この後の特訓で倒れてしまうかもしれんからな!」

 そう言って、用意された食事を豪快に食べ始めたのだった。本当に貴族の元当主か?と言いたくなるほどの食べっぷりだ。

「ほれ、メルトも食え食え!たくさん食べないと力が出ないぞ?」

「はいっ!いただきます!」

 メルト兄様も、お爺様を見習ってか、いつも以上に食べ始めた。

 そんなに食べたら動けなくなるのでは?


 翌日、朝。

 食堂で朝食を食べていると、メルト兄様とお祖父様が入ってきた。

 ずっと支配圏を起動させていたので、僕には分かる。この2人、あれから今までずっと特訓していたのだ。さすがに夕食は食べに来ていたけど、それ以外はひたすら特訓。そのため、メルト兄様はボロボロの土まみれ。目は充血し、疲労によりフラフラしている。お祖父様は、多少汚れてはいるが、まだピンピンしている。結果はどうだったかと言うと

「おとうさま!スキルしゅうとくしました!」

 満面の笑顔をでメルト兄様が報告してくれた。

「本当か!?よくやった!」

 そう応えたお父様も、目の下にクマが出来ていた。メルト兄様が心配で、一睡もしていないのだろう。報告を受けるまではソワソワして落ち着きが無かったお父様も、成功の報告を受け、満面の笑顔でメルト兄様に近づき、抱き上げた。

「な?1日でできただろう?私を誰だと思っている?かつて王国最強と言われたジルベストだぞ?」

 お祖父様は得意げにふんぞり返っている。え?この人王国最強だったの?マジで?

 まあ、やり方はともかく、結果を出したんだから、指導者としても本物なんだろうね。だけどね、5歳児に対してあのやり方はどうなんだろう・・・

「父上、一体どうやったのですか?良ければ教えていただけませんか?」

 尊敬の眼差しでお祖父さまに教えを乞うお父様。聞かなきゃいいのになぁ。

「うむ、簡単だ。1日中私がメルトを、木剣で打ち続けたのだ」

「え?今何と?」

「だから、あの後ずっと、メルトと木剣を持って対峙し、私がメルトを、ずっと打ち続けたのだ。簡単だろう?」

「何を考えてるんだあんたはああああっ!!」

 お父様の絶叫が響き渡った。話を聞いていたジェシー母様は、慌ててメルト兄様に駆け寄り、ケガが無いか確認している。メルト兄様がケガをするたびに、お祖父様が直していたから、どこにもケガは残ってないんだけどね。さすが冒険者。回復薬は常備しているようだ。でも、血の跡までは消せなかったようで、服のあちこちに、血が変色して黒くなったのがこびりついている。

 はっきり言おう。あれは端から見ると、ただの虐待である。ろくに抵抗のできない5歳児を、大の大人がひたすら木剣で叩き続ける。現代日本だったら、発覚したらポリスマンが出動する案件間違いなし、という内容でしたよ。


 怒りに顔を真っ赤にさせながら詰め寄ってくるお父様を軽くいなしながら、お祖父様は

「だから最初に厳しいぞ、と言っただろうが?それに思い出してみろ。お前が剣術(小)のスキルを習得した時はどうだった?2人で魔物のいる森の中で特訓しただろう?それに比べたら、まだまだ温いだろ?」

 ちょっと待て、何それ?お父様も経験済みなの?

「そういえば、そんなこともありましたね・・・」

 あ、お父様の勢いが止まった。いや、しぼんだ。

「だろう?メルトは基礎が殆ど出来ていたからな、1日で行けると思ったんだよ。それにこの子は、一度も弱音を吐かなかった。さすがお前の息子で、私の孫だな!」

「そうですね、やはり特訓はこうでなくては!強くなるためなら、どんな厳しい特訓にも耐えること!それが我がスティード家の基本方針でしたね!」

「うむうむ!思い出したが息子よ!人間追い詰めれば、いくらでも強くなれる!強くなれば、大抵の困難は腕力で解決できるものだ!」

「「はっはっはっはっはっはっはっ!!」」

 スティード家が誇る脳筋コンビが、仲良く声を上げて笑っている。

 メルト兄様は疲労でとっくに落ちていて、お母様は相変わらず「アラアラ♪」している。

 僕とジェシー母様だけが頭を押さえ、

「「はあぁ~」」

 同時にため息をついた。

誤字、脱字など、お気付きの点が御座いましたらご指摘をお願いいたします。

もし、この作品を読んで、面白い、と思って頂けたら幸いです。

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