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考えが……、足りなかったかも

今回説明回になります。

苦手な方はそのまま飛ばしてもらっても多分問題ない?

「んぅ……」


 なんかぐっすり寝た気がする? そう思って目を覚ますと、私はいつの間にかリビングにあるバスケットの中で丸まっていた。


 ……あれ?


 部屋の中は薄暗い。辺りを見回すと秀作さんの姿は無く、主のいないソファとテーブル、それに薄型の大きなテレビがポツリと置いてあるだけ。テレビの上にかかっていたシンプルだけど見やすい時計は11時15分を指していた。


 えっと……。


 なんで自分がここにいるか分からない。寝ぼけた頭を振って寝る直前の記憶をたどる。


「あー、あの後力尽きちゃったんだ」


 早苗さんに初めての……、いやいや、あれはノーカンだから……。もみくちゃにされた後、精神的疲労から秀作さんの前で倒れたことを思い出してひとりごちる。


"きゅ〜、くるるるる"


 ゔ、お腹が空腹を訴えかけて来た……。

 この時間だと秀作さんは寝ているか寝る前に学園の資料をまとめているんだよね。もし既に寝ているようだったら起こすのも悪いし……。

 そんな事を考えながらもバスケットから下りると、私でも気づけるように床に書き置きが置いてあった。


『タルトへ。

 今日はお疲れ様でした。あの後、ずっと起きなかったので家に連れ帰ってバスケットに寝かせておきましたよ。

 疲労からの睡眠と思ったので夕飯時にも起こすのを控えておきました。もし、夜間に起きてお腹が減っているようだったらダイニングのテーブルにタルトの分のご飯を用意してあります。それを食べてくださいね。もちろん私に声をかけてもらっても構いませんよ。

 明日も疲れているかもしれないので朝は起こしません。ゆっくり休んで疲れを残さないようにね。勿論、朝昼のご飯はきちんと用意しておきますから安心してくださいね。

 今日は本当にお疲れ様でした。ゆっくり休んでください。

 秀作より』


 秀作さん……。


 秀作さんの気遣いに胸の内がじんわりと暖かくなる。

 音を立てないようにそっとダイニングへ移動すると、テーブルの上には私の分のご飯がふんわりとラップを乗せて置いてあった。

 私は前足で器用にラップをのけると、冷えてしまってはいたけどとても暖かいご飯を食べ始めた。


 ……美味しい。


 ゆっくりと味わいながら今日の反省点を考える。

 なんとかなるかな? でまず行動ありきだったけどやっぱりダメだったかもしれない。

 そもそも情報をしっかりと把握せずにいたのがまちがいだったんだよ。眠い頭でぼんやりと思い出した事を行動につなげた結果がこれじゃね……。


 と言うことで、改めて私の立ち位置からしっかりと思い出そう。秀作さんから色々聞いた分、ゲームと微妙な違いも見つかったし、幸いにもゲームしてから日にちは経ってないので細かく思い出せるはず。


 まず私の名前はタルト。

 世にも珍しいお話ができる猫で、ヒロインの恋のサポートと学園改革のお手伝いをすることになる。

 ヒロインが転入してくるのは2学期の9月からなんだよね。今は5月末だからあと3カ月後かな。

 秀作さんの遠縁の子で、交通事故で両親と家を失った彼女は親戚の間をたらい回しにされた挙句、秀作さんに拾われることになる。

 交通事故……、他人事じゃ無いから助けられるなら助けてあげたいんだけど、春休みの間の出来事って言うから私には何も出来ない。プロローグではふさぎ込んでいたけど、タルトが話せることを知るようになるイベントで笑顔を取り戻した。……うん、私に出来るのはこれぐらいだし頑張ろう。

 本当なら秀作さんが慰めてくれれば良いんだけど、残念な事に長期出張で肝心な時にいてくれないんだよなぁ。

 ……うん、暗い話はやめやめ。私まで暗くしてちゃヒロインが笑顔を取り戻してくれないもんね。

 で、本編に進むとタルトは基本的に家から出ることはない。でも、幾つかのイベントで学園の方にも顔を出していた事から、今の私のようにゲームの中でも学園内を自由に出歩く許可は出ていたんだと思う。

 そのあとの役割は……っと、ヒロインの恋のアドバイス? と学園調査のお手伝いをするんだよね。後はセーブとロード?

