71話
約1ヶ月
読んでください(直球)
妖怪の街千年京・ギルド前
妖怪の街のギルドは他の街のようにファンタジー的洋風な建物ではなく、街の雰囲気に合うように作られた和風の建物となっており、イメージ的にはお化け屋敷が少し綺麗(清潔的な意味じゃない)になった位の「古いけど威厳あるね~」「それな~」程度の誰もが心に留めるような建物ではないが見たら感想が言いたくなる程の建物である。
アキは自分の力を知っておきたいのとちょっとしたお金稼ぎの為にギルドに来ていた。
「体におかしな所は無し。ステータスが下がっておかしくなるかと思ったけど大丈夫そう。良かった。」
体を確認しながらギルドに入ってきた人物に変な目を向けるが、それがアキだとわかった瞬間空気が変わった。
「ん?」
「よぉよぉ、さっきの戦い見たぜ!」
「お前さんに賭けてたのに負けちまったぁ」
「そりゃ、お前の運が無いだけだ!はっは!」
「お前さんも災難だったなぁ!はっはっは!」
「ああやって無理難題よく吹っ掛けてくるもんな」
「今回のだってパーティーで参戦してたとしても基準レベルあげて、絶対に勝てない敵の役やるんだぜ」
「まぁ、そんな人に惚れ込んでる私達も私達よね」
「それにあの人の気まぐれは今に始まったことじゃ無いわ」
「そりゃそうだ、じゃなきゃこの場所何かとっくに無くなってるからな!」
「しゃあ、乾杯するか!」
「シズク様万歳!千年京万歳!」
「「「シズク様万歳!千年京万歳!」」」
勝手に話が進められ何か分からない内に宴会会場のようにどんちゃん騒ぎが始まった。飲めや飲めやと注がれる樽のお酒に皆で気持ちよく飲み、気持ちよく喋り、気持ちよく寝る。体がちょっと特殊なだけの変人の暖かい集まりがそこにあった。
そんな光景を見守っていたアキに後ろから接近し飛び出してくる小さな影。そしてそれに気づいたアキが振り返った瞬間影はアキの体に埋もれる。
「……はぁぁぁ。何してるの?」
少し疲れぎみに埋もれている影に問いかけるアキ。影はアキの体に埋もれた後顔を擦り付けたり匂いを吸ったりしている。
「匂い嗅がないで」
「……いい匂いだよ?」
「嬉しくないよ?」
「……くさいのがいいの?……私はやだ」
「私も嫌だよ!只そんなに嗅いでもいいことないよ?」
「……そんなことない……こうしてれば空腹が少し耐えれる」
「私にそんな効果ないよ!?」
「……私だけ……ふふ」
「取り敢えず、離れてファナ」
「……はーい」
アキはあることに気付く。いつもならアキからファナに近づくのに今回は向こうからやって来た。それにここは妖怪の街の千年京の筈。そしてアキは昔ファナに種族を聞いたときに猫獣人と言っていた事を思いだしその事を指摘しようとする前にファナから先に言葉を発した。
「……私、猫じゃないんだ」
「うん」
今まで騙していたことを悔いるようにしかし一生懸命伝えようと言葉を発する。
「……私は……猫又なの!」
"バサリ"と被っていたフードを外し二つに別れた尻尾を見せる。ついでに耳も。
「それで?」
勇気を振り絞った告白はなんともないように返されてしまった。
「……それだけ」
「そっか」
アキが特に驚かなかったのは頭を撫でるときによく尻尾が二つあることは確認していたからである。さすがに妖怪とは分からなかったが。
自分の秘密をなんとも無いように返されてちょっと拗ねちゃうファナ。しかしここで彼女に更なる不幸が襲いかかる。
「……もう」
「拗ねちゃったか。ならこのケーキは私が食べよ。」
アキの手に握られているのはショートケーキ。しかしそのショートケーキはギルド【料理研究家】最高料理責任者兼経営最高責任者であるギルドマスターと色んな所で料理を作って最前線で料理を提供し続けるアキがコンビを組み、材料から機材その他全てを一から全て作り上げ、試行錯誤に試行錯誤を繰り返し続けた結果に出来た、料理の街主催『え?デザートって美味しいんすか?』というクソアホみたいな企画の名前をプレイヤーが考えて、運営がそれに悪乗りして世界で名を轟かせる料理人に審査してもらうとか言うアホ企画大会を開催し、そこですべての審査員を満点評価で唸らせた幻のデザート。そんなものが目の前にあって黙っているほどファナも女を捨てていない。
「ごめんなさい……それをください。」
「はい、どうぞ」
「……んぅ、!あっ…あっ…あー!」
酒を滝のように飲んでいるなかで優雅にケーキを食べる二人。混沌過ぎる。
「コラー!何やってんの!」
突然声が響く。どんちゃん騒ぎで溢れていたギルドの人達が突然石のように固まる。アキは咄嗟に声の場所を突き止めようと周りを見渡しても声を出したような人物は居なかった。
「どこ見てんの?とろぎつね」
「え?」
アキが上を見ると真上に紙で作られた猫がいた。
「あんたが早く行かないから主様怒ってるのよ?」
「あの?主様って誰ですか?」
「はぁ!?あなたねぇ――」
「やっべ!伝えてねぇ」
「アホかてめぇ」
「逃げるが勝ちだ!」
「――へぇ、ごめんね、とろぎつね。ちょっと用事出来た。」
そう言うと紙の猫は巨大化し伝言役を捕まえるとあっという間にどこかにいってしまった。
「結局誰?」
「あの!アキさんですね?」
「はい?」
「シズク様からの指名依頼です」
誰の使い魔か分からずに居たところに指名依頼が来たので納得しながらアキは依頼を受けた。
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指名依頼
千年京東門から先に言ったところに遺跡がある。そこに調査に行ってもらいたい。それに今のお前なら丁度いい強さの場所だ。勿論転職後の話だからな。
報酬
『印』のスキル、25000ギル、王城ダンジョン入場券
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こんな風にチマチマ続けていくのでよろしければこれからもよろしくお願いします。




