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平穏って……、最高だよね?

「ねぇ、秀作さん。外に出ても良いかな?」


 朝ごはんを目一杯堪能した後、思い切って尋ねてみる事にした。


「ふむ、外か。

 そうだね、聖羅さんの話しだとタルトは生後3ヶ月過ぎだから……」


 秀作さんは手帳を開き、何かを見ながら難しい顔をする。


「タルトは一般常識がある分、大人と同じ対応をしてしまうけれど体はまだ子猫なんだよ? お腹がまだ出来上がって居ないし、頭の重心が重いから歩くのも大変。それに子猫は1日18時間近く睡眠を取るみたいだから……、そうだね、制限を付けさせて貰おうか。

 物を貰っても食べてはいけないし、話せること、中身が女子高生である事は誰にも内緒だ。その2点を約束出来るなら、一日一時間限定だけど構わないよ」

「ほんとっ!?」

「あぁ、でも自分の体はまだ子猫と言うことはしっかり認識しておくこと。

 それと教員や生徒にも周知しないといけないから準備に1週間はかかるかな? それまでは悪いけど外出禁止ね」


 秀作さんが真剣な眼差しで言って来る。

 素直に私のことを思って言ってくれてるんだから約束は守りたいと思う。でも私ってば子猫の育て方なんて知らないからなぁ……、どこまで大丈夫でどこまでが駄目っていうのは実際に体験してみないとわからないよね?


「タルト、何か変なことを考えている気がしたんだけど?」


 秀作さんが顔を覗き込んできた。


「大丈夫、大丈夫。ちゃんと秀作さんの言った事守るから安心してっ!!」

「本当に?」


 信用できないのだろうか、半眼になってる。


「うん、約束する」


 必死で約束すると、秀作さんはにっと笑って私の頭を撫でる。


「うん、信用した。無理はしないようにね」

「はいっ!!」


 そのまま秀作さんは暫く頭を撫でてくれる。


「うぁ~、気持ちいい」


 思わず声が漏れてしまうと秀作さんと目が合った。


「頭を撫でられてばれない様にね?」

「あう……」


 秀作さんは悪戯っぽくいうと、テーブルの上を片付け始めた。そして洗い物をした後、スーツの上着を羽織るとカバンを手にとって玄関に向かう。


「じゃ、今日の仕事に行って来るから元気で居るんだよ?」


 玄関を開けながら振り向いて私に言ってきたので、私は今度こそ心配をかけないように元気に頷く。


「うんっ!! いってらっしゃい」



 とは言ったものの……ぶっちゃけ暇だ。

 お昼にはご飯を作りに戻ってきてくれるって話だから、それまで待てば良い話なんだけど……、それまですることが無い。テレビは見てて良いって言われたけど、テレビ見てぐうたらって言うのもなぁ……。

 人の体なら家事の一通りぐらいしておく事ができるんだけど。


 例えばさっきも「行ってらっしゃい秀作さん」って言って朝のキスをしてさ、その後朝ごはんの後片付けに入るの。

 その後は家の中を片付けたり、掃除機がけしたりしてお昼にはちょっと手の込んだ料理を用意しておく。

 もちろん秀作さんの好きな料理を研究して思いっきり美味しく作ってあげるんだぁ~。で、お昼のチャイムに合わせて秀作さんが「ただいまっ、美味しいご飯を食べに来たよ」って戻って来てくれるの。

 もちろんお互いにあ~んって食べさせあって「今日はこの筑前煮が美味しくできたの、食べて」とか、「この漬物美味しいよ? 食べさせてあげる」とか言い合えれば最高だよねぇ……うふふ。


 ……って、私ってば一体何を考えてた? いけないいけない。

 うん、きっと余りにも暇だから変なことを考えちゃうんだよ。子猫の体には何がいいか判らないけど、多分良く食べて良く動いて良く寝れば体にはいいよね? きっと体を持て余してるから変なことを考えるんだ、まずは運動しよう。

 秀作さんが用意してくれていたキャットウォークで遊びまわればきっとっ!!



 はぁはぁはぁはぁはぁ……

「ふふふっ、私はやったっ!! このキャットタワーを制圧したぞぉ~!!」

 って何やってるんだろ私? ……虚しい。

 でも、……ふわぁぁぁ。流石に運動すると眠くなるな。

 うん、秀作さんが戻ってくるまでお昼寝しよっ。



----



 ふにふにっ


 ん~?


 ふにふにっ


 なぁにぃ~?


「タルト~、お昼だよ?」

「お昼っ!?」


 お昼のキーワードにガバッと勢い良く顔を上げると、私の肉球をもみもみしている秀作さんと目が合った。


「やぁ、おはよう」


 爽やかに挨拶してくれる秀作さんだけど、その両手は私の肉球に夢中だ。


「秀作さん、掴まれてると立てないんだけど?」

「あぁ、ごめんごめん」


 言葉では謝ってくれてるけど、肉球から手を離してくれない。


「秀作さん?」


 改めて問いかけると秀作さんはまた私の顔を見た。


「ごめんごめん、ちょっと教員に伝達してきたんだけどさ、女性の教員からこの肉球は最高って言われてね?

 つい試してみたら抜けられなくなっちゃって……」


 その言葉に思わず納得してしまう。


「そうだよね。

 私も肉球LOVEだったなぁ~。休日とか猫を見つけると一時間ぐらい肉球ぷにぷにさせてもらうこともあって」

「あぁ、確かにそのぐらいぷにぷにしていたら最高かもしれないね」

「あ~、私も肉球ぷにぷにしたいなぁ~」

「タルトは自分で持っているじゃないか?」

「自分で自分の肉球はぷにぷにできないじゃない」

「それもそうか」

「そうなんだよね。だからこそぷにぷにしたい~」

「あぁ、その気持ち判るような気がしてきたよ。あ~、ぷにぷに最高だねぇ」


 ふっ、ここにもぷにぷに信者が一人増えたか。

 等と考えつつ時計を見てみると12時50分。……あれ?


「ねぇ、秀作さん」

「なんだい?」

「お昼休みって何時まで?」

「お昼休みは1時までだよ」

「もう時計12時50分」


 修二さんは驚いたように腕時計を見た後、2秒ほど固まった。


「いけないっ!! 食べる時間が無くなってしまった。

 タルトごめん、急いで食べるからタルトは後でゆっくり食べるようにね」

「はぁい」


 そう言うと修二さんは急いでテーブルに座り、急いでるけど決して下品に見えない食べ方でご飯を食べると布巾で口元を拭いてすぐに出て行った。

 修二さんてあんな一面もあるんだなぁ~。等とほっこりとしつつ、睡魔には勝てずにまた睡眠に戻っていった。


 あ、勿論2時頃には起きてお昼はいただきましたよ。冷めてしまったけど流石は秀作さんのお手製、すっごく美味しかった。

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