第1話:最後の君へ。
宜しくお願いします。
夏だ。クソ暑い。
夏はなぜ暑いのか。なんて小学校低学年の時には答えを知っていたような質問を、脳内で見知らぬ誰かに問いかけながら、だらだらと通学路を歩く。
自宅から学校までの道のりは遠く、歩いて40分程掛かるのだ。
自転車で行けよ。と思うだろうが、あいにく自慢のシューマッハ号は故障してしまって、というよりも無茶苦茶に切り刻まれてしまって今は無い。
まったく。最近は物騒な世の中だと言うが、本当にそうだ。
高水圧カッターでも使って切ったのかよと思わずツッコミを入れたくなる気持ちが湧き上がる。それを抑えながら、とりあえず警察へ通報したが、犯人の手掛かりは全く無く、警察の人もさっぱりだとさ。割と事件性が高いみたいだから、真剣に捜査したらしいんだけどな。凶器の一つも無かったらしい。
高二の夏、しかも夏休み直前に、なんてこったと。ブリッジしながら叫ぶことになるとは夢にも思わなかった。
「あ〜紅兎くんおはよ〜今日も髪型かっこいいねぇ〜」
滅茶苦茶振った後のコーラ見たいな声で話しかけて来たそいつは、俺の幼馴染みの陽菜だ。
ガキの頃からの仲(いつからかは思い出せないが)で、どうやら遠い親戚らしい。
小柄で、いつもぼけ〜っとしてる奴だ。
正直、俺には親が居ないからこいつが唯一、家族のような存在だ。
俺の髪がどうとかは、寝癖のことを言っているのだろう。自転車の件があってからと言うもの、朝起きてから時間が無く、寝癖を治すことを忘れがちだ。(早起きすればいいのだが、それでは犯人に負けた気分になるから却下)
「よう。今日もちっこいな。陽菜。ちゃんと食ってるのか?それともほかの部分に栄養が回ってるとかか?」
自分でも分かるくらいの悪い笑みを浮かべながら問いかける
陽菜の身長は150cmくらい。女子の中でも小さい方だと思うので、とりあえずいじっておく。
それに実際、陽菜の胸は、ラージサイズだ。ビッグアメリカンコーラと言ったところか。いやマジで。
「え〜、ひどいよぉ〜それにほかの部分ってなんなの〜?それなら紅兎くんだってもうちょっと身長伸ばしなよ〜」
こいつ。
ずけずけと気にしてる事を言う。
他のやつなら即刻ブチ切れてやる所なのだが、こいつは悪気が全く無いから怒ろうにも怒れない。
まったくタチの悪い奴だ。
まあ、そもそも俺が悪いんだけど。
「紅兎くーん。おーい。聞いてる?」
腰あたりの布を指先で引っ張りながらむくれた顔で俺に問いかける。
子供か。
「聞こえてるよ。というかお前ずっとここで待ってたのか?時間ギリギリだぜ?優等生なのに大丈夫なのかよ。」
今、学校へ向かいながら話しているのだが、時間がかなりギリギリなのだ。普段は2人とも自転車で一緒に登校しているのだが、先述の通り俺の愛車は粉々になっているので2人とも徒歩である。(こいつは自転車使えよ。と思うが。)
そして、陽菜は学年トップクラスの成績優秀者なのだ。普段ぼけっとしている様からは想像出来ないが、優れた学習能力を持っているらしい。
それとも親御さんが厳しいのだろうか?
付き合いは長いのに、俺は陽菜の家族について何も知らない。
「優等生なんかじゃないよ〜普通にしてるだけだよ〜。それより、急ごうよ。担任の先生に怒られちゃうよ?紅兎くんは遅刻魔なんだから、自転車登校してない時はわたしが付いてないと、すぐサボるでしょ?」
くっ。さっきからこいつは痛いところを。
そう。俺はお世辞にも優等生とは言えない。サボり魔かつ遅刻魔かつ補習常連者なのだ。
何故こんな俺と、陽菜は一緒に居てくれるのだろうといつも疑問に思うが、家族が居ない俺にとっては、孤独を紛らわせてくれる掛け替えのない存在である。
「分かったって。よし、じゃあちょっと急ぐぞ。」
走り出した。
「ちょっとまってよ〜!」
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