60話
起きたのが二時半という遅さ。
最近は設定を考えるのが楽しくなってきました。
書くときよりも設定しているときが楽しいのは何故なんだろうか。
『黒騎士』の顔は嘗て無いほどの狂喜の表情をし、『黒騎士』が出せる全力のスピードで槍が飛んできた方へと向かっていった。
[導きの聖女よ!勝利へと!私たちを導いて!【英雄降臨】《ジャンヌダルク》]
ナツ──アキのお姉さん──は自分の剣を地面に突き刺し、空中に出てきた旗を剣の横に突き立てた。
ーータケ君聞こえますか?
ーーハァ、聞こえます!
ーー私の指示通りに進んでください
ーーうぁ、あぶね!えっと、はい、わかりました
数十秒後タケが森の中から姿を表し、攻略組は気を引き締めて、タケの方向へと向くが『黒騎士』が追ってくる様子は無かった。
『黒騎士』は走る邪魔な草木を斬り飛ばし途中で出てくるテイムモンスターも確実に斬り飛ばしていた。
そして、反応が近くなり1歩を踏み込んだところでいきなり視界が灰色になった。
「エエイッ!コンナモノ」
『黒騎士』は剣を振り切り煙と思われるものを飛ばし、ついでに周りの木も斬り飛ばした。
反応が遠ざかっていることに気付き、追いかけようとするがそれを阻止するようにテイムモンスターと飛来物が飛んできた。
飛来物を剣で防ぎ、テイムモンスターを蹴りで吹き飛ばした。
「残念……倒せなかった」
「コレデ、タオソウナド、ナメスギデハ、ナイカ」
声が聞こえてくるがその声は、木が発声しているかのように周りから聞こえる。
そして声が聞こえている間でもテイムモンスターは次々と現れ攻撃を仕掛けるが斬られ、殴られ、蹴られどんどん数を減らしていく。
空からの攻撃が無いことに気付き、上を見上げると1体の鳥が『黒騎士』の頭上を旋回していた。
『黒騎士』は”ニヤリ”と嗤いその鳥を落とそうとジャンプした。そこでテイマーは気付いたのか「アッ!」という声をあげた。
その声は木からではなく素の声だったため、位置を特定した。
(あの木の影か。見つけたぞ!)
『黒騎士』は当初の目的通り鳥を斬り飛ばした。
が、斬り飛ばした直後鳥の体は膨張し爆発、そして煙もついでに出してポリゴンとなって消えた。
「グヌゥ!」
『黒騎士』は重力に従い落ちていくが落ちる最中に、何度も斬られ反撃しようとするが、全く当たらず最後は地面に思いっきり叩きつけられた。
「時間は……稼いだし……ダメージも……与えた……撤退する」
直後テイムモンスターは”ゆらゆら”と煙になって姿を消した。『黒騎士』がテイマーだと思って見つけた人影も”ゆらゆら”と消えていった。
すべてが幻であったかのように森の景色も、人の反応も、すべてが正常に戻ったが、異常だったものがいきなり正常に戻るとすごく動揺する。『黒騎士』もその例に当てはまりひどく動揺していた。
「全軍総攻撃!導かれし攻撃開始!」
魔法が、アーツが、テイムモンスターのスキルが、絶えることなく『黒騎士』に殺到する。
HPが”ゴリゴリ”削られ残り2割となったところで黒い瘴気溢れた出て来て攻撃を無効化した。
『黒騎士』の体はもうボロボロだった。鎧は剥がれていたり、砕かれていたり、ひび割れていたり、甲冑は右半分が割れていた。
だが割れたところ、砕かれたところ、剥がれたところ、ひび割れたところすべてから黒い瘴気が溢れていた。瘴気は全身へと纏わりつき『黒騎士』を人形のように動かした。
「あー、こいつも失敗か。うまくいくと思ったんだけどなあ。さっさと次の実験に行こうかな。」
「おいてめぇ、誰だよ!」
声は聞こえなくなっていた。全員が困惑していると『黒騎士』は”ゆらり””ゆらり”と立ち上がり、そのままあの禍々しい大剣を持ち今までの遅さはなんだったのかと思うほどの速さで迫ってきた。
『黒騎士』の目は光っておらずただ丸い目が有るだけだった。
今までの闘争本能丸出しだった『黒騎士』の剣とは違い的確に相手を殺すための剣になっていた。
