2.新しい学校
「……共学?」
何とか引っ越しも終わり、新しい学校に母と共に転入手続きをしに行った。
フォルクの学校は、建物の大きさはアルバの『人間』の学校とそんなに変わらなかったが、さすが田舎という感じで学校の周りは森かと思うほど草木が生い茂っていた。
そして、その学校には人間だけでなく、『魔法使い』もいた。
「共学って言ってもね、クラスは別なのよ。同じ建物に通ってくるだけで、都会の学校とそう変わらないわ。」
私の担任になる予定だというハナ=ルクラール先生は、私の驚いた様子を見て、そうフォローする。
別に、魔法使いが珍しい訳じゃない。都会にだっていっぱいいた。もっとも、魔法の練習には何もないような場所の方が都合がいいらしく、大人はともかく、学生はそんなに多くなかった。
アルバの学校は人間と魔法使いで、建物自体が別だった。授業内容が全く違うからだ。
正直、私は魔法使いのことが苦手だった。私たちには無い、不思議な力を持つ種族に何だか見下されているのでは無いかと感じることが度々あった。
実際、アルバの学校では、魔法使いの学校と交流会があったが、どこか上から目線の魔法使いに対し、人間側が憤り、度々いさかいが起こっていた。まともな交流なんて出来た覚えがない。
「確かに、魔法使いのことをあまり好いていない生徒もいますが……でも、話してみると、私たちと何も変わらない、良い子たちが多いですよ。実は、私はこの学校出身なんですけど、高校時代に魔法使いの子とも仲良くなって今でも連絡を取り合ってますよ。」
ハナ先生の言葉に、私は驚いた。アルバでは、魔法使いと仲良くしようなんて考える生徒はいなかったように思う。
「そうよ。せっかく同じ学校に通っているのだから、仲良くなれるかもよ。」
母が言う。母は前向きというか楽観的というか、私にとっては重大な問題を何でもないことのように言ってくる。
どうしても魔法使いに良いイメージが持てないんだけどなぁ……。
「まあ、無理はしないで。まずは人間同士の友達を作って、学校生活楽しみましょう。」
ハナ先生が、渋い顔をしていたであろう私に気付いて、そうまとめてくれた。
出会ってまだ数十分しか経っていないけれど、ハナ先生は良い先生だと思う。
その日の晩、私はアルバの高校の友人、ユイにメールをした。
『ユイ、新しい学校、魔法使いと共学なんだって!クラスはさすがに別だけど……。』
『えっ!マジで!?セナ大丈夫?』
『分かんない……。でも、先生は良い人そう。』
『そっか……。でも、その内こっちに戻って来れるんでしょ?それまで頑張れ!』
『うん、ありがとう。』
ユイとのメールで、今日一日中緊張と衝撃で硬くなっていた身体が少し楽になった気がした。
私の新しい高校生活、一体どうなるんだろう……。