4.一対七
一對七
深い息を吸い込み、私の視線が素早く周囲を掃いた――
合計7人の敵、二人が片手剣、二人が両手剣、一人が長槍、もう二人が盾と剣を持っていた。
1対7、絶対的な不利だ。
だが、勝機がないわけではない。
私は心の不安を抑え、最も落ち着いた口調で言った。
「みんな、ちょっと待ってくれ。知りたいんだ――誰が俺の首を狙ってる?」
「うるせえ!」
「余計なこと言うな!」
「時間を稼ごうとしてんのか?」
相手はほとんどためらわず返した。私は再び口を開いた。
「俺はまだ死にたくないよ。こうしよう、俺がお前らについて行くよ。それで手間省けるだろ?」
今度は、望んだ反応が返ってきた。
7人の間の空気が微妙に変わり、互いに視線を交わし、私の提案に驚いた様子だった。その中の一人、盾を持った長身の男が眉をひそめ、冷たく言った。
「じゃあ、武器を捨ててついてこい。」
「ふざけんな! 最初に決めた通りじゃねえぞ!」
別の両手剣の持ち主がすぐ反論し、不満と敵意が混じり、警告のニュアンスもあった。彼の視線が他の者に移り、何かを確認するようだった。
その瞬間、頭の中で糸がつながった――
この7人は、そもそも同じ仲間じゃない。
この発見が、絶望的な状況に一筋の光を差し込んだ。これがチャンスかもしれない。
私は唇の端を上げ、軽薄な笑みを浮かべ、わざと肩をすくめた。
「じゃあ、どっちについて行けばいいんだ?」
言葉が終わると同時に、計画を実行に移した。
「Speed up!Speed up!」
私は瞬時に二度の強化を起動し、体が雷に貫かれたように力が満ちた。強化の効果で体が限界を超え、視界の世界がぼやけ、時間が異様にゆっくり流れ、すべての細部が鮮明になった。
ためらうことなく、力を両足に集中し、雷のような影となって、後ろの三人に突進した。彼らは遠くに立って攻撃対象にならないと思っていたが、それが致命的なミスだった。
時間が静止したように、彼らの瞳が収縮し、口が開き、驚愕と混乱が顔に浮かんだ。武器を構える間もなく、私の剣が耳障りな風切り音を立てて最初の標的に襲いかかった。
行動の第一歩――私は剣鞘を力いっぱい投げつけた!
剣鞘は矢のように飛び、盾持ちの敵に向かった。彼の本能で盾を上げ、金屬の衝突音が空中に響いた。
彼の視線が剣鞘に奪われた瞬間、私は体をひねり、攻撃を別の二人に向けた。
盾持ちが防御に忙しい隙に、私は瞬時に近づき、右手の剣を風圧を伴って一人に振り、左手は腰の匕首を無音で抜き、もう一人の喉を狙った。
「プチッ!」匕首が肌を裂き、見知らぬ抵抗と滑らかな感触が柄から伝わった。喉を切られた相手は両手剣を抜けず、叫ぶ間もなく、血が噴水のように噴き出した。彼の体は一瞬硬直し、無音で倒れ、地面を赤く染めた。
同時に、右手の剣がもう一人の片手剣とぶつかり、鋭い金属音が響いた。
「カン!」
相手に辛うじて防がれたが、それは予想内だった。私は足を調整し、体勢を保ちつつ、左手匕首を雷のように出し、相手の大腿に二度刺した。
「プチ!プチ!」刃が筋肉を裂き、二つの深い傷が開き、血が噴出した。彼はうめき、足が崩れ、よろめき倒れ、剣を落とした。
二人を片付けた!
