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弱い勇者

はじめまして。

八百萬です。

広げた風呂敷を畳むことを目標に頑張ります。

よろしくお願いします。

王都郊外……冒険者ギルド。


「依頼の達成数は多いんですけど……。」


 新任の受付嬢は一枚の書類を見ながら、眉をひそめた。


アレン・クロス


Dランク冒険者


依頼達成数 76

S…0

A…0

B…0

C…0

D…76


「どうしてDランクばかり……。冒険者ってもっとこう……野心のある人ばかりじゃ……。」


 隣の職員が覗き込む。


「あぁアレンか。こいつは余りもんばかり選んで小銭稼ぎしてんだよ。いつもそうだ。」


「余りもの?」


「Dランクってのは簡単な依頼だが、その分報酬も安い。お前の言うように冒険者ってのは野心家ばかりだからな。みんなこぞって高ランクの依頼を狙うからDランクの依頼ってのは見過ごされる。でも気付いた時にはあいつが終わらせてくる。」


 受付嬢はその説明を聞いて顔つきがさらに険しくなった。


「その……どうしてそんなことを?」


「さぁな。高ランクの依頼はその分危険が伴う。……つまりそういう事だよ。まぁ、そんなに気になるなら本人に聞いてみな。どうせそろそろ……」


 その時ギルドの扉が勢いよく音を立てて開いた。


「すみませんー!アレン・クロスです!薬草採取の依頼、完了しました!」


 泥だらけでところどころ服に穴が空いている。

 ボロボロだ。


「あの……薬草採取……ですよね?」


 受付嬢はあまりにも壮絶な見た目をした少年を見て恐る恐る聞いた。


「あ〜。実は……。」


「ソードウルフ!?ソードウルフって言ったら……その討伐依頼はCランク。それもパーティ推奨ですよ!?」


「その……この薬草、生えている地域によって効果に差があるんです。この辺りで一番質がいいのを取りに行こうとして、それでちょっと潜り過ぎて……。」


 別の職員が割り込んでアレンに問いかけた。


「ソードウルフってのは普通群れで行動してる。ソロで生還なんてDランクじゃ不可能だ。最低Cランク。そのうえでパーティ推奨ってのもそれが理由だ。どうやって帰ってきた。」


「どうって……。なんとか……全部じゃないですけど、何体かは倒して追い払いました。」


「何体か……?何体だ。」


 アレンは目を閉じて必死に思い出すような素振りをする。


「必死だったので……よくは覚えてないですけど五体くらい……ですかね?」


 身を乗り出していた職員は力が抜けたように椅子に座り込んだ。

 そして一呼吸置いて息を吸い込んだ。


「お前は馬鹿野郎か!そんな実力があってなんでDランクの依頼ばかり受けてる!冒険者だろう!」


 いきなり怒鳴られたアレンは目を瞑って身を引いた。


「でも……いつも余ってますし……。きっとこの依頼をした人は困ってます。」


 再び力が抜ける職員。

 大きく息を吐いて座り込む。


「お前なぁ……。いやそうなんだが……うーん。」


 二人のやり取りを見て呆気にとられる受付嬢。

 

「……ひとまず、今回の依頼達成の報酬をお渡しします。ありがとうございました。」


 受付嬢はアレンの顔をじっと見つめる。


「あの……なにか……?」


 固い笑みを浮かべながらそういうアレン。


「ランクアップの試験は受けないんですか?ソードウルフの討伐が出来るなら少なくともCランク上位……Bランクでも可能性がある実力だと思うんですけど……。」


 するとアレンは少し困った顔をして答えた。


「受けるつもりはないです。」


「え……どうして?」


「どうして……別に今のままでも生活には困ってないですし、やりたかったこともできてますから。」


 受付嬢は思いもよらない返答に一瞬すくんだ。

 思っていた冒険者像とは全く異なっている事に、興味すら湧いた。


「でも、ランクアップすればもっと報酬の大きな依頼なんかも受けられるようになりますよ。」


「Cランク以上の依頼は僕がやらなくても誰かがやってくれますよね?だから僕ができるようになる必要なんて無いですよ。」


「冒険者はもっとこう……血の気があるものと思ってました……。」


 受付嬢の言葉にアレンは少し笑う。


「僕は困ってる人を助けたい。冒険者になれば、ギルドで依頼を受け取れる。なので……」


 そう言いながらアレンは貼られている依頼書に指を指した。


「あの依頼を受けます。」


 受付嬢がその指のさす先を見るとそこにはやはりDランクの依頼書が。

 

「迷子捜索……ですか?」


「はい。昨日もありましたよね。丸一日経っても見つかってないなんて心配です。それに、きっとこの依頼を出した人は今も心細いでしょうし。」


 そうして、新たな依頼を引き受けて帰っていくアレン。

 その背中をぼーっと見つめる受付嬢。


「あはは……変な子でしたね。」


「まぁ言わんとしてることは分からんではないが……なぁ。しっかし……ソードウルフか……。」


 職員が考え込む仕草をしながらブツブツと呟く。


「そうですよね!せっかくそんなに実力があるのに……」


「いやぁそうじゃなくてなぁ。」


「……?」


「最近ぱたりと途絶えたからな。ソードウルフの討伐依頼が。」


「え……それって……」


「さすがになっ!いくらなんでもたまたまだろうよ。」


 ギルドから離れたアレンは一人呟く。


「待ってて。すぐに見つけるから。」

第一話ご覧頂きありがとうございました。

引き続きよろしくお願いします。

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