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003 おともだち


精神年齢は十二歳以上、部屋で勉強や読書ばかりさせられていたから学力も高い。だから、これから十年以上授業は退屈なものでしかないと考えていた。それに友達も作れないだろうと諦めていた。


ある日、算数の小テストがあった。

授業時間の半分の時間を割かれていたけれど、融は開始十分で見直しまで終わらせていた。

その後は退屈そうに机でうつ伏せに眠って終了の合図待っていた。

時間になり、画面の送信ボタンを押そうとしたその時だった。


「ん」

隣の席に座っている男子生徒が指さしてきた。

よく見ると名前の欄が空白になっている。

融はあわてて自分の名前を記入してから、送信した。

真面目そうな男の子の名前は青山 進馬。


その後も、授業時間中にメガネ型の情報端末で、高等科の授業内容を自主学習していて授業内容を聞いていなかったのに、突然教科書を朗読するように指名された時は、そっと教科書のページ数を教えてくれた。

宿題や係の仕事、さまざまなことを手伝ってくれた。口数は少ないけれど、面倒見の良い少年だった。

年の割に大人びた落ち着きのある彼と、いつの間にか友達になっていた。 


そして、融は自分のことを、しっかりした性格で出来る男だと思っているけど、周りからはそう見られていなかった。




青山君とは学食でも一緒に食べる。

彼は小柄な見た目の割によく食べる。注文の際も大盛と必ず指定する。あんなに食べるのに全然太っていない。

今日の彼は、かつ丼だった。


(学食のメニューは百種類以上!全種類制覇するぞ。今日は、お子様ランチとやらを頼んでみよう。ポチッとな)


パネルで注文して、青山君の隣に座って待つ。

あの日のチャーシューの屈辱以来、月城晶から必ず離れて座るようになった。今日は向かいの席に、同じクラスの女子二人。ほとんど話した事がなく名前も知らない。彼女たちの注文もお子様ランチで、チキンライスに刺さった旗とおまけでついてくるストラップの種類が異なっている。彼女たちは赤と白と青の旗だった。


融のお子様ランチも配膳されてきた。

「いただきます」

ミートボール、チキンライス、パスタとサラダ、海老フライ、それにプリンが付いている。旗は月と星のマークが付いていた。旗を倒さないように注意して食べる。

(ラストはミートボール!それからデザートだ)


すべてを食べ終えてから、おまけの入った袋を開ける。

「スケルトンラメのウサギのぬいぐるみストラップ?」

ラメ入りの透明な生地で作られたウサギのぬいぐるみが入っていた。透明だから中身の綿が透けて見えている。

(なんだ、コレ?)


融が不信そうな顔で見ていると、前に座っていた女の子があっ!と声を上げた。

「ウルトラシークレットレア!いいなぁ」

物欲しそうな顔をして見つめてきた。

「やる」

(別に要らないし)

女の子はガタっと音を立てて立ち上がり、ウサギに手を伸ばして受け取った。

「わぁ、ありがとう」

「よかったわね」

隣でまだプリンを食べている女の子もうれしそうだった。

「うん、これとあと五種類で全部種類集まるんだ!」

「まだこれからも食べるの?」

「そうだよ、美涼ちゃん。全部集め終えるまで手伝ってね。約束でしょ?」

美涼ちゃんと呼ばれた黒髪で優しそうな少女は、仲間が欲しそうな目でこっちをみている。



次の日からしばらくの間、四人で毎日お子様ランチを食べ続けた。

「あっ、またスケルトンウサギ」

「またダブった」

「ほんとにレアなの?」

「レアだよ。私は一回も当たったことないもん」


ウサギを集めていたふわふわした茶髪の女の子が三崎 杏菜。

それに付き合わせられていた利発そうな黒髪の女の子が波川 美涼。 

融はよくこの四人で遊ぶようになるのだった。


 


念のため、融は友人たちの顔と名前を入力して検索する。

青山進馬(あおやましんま)三崎杏菜(みさきあんな)の二人は特に注意すべき情報は見当たらない。

どちらも普通の家庭で、両親の職業も普通だ。歴史的人物でも思い当たることは無い。


しかし、波川美涼は違った。

波川家も転法輪や月城と同じ代表会議という帝国の支配者、二十名家のうちの一つ。司法に影響力を持っている家だ。

ちなみに月城家は政治に、転法輪家は軍事にそれぞれ強い影響力を持っている。

波川美涼、彼女自身は歴史的重要人物ではないけれど、一応、頭の隅に覚えておこうと融は思った。



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