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ここって……、あれだよね?

 私は秀作さんに連れられ、おっきい車に乗って色々質問責めになりました。

 あ、もちろん因縁のある赤いお馬さんのついている車では無いですよ? ちょっと小さめで丸くて可愛い車。


「質問良いかな?」

「あ、はい。わかる範囲で良ければ」

「ありがとう。

 では遠慮なく質問させてもらうけど、何故話すことができるんだい?」


 ……なんでだろう?


「う~ん、自分でも分からない……かな?」

「聖羅さんの家でずっと話さなかったのは何か理由があってのことかな?」


 これは私の意識が蘇ったからだよね?


「えっと、突然話すことができるようになったから……かな?」

「兄弟も話せるのか分かる?」


 多分私だけだよね? 前世の記憶があるからだし。


「分からないけど、多分無理じゃないかな?」

「受け答えがに淀みが無いけど、言葉の意味は大体分かるのかな?」


 これは簡単だ。


「多分一般会話は大丈夫じゃ無いかな? でも難しい言い回しは分からないかもしれない」

「ふむ、生後3ヶ月ちょっとと聞いていたけれど、どこで知識を得たんだい?」


 あ、しまった。確かにそういえばそうだよ、ぺらぺら喋ったけどまずかったかなぁ……? でもボロを出すよりは先に話した方が良いよね?


「えっと……、信じて貰えるか分からないけど、ついこの間まで女子高生だったから。って言ったら信じてくれる?」

「えっ!?」


 驚いたのか、勢い良く私の方に振り向いた。

 って、運転中のよそ見は危ないっ!!


「秀作さん、前っ!!」

「あっ!?……」


 秀作さんはすぐに視線を前方に戻し、周囲を確認してほっとため息をつく。

 

「急に変なことを言うから驚いたじゃないか」

「変な事って、秀作さんの質問に答えただけだもん」

「あぁ、そうだな。すまない」


 バツが悪いのか、人差し指で頬をぽりぽりと書くと独り言のようにつぶやいた。


「つまり、輪廻転生をしたけど記憶が残っていると言うことかな……」


 輪廻転生か、今の状態を信じるとしたらそうなんだよね。でも……


「死んだとか思いたく無いなぁ。正直、現状が夢であって欲しいと思ってるぐらいだし……」


 ついつい考えが口から漏れると若干不機嫌な声が返って来た。


「となると私は、君の夢の住人と言うわけかな?」


 うわっ……もしかしなくても地雷踏んだ?


「あっ!? ううん、ごめんなさい。そう言う意味で言ったんじゃないの。

 ただちょっと前までの記憶と今の現状があまりにも噛み合ってなくって……」


 必死で言い訳をすると、秀作さんも少しほおを緩め遠くを見ながら言った。


「まぁ、自分が死んで、しかも猫に転生したなんてにわかには信じがたいか。夢でありたいと願うのもおかしくないね。ちょっと私も大人気なかったよ、ごめんね。

 ……そうだね、実際にこうして話して居るんだから、100%とまではいかないけど信じるしかないと思う」

「うん、ありがとう。私もさっきみたいな変な事は言わないようにします」


 少し空気が重くなってしまった。


 ……沈黙が辛い。これだったらさっきまでの質問責めの方が良かったかも……、などど思っていたらキラーパスが飛んで来た。


「原因を解明する為、機関にまわして研究しても?」

「それは絶っ対にいや!!」


 全力で否定させてもらう。機関とかなに考えてるんですかっ!? 下手したら解剖されるかもしれないじゃないっ!!


「ははっ、そうだよね。聖羅さんにも怒られるからしないよ、安心してね。

 で、1+1は?」


 むきゃーっ、何!? 今の仕返しだった訳? めっちゃ笑顔になってる。と言うか、女子高生に向かって1+1って舐めてるの? 

 秀作さんの顔を見ると穏やかな笑顔に戻ってる。


 あぁ、あれは秀作さんなりのフォローだったのかな? チョイスが最低だけど。ま、ここは私が大人になって答えてあげるか。


「2」

「263×143は?」


 っていきなり3桁っ!? えっと……まず3×143が429で……60×143が8580でさっきのと合わせると……あれ? ……だぁぁっ、暗算はムリッ!!


「……紙と書く物貸してください」

「ふふっ、暗算できないなら良いよ、大体のレベル確認だったから。ちなみに答えは37609ね。」

「……そうですか」

「で、話は戻すんだけれど私はタルトにどう接すれば良いかな? 猫として接すれば良い? 人として接すれば良い?」


 あぁ、この話題のための伏線か。

 そうだな、どう答えれば良いんだろう……。


「そうだね、その辺は私にもよくわからない。でも、わざわざ部屋を用意してもらったりとか、必要以上に意識されるとこっちも気にしちゃうかな?

