↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
54/75

エデン大パニック! 王様、呪いの代わりに「カレーの激辛臭」を放つ

*平和な日々編『現在』の話*

かつて『翡翠の揺籠(エデン)』を脅かした『純白の枷』の呪いは消え去った。

しかし今、エデン宮廷の回廊には、あの暗黒期すら生温く思えるほどの、全く別の不気味で狂暴な『黄色いマナの波動』が立ち込めていた。


スパイシー、そして強烈にホット。鼻腔を物理的にハッキングしてくるその異世界の香りの源流は、玉座の間の隣室から真っ直ぐに放たれていた。


「……はぁ、くっ、ぅ……。美味い、美味すぎるぞ、レン……っ!」


長テーブル最奥に鎮座する王アルヴィスは、高貴な宝冠を机に放り出し、額にびっしょりと汗をかきながら、木皿に盛られた赤褐色のスープをスプーンで猛烈に貪り食っていた。


レンが親父(神)のデータベースから作成(クリエイト)した異世界料理――『激辛スープカレー(スパイス限界突破ver)』であった。


「だろ? でもさ、アルヴ。お前それ、今週でもう十食目だぞ? スパイスの過剰摂取はマナのバランスを――」


「黙りなさい! この刺激、そして体内の魔力が沸騰するような極上の焦燥感(辛さ)……これぞ教団の精神攻撃を打ち破るための、新たなる融和の黎明だ……っ!」


「ただの激辛カレーだよ!!」


完全にスパイスに脳のシステムを乗っ取られた王様。

だが、アルヴィスが最後の一滴までスープを狂暴に飲み干し、ふはぁ、と満足げに熱い息を吐き出した、その瞬間。

彼の白銀の甲冑の右半分から立ち上るはずの『薄暮のマナ』が、異世界のスパイスの精霊と異常な化学反応(ハッキング)を起こし、物理的に鮮やかな『黄金色のスパイスの霧』となって全身からブワッと噴き出した。


「お、おいアルヴ!? お前、体からものすごいカレーの匂いが放出されてるぞ! 完全にシステムがカレーの塊に書き換わったわ!」


「なっ……何のことですか、私はただ、王としての代謝を上げて――」


アルヴィスが言いかけるより早く、玉座の間に続く大扉が、バコォォォン!! と地響きを立てて物理的に叩き割られた。


「アルヴィス様ぁぁぁーーーっ!!」目を血走らせ、口元から大量のヨダレを滝のように垂らした国中の小精霊や騎士、そしてあの生真面目な大長老までもが、獣のような猛烈なダッシュで突撃してきたのだ。


彼らの本能は、アルヴィスの身体から放たれる「世界一美味そうなカレーの激辛臭」に完全にハッキングされ、狂暴な食欲の化物と化していた。


「なっ、何ですかお前たち! 狂ったのですか、近寄るな! 無礼者!」


「アルヴィス様ぁぁ! その美味しそうな香りは何事ですか! 我らに、我らにお恵みをぉぉ!」


「ひっ……! レン、助けなさい! 早く私のマナの波長を偽装しろ!」


アルヴィスは涙目でテーブルを飛び越え、レンの背後へと滑り込んだ。

レンは慌てて刀を半分抜き、テラスの周囲へ虫除けならぬ『カレー臭隔離結界』を展開する。


バチバチバチッ! と、透明な結界の表面に、大長老や騎士たちが未練がましそうに顔を押し付け、ヨダレを垂らしながら結界をガリガリと引っ掻き始めた。


「あはははは!!! 最高! お前、前回のハチミツの次は『歩くカレーのルー』かよ!! 廊下を歩くだけでテロじゃん!」


レンは床に転がるほど大爆笑し、腹筋の限界を迎えた。


「笑うな無礼者……っ! 奴らの目が、教団の暗殺兵よりも狂暴で怖いと言っているのです! 」


裏の顔の本音で怒鳴るアルヴィス。


だが、結界の外の精霊たちは、アルヴィスの美しい姿から漂う激辛スパイシーな香りにさらに熱狂し、「カレー! カレー!」と謎のシュプレヒコールを上げ続けている。


「よし、今夜の特訓は、国中のヨダレを垂らした騎士たちから槍一本で逃げ回る『スパイス消費鬼ごっこ』に決定な、カレーの王様?」


「嫌だと言っているでしょう!! 早くそれをクリエイトしたナンで誘惑して、別の広場へ誘導しなさい!!」


平和になった翡翠の揺籠の午後。

世界を救った細マッチョの精霊騎士は、呪いの代わりに「カレーの激辛臭」を放ちながら、それを特等席で大爆笑しながら煽り続ける神の仔によって、今日も最高に格好悪く、最高に美味しそうな大騒ぎを繰り広げるのだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。