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004 潜在超能力値測定


通常授業に新入生が慣れてきた頃に、能力開発の特別授業が始まった。

この授業こそ超能力国家帝国最大の特徴である。


この学校の生徒は全員超能力を使う才能がある。

超能力は子供のころから鍛えておかねばならない。

子どものころから当たり前のように超能力が使えるようになると、不意に起きたことでも反射的に対応することができ、感情が乱れていても安定して使用できるようになるとされている。

また能力の成長の面でも幼少期からの訓練に効果があるという研究結果が出ていた。


(昔の僕のような、特別な能力を持っている能力者はいない。

僕のような存在は二百年ぶりだと言われていたぐらいだ。この国にも今は一人いるかどうかって感じだろうな。


手を触れずに物体を動かす能力、熱などのエネルギーを操作する能力、第六感、身体能力強化、重力を操作する能力。

超能力者なら誰でもそれらの能力を持っている。

しかし、個人個人でそれぞれ能力の得意不得意がある。


例えば、歴史的に天才と呼ばれることになる月城晶は、全部の能力に適性があったけれど、一番得意な熱を操る能力をよく使った。

得意な能力を必殺までに高める方が簡単だからだ。炎を操り、すべてを焼き尽くす。

超ヤバい。


今日やる能力値測定は、その人物の持つ超能力の総合数値を計るものだ)


一人ずつ名前を呼ばれ、設置されている検査機の所まで進む。ヘルメット状のそれを被ってしばらくすると、背後に設置されている画面に数字が表示される。


(帝国が階級社会の実力主義だという影響がこんなところにも出ているな。

みんなの前で数値を表示させることで、対抗心を育てようなんていうのは、建前だと思う。

子どもの内から上下関係を意識させるつもりだろう。

優れた血統を持つ者は、高い能力値が出るからな)



黒髪の少女、波川美涼の計測結果が出た。

868。

三崎杏菜、青山進馬の数値は約500。

子どもの頃のこの検査で400以上が出れば十分に高い能力値で、十分な才能があると言われる数値だ。


(歴史ドラマや、映画でもよくある有名なシーンがこれから起こるのか)


次に名前を呼ばれたのが月城晶だった。

機械が数値を計測し、判定結果が出た。教師も生徒も驚きの声を上げる。

1112。

美涼は悔しそうな表情をしている。


(ひとりだけ能力値が1000を超える。天才月城晶が、その才能を見せつけた歴史的な場面だ。

訓練を受けていない子供の数値なのに美涼の868もすごく高い。月城晶がいなければ彼女がトップだったかもしれない)


次々と名前が呼ばれていく。月城晶の周りではまだ騒がしい空気が残っていた。


そして、転法輪融の名前が呼ばれた。


(心配だ。転法輪も代表二十家の一つだから能力値は高いはず。

ただ、不安があるとすれば僕の存在だ。

超能力の強さは、肉体と精神、その二つの力を合わせたものだとされる。だとしたら体は大丈夫だとしても、心が問題になる。

死神なんて呼ばれるようなやつ並みの精神力が僕にあるのか?

歴史ドラマでは、800ぐらいの数値が表示されたはず。公式記録でも確認したから間違いない)


計測が表示されたようだ。

ざわざわしていた空気がしんと静まり返る。

(どうなったんだ?画面が背後にあるせいでわからないぞ)


「この学年はすごいな」

計測をしていた教師の一人が言った。また場内の空気が騒がしいものになった。

融が計器を外してもらい、後ろを振り返る。

1001。


元の席に戻ると、美涼は頬を膨らませて、もっと不機嫌そうな顔になっていた。


(歴史と違う。なんでだ?

昔の、未来の僕が子どもの頃計った数値も800ぐらいだった。

融になった僕の数値が上昇している理由。

うーーん。

あっ、そうか。僕は12年以上生きているから他の子供たちよりも精神的に成長しているのだ。たぶんそうだ。

とりあえず、弱くなっているよりも、生き残る確率が少しは上がるだろう)




計測は続く。

212。

ある少女の計測結果が出た。今までで一番低い。

その子は泣きそうになっていた。


(みんなの前で発表するから、悪い場合はつらいよな)


全員の計測を終えて、教室へと戻る廊下で月城晶が近づいてきた。

「私の方が111も高いもん!」

それだけつぶやくと、サッと通り過ぎて行った。


(目をつけられた!? )


もしかして、歴史は悪い方へと変わったのではないかと、融は不安になるのだった。



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