 一緒に暮らしてから考えたいって言う答えじゃ駄目?」

「そう言ってくれるとこっちも助かるよ。賢い猫扱いするけど気になったところはいつでも言ってね」


 丁度赤信号で止まっていたからだろう。秀作さんはこっちを向いてにっこり笑うと軽く頭を一撫でしてくれた。

 

「……って流されそうになったけど、基本は猫扱いなのっ!?」

「ははっ、ばれたか」


 秀作さんは視線を前方に戻すとペロッと舌を出す。


 意外とお茶目な人なんだなぁ……。


 その後も他愛ない話や生活での諸注意を……1時間はしたかな? いいかげん眠くなってきた頃に秀作さんはフロントガラスを指した。


「見てごらん。あれが今日から君の家だよ」


 秀作さんが指差した先にあったのは……うん、あれを家と言うのはないと思う。

 どこをどう見ても絶対に普通の1軒家ではない。100万円かけても良いよ? 今も昔も持ってないけど。

 私と同い年ぐらいの男女がグラウンドで運動してるし、送迎の車に乗って優雅に帰る子もいる。

 建物は4階建てで無駄に豪華な装飾が随所にちりばめられていたりする。門前には見たこともない人の銅像が掲げられていたりもする。綺麗に指差ししてるからクラークさんかと思ったよ。

 そして極めつけは門前に張ってあった表札だ。

 "私立桜ノ宮学園"

 思いっきり見覚えのある名前だ。


「あれって……」


 絶句した私を見て、秀作さんは凄くいい笑顔。何かの仕返しか? 見た目30前ぐらいなのに意外と子供のような所が多い。


「そう、高校だね」


 家と言いながら高校に案内された事でびっくりしたと思ってるんだろう。だけど私はまったく別の理由で驚いていた。

 私立桜ノ宮学園、それは私が攻略したゲーム"白銀のタルト"の舞台だったからだ。


 なんで気付かなかったんだ私は……


 赤と金のオッドアイ、白銀の毛並、そして人語を理解する猫。

 全部知っていたはずなのに、今の今まで全く気付いてなかった。


 ゲームの内容を簡単に説明すると、

 ひょんなことから家も、住む所も、家族さえも失ったヒロインが、偶然の縁からこの学園の理事長に引き取られた所から物語は始まる。

 学園の敷地内に建てられた理事長の自宅に居候することになった彼女は、同じ家の住人であり、世にも珍しい喋る猫の(タルト)と出会う。

 ヒロインは、一部の富裕層しか通う事の出来ないこの学園に転校することになるんだけど、頼みの綱である学園長は急遽出張が入ってしまい、タルトと二人暮らしになる。

 今までごく普通の家庭で育ち、右も左も分からない上に学園長の補佐がない彼女は、学園のおかしな風習に振り回される羽目になる。

 そんな学園に翻弄される中、ヒロインは四人の魅力的な男性と出会う。

 彼女はタルト(わたし)のアドバイスを受けながら学園改革を行い、ライバルの妨害にも屈しないで四人の男性の内、意中の一人を射止めることになる。って内容。


 ゲームの中では学園長としか表記されて居なかったけど秀作さんが学園長だったんだ。こんなにかっこいい人だったなんて思わなかったなぁ。


「もしかしてこの敷地の中に家が建ってる?」


 私の確認を受け、秀作さんは目をパチクリとさせる。


「よく分かったね? 僕はこの学園の学園長をして居るんだよ。と言っても去年いきなり任される事になったから周りの人たちにサポートしてもらっているんだけどね。

 それに昼間は学生が多いけど、夜は一人になる。それが寂しくなってしまってね。そんな折、聖羅さんから君を紹介されたんだ」


 設定通りなら私が引き取られて3ヶ月後にヒロインが来る。私がまだ子猫と言う事を考えると成長した頃にヒロインが来る事になるのかな?


「さ、先ずは家に向かおう。それと……念のため君が話をできるのは私以外には黙っておいた方がいい。

 変なことになる可能性も高いからね」


 秀作さんはゆっくりと車を旋回させると、学園の奥に入ってゆく。

 少し進むと目の前にそれなりの大きさの家が見えて来た。

 それなりと言ったけど、一家族で住むにはであって一人で住むには大きすぎだろう。

 確かにこの大きさで一人暮らしは人恋しくもなるかな。


「ここが私の家だ。さ、入ろう」


 車を車庫に止めると、秀作さんは私を抱き上げて家の中に入る。

 取り敢えず、整理しないといけないことが一杯だけど……。

 まぁ、なるようにしかならないでしょ?

早速のお気に入り登録や評価ありがとうございました。

更新速度は早くないですが、これからもよろしくお願いします。


PS:他にも色々投稿しました。良かったら合わせて読んでください。

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