 恋のアドバイスは猫らしくヒロインの愚痴に斜め上からツッコミを入れるような感じだったし、学園調査はヒロインについて歩くだけ。……うーん、よく考えると最初以外はタルト役に立ってないかも? ……少しぐらいゲームと違って役に立っても良いよね。


 よしっ、次は学園について。

 桜ノ宮学園って言っていたけど、正確には"私立桜ノ宮高等学校"といって、桜ノ宮学園という小中高大までの一貫マンモス校の高等部。なんで理事長の秀作さんが高校に理事長室を用意してるのか? とか疑問はあるけど、ゲームの設定に合わせて……なのかなぁ?

 まぁ、その辺は私が気にしても始まらない。

 で、ヒロインの役割である学園改革なんだけど、これはベタな外部生と内部生の確執の解消。

 あ、外部生っていうのは高校を外から受験して入ってきた子達で正式には外部入学生、内部生って言うのは桜ノ宮学園の初等部から在籍して居る子達の総称で正式には内部進学生。

 初等部の入学条件は家柄と膨大な入学金で決まるから、内部生は生まれながらのエリートしかなることが出来ない。そのために生徒数は厳選していて1クラス10人の4クラスのみ。授業は普通の勉強は勿論、英語、ドイツ語、フランス語、花道、茶道、日舞に各種武道などありとあらゆるお稽古を好きに受けることが出来る。その生活を初等部6年、中等部3年と繰り返すことによって、人の上に立つことが許されるエリートを育むのが狙いらしい。

 だもんで生徒のやる気に合わせて出来る人と出来ない人の差が如実に現れる。それを初等部、中等部合わせて9年間、中等部での入学や編入は一切認めずだから相当な開きになるよね。

 その差が見過ごせなくなる時期ーー高等部になるとその間に入る人材として外部生を入学させる。高等部では1クラス40人の1学年6クラスだったかな。学年40番までのAクラスこと特進クラスと学力を平均的に配置したB〜Fクラス、Aクラスのみ内部生の比率が高いのはご愛嬌かな。


 外部生は人材の宝庫となるべく、各学校からの推薦でしか受験を受けることは出来ない。まぁ、言ってみればエリートとなる内部生の片腕に相応しい人物を学園で用意するといっても過言じゃ無いのかな? その認識があるから内部生は外部生をどうしても下に見がちだし、外部生は卑屈になりがち。中には玉の輿狙いで入ってきた人も居てあからさまな行動をする。学園側はそれも社会に出る上での勉強として放置してるみたいだけど……。

 そう考えると外部生と内部生の確執なんて、なるべくしてなったんじゃないかな。

 ゲームでは主要人物のせいで悪化したみたいに書かれていたけど、結構根深そうだなぁ。それをタルトのいい加減なアドバイスで解決出来るんだから、ヒロインってかなりのやり手なのかな?

 どこにでもいる普通の女の子設定っていうのは絶対に嘘でしょ……。


 後はそうだね、サロンについても思ったより厳しい条件だったかな。

 まず内部生であること。次に学年10位内に入っていること。この二つをクリアした人だけが学園から桜をかたどったバッジを渡されてサロンを使用することが出来るみたい。

 ただ、この学園10位が曲者なんだよね。外部生は学年10位内に入ると学費免除、学食無料の恩恵があるから内部生だけじゃなく、外部生も学年10位内を目指す。ちなみに外部生は桜の葉っぱバージョンのバッチだったりする。

 その結果、10位内は内部生と外部生が半々となってサロンは学校全体でも15人くらいしか使う事が出来ない。全校生徒720人中の15人……、そう考えるとサロン組の悪役令嬢麗華さんに学年主席の攻略対象、一哉さんってスペック高いなぁ。