だが今はなんとかナツの導きのお陰で耐えていたがいきなり導きが消えた。その事に動揺し数人がポリゴンとなって消えた。
「ハァ……ハァ……嘘でしょ、ここで終わるなんて。」
膝をつき立ち上がれないナツに『黒騎士』は剣を突き刺した。
かに思われたが、『黒騎士』の左腕がいきなり吹き飛んだ。
[【英雄降臨】《ヘラクレス》]
「私ナイス射撃!でも頭じゃ無いか。」
弓を構えた状態のカナ──アキの妹──がいた。
「お姉ちゃん大丈夫?死んじゃった?」
「あんたに助けられてギリギリ生きてるよ。」
『黒騎士』は即座にカナへとターゲットを決め走り出した。だが転けた。いきなり足払いを掛けられたように転けた。バナナの皮を踏んだみたいにきれいに転けた。
「うぇ?」「転けたのか?」「嘘でしょ」「顔面ダイブだよ」
その事が広まり攻略組は大爆笑に包まれた。
が『黒騎士』は即座に起き上がろうとしたが体に矢が刺さり動けなくなった。
「[麻痺矢]痺れるでしょ?」
『黒騎士』は無理やり動こうとするが体に稲妻が纏わりつき麻痺の効果がかなり高いことがわかった。
だがその稲妻を喰らうように瘴気が『黒騎士』に纏った。
「ふーん、動けるようになったんだ、でも残念もう遅いよ。」
「[グングニル]」
『黒騎士』は”ふらり”と立ち上がり剣を構え避けたと同時に剣を振った。
振り切った先には小太刀で防御しているファナがいたが、力で負け斬られた。
ファナのHPがどんどんと下がっていくがヒーラーが回復魔法を唱えまくりなんとか0にならずに踏みとどまった。
タケの渾身の槍は避けられタケは動けなかった。アーツの硬直が長いものを使ってしまったため動けなくなっており『黒騎士』に接近を許してしまった。
「させないよ。[サンダーシュート]」
雷を纏った矢が『黒騎士』を貫かんとするが剣で防御された。
『黒騎士』は何事も無かったようにタケの方に向くが近接・遊撃部隊が次々と現れ、ダメージをちょびちょびと与えるが、その代わり確実に反撃をもらいポリゴンとなって消えていった。
ジグとグラスも連携して攻撃をするが確実にいなされてしまう。だが連携していることもあって直ぐには反撃して倒せなかったようである。
「【真名解放】[デュランダル]」
ヒスイが持っていた剣は刃の部分が翡翠色になり素人が見ても鋭すぎる位に見える程に凄まじい剣になっていた。
『黒騎士』はいち早く状況を知り、ジグとグラスの二人をまとめて剣で吹き飛ばし即座にデュランダルと打ち合った。
だが拮抗もしないで段々と『黒騎士』の持つ剣が切断されそうになっていた。
「…………」
即座に身を引いて体勢を整えようとするがヒスイがそれを許す筈もなく防戦することになった。
流れるように剣を繋いでいくが決定打は出ずに体勢を整えられてしまった。
「…………」
後ろから迫っていた近接・遊撃部隊を斬り飛ばしその後ろにいた遠距離部隊に向かって走っていった。
「逃げられたか!」
”シュー”という音と共に剣は銀色に戻りヒスイは片膝をついてしまう。
『黒騎士』は遠距離部隊を壊滅させたあと、自分を追い込んでいたヒスイを見つけ即座に斬りかかる。
「ヒスイ、逃げろ!」
「え?」
ヒスイが振り向いたときには剣は振り下ろされていた。
”キィィィィィン”
だがその剣はヒスイに当たることは無かった。
「目を閉じるな相手を見ろ!まだ避けられる位置に剣はあっただろ!だがよくやった。ここから反撃開始といくぞ!」
『黒騎士』の剣を止めたのは聖王であった。
前に言っていたアップデートにより[オルレアンの乙女]から[導きの聖女]に変更しました。
ヒスイの【真名解放】は必殺技ではなく固有スキルですのでご了承下さい。
多分裏設定──固有スキルはプレイヤー、一人に一個の強力スキルです。ただ固有スキルの発現条件はプレイヤーごとに違います。