 もちろん他の攻略対象もスペックは高いよ。生徒会長の魁斗さんに副会長の雄大さんも外部生ながら2年のトップだしね。もう一人の攻略対象、……省吾さんはやれば出来る子なんだけどサボりがちだからなぁ。


 そうそう、生徒会は基本的に外部生のみがつくことになるんだよね。社会に出てすぐに使える人材を育てるべく、この学校の行事は全て生徒間で取り仕切って先生達はあくまでフォローに回る。内部生は初等部、中等部とそうやって育ってきたから問題無く進行できるけど、外部生はそんな経験が無いから色々と戸惑うんだよ。

 勝手知ったる内部生の一部(サロン生)が外部生をフォローし、外部生主体で学園行事を進める筈なんだけど、ここで内部生が増長して上から目線で指図することになるから、生徒会が反発して亀裂が深まる。……生粋のエリート集団なんだからもっと大人になれば良いのに、とかゲームしながら思ったものだ。

 魁斗ルートと雄大ルートはサロンと生徒会の和解が命題なんだよね。


 それぞれ麗華さん、一哉さんが1-A年の内部生、魁斗さん、雄大さんは2.A年の外部生。省吾さんは1年でヒロインと同じクラス、1-Cの内部生。


 学生同士、競争して高め合うのを期待しての待遇なんだろうけど、私的には確執の種になってるんじゃないかと思うな。この前秀作さんに言ったら「そんな考えも……、気づけなかったな。タルトありがとう」と頭を撫でてもらった。

 秀作さんに撫でてもらうの気持ち良いんだよねぇ。

 

 ともかく、確執の解消についてはヒロインの手腕次第かな? ゲームの中みたいに攻略対象と協力してサクッと解消。とかになると良いんだけど、現実になるとそう簡単に行くものなのかな……? この辺は猫の私に出来ることなんてないし、ヒロインの行動次第だから今私が考え込んでも仕方ないか。


 あとはそうだなぁ……、うん、早苗さんはゲームと印象が違った。

 ゲームの中では頼れるお姉さんでどんな時でもキリッとした知的女性だった。下手すると担任より出番多かったんじゃないかな? 初めての編入生って事でヒロインの良き相談相手になってくれて、ヒロインも実のお姉さんみたいに甘えてたもんね。

 その中でも1番思い出に残ってるのは麗華さんとの対決シーンかな?

 イベントの一つ、ヒロインにカンニング疑惑を投げかけた麗華さんへ、早苗さんがヒロインの無実を信じるシーンなんだけど……、

 怒った麗華さんが「お父様に頼んで貴女方をクビにすることも出来るのよ」と脅したことで担任の先生さえ何も言えなかった中、早苗さんだけが来然として「お好きなようにどうぞ。ですが、貴女にどれだけの力があろうとも私は私の信じたい人を信じます」と言い返したシーンなんて感動ものだった。

 ……少なくとも子猫の為に仕事放り投げたり、赤ちゃん言葉を使うような人とは全くの別人のように思えた。もしかして本当に別人? ……な訳はないか。

 そう言えばタルトと早苗さんの絡みって見なかったよね。実は裏であんなやり取りが結構行われていたのかな? そう考えるとゲームで表現されている事なんてほんの一部だけなのかもしれない。

 間違ってもセカンド……、いやっ、あれはノーカンあれはノーカン……、うん、不意打ちだけはうけないように気をつけよう……。うん、あれはノーカン、あれはノーカンなんだ……。

 うう……、変なこと思い出しちゃった。


 あとは……なんだろう? なにか学園を見て回った時にすごい違和感があった気がするんだけど……、何かおかしいところあったかな? うぅん……、変なこと思い出してなんか気がそれちゃった。


 ……うん、お腹一杯になったら眠くなってきたし考えるのはやめにしよう。


 麗華さんや攻略対象の四人に関しては早苗さんの例もあるし、ゲームの中で見せた一面だけが全てって思わないようにしないとね。

 後は実際にあってから考えよう。眠い頭で考えてもこの前みたいにうまくいかないかもだしねぇ。


 私はうつらうつらとしながらベットに戻ると、くるんと丸まり深い眠りへと落ちて行った。

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