顔を上げ、最後の一人――盾を持った敵に視線を向けた。
彼は盾を固く握り、短剣を抜き、神経を張りつめ、目に警戒が満ちていた。盾を高く掲げ、体の大半を隠し、隙のない構えだった。
だが――隙は作れる。
私は唇の端を上げ、深く息を吸い、長剣を握り、一気に踏み込んで距離を詰めた。相手は防御に全神経を集中していたが、私の攻撃が迫っているとは知らなかった。
「三歩斬!」
一撃目、全力で剣を盾に叩きつけた! 金属の衝突音が雷のように響き、火花が散り、衝撃で彼は半歩後退し、足元が揺らいだ。
二撃目、相手の重心が崩れた隙に、私は素早く横に動き、防御の軌道を避け、側面から隙を探した。
三撃目、彼が体勢を整えようとした瞬間、剣の持ち方を変え、剣先を奇妙な角度で盾をすり抜け、鋭く体に突き刺した。
相手の目は一瞬呆然とし、瞳が激しく震えた。私の左手の匕首が即座に続き、決然と心臓に深く刺した。
彼の短剣と盾が力なく落ち、体は一瞬硬直し、血の広がる水たまりに倒れた。
残り四人!
四人は依然として急いで攻めかかることはなく、やや離れた位置に立ち、冷たい視線を向けながら揺るぎない構えを取っていた。
先頭に立つ一人は長剣を握り、口元に冷笑を浮かべて軽蔑するように言い放つ。
「まったく卑怯な手だな。」
「油断したあいつらが悪い。」
「こいつは二階強化を使える。全員でかかれ。」
深く息を吸い、状況が変わったことをはっきりと理解する。
先ほど不意を突いて三人を仕留められたのは限界だった。
だが今、目の前に立つ四人の熟練した相手に対しては、もはや正面から戦うしか選択肢は残されていない。
腰の傷口は先ほどの激しい動きで裂け、血がさらに広範囲に衣服へと滲み広がる。
灼けつくような痛みが神経を苛むが、傷の痛みに気を取られている余裕はなかった。
素早く匕首を腰に戻し、両手で長剣を強く握る。
半歩だけ後退し、下段の構えを取った。
重心を低く沈め、剣先を斜め前方へと向ける。
冷たい殺意が刃から漂い、迫り来る攻撃を迎え撃つ準備は整っていた。
対峙が続いたのは、一秒にも満たなかった――
「行け!」
長剣を持つ男の号令と同時に、三人の敵が三方向から一斉に飛びかかってきた。
その足取りは整然としてリズムを刻み、攻撃の連携は淀みなく続く。
まるで幾度となく訓練を重ねた猟犬のように、正確無比に俺を包囲の輪へと追い込んでいく。
彼らの眼光は刃のように鋭く、わずかな動きさえも俺の隙を狙うかのごとく、凄まじい圧迫感が襲いかかってきた。
正面の敵が身を翻した瞬間、閃光のような刃が空を裂き、全てを切り裂かんとする勢いで迫る。
それはただの片手剣ではなく、長身の武士刀だった。
刀身は微光を映し出し、振るわれた際には低く唸るような音を響かせる。
「抜刀斬――」
脳裏にその技の特徴が瞬時に閃く。
次の瞬間、相手は鬼火のように一気に距離を詰めてきた。
狙いは俺の上半身、軌跡はほとんど目に捉えられないほど速い。
――速い!
思考よりも先に、身体は本能的に動いていた。
「ガキィン!」
力強く剣を振りかざして受け止める。
交差点から火花が飛び散り、澄んだ衝突音が鼓膜を震わせる。
体勢を崩さずに踏みとどまった俺の視界の端に、右側から高速で突進してくる敵の姿が映った。
「双龍牙!」
右側から二人目の敵が襲いかかってくる。
槍の穂先が冷たい光を放ち、第一撃が疾風のごとく突き出された。
咄嗟に身をひねり後退する。穂先は胸元をかすめ、氷の残光を残して通り過ぎた。
すぐさま第二撃!
今度はさらに速く、しかも常軌を逸した角度で腹部を狙ってくる。
完全に避けることは不可能。俺は迷わず長剣を横に構え、強引に受け止めた。
「ギィン!」
金属が噛み合う音は雷鳴のごとく弾け、掌に痺れるような痛みが走る。
剣身を通して伝わる衝撃は凄まじく、足元が揺らぎ、体勢が崩れかけたその瞬間――
さらに凄烈な殺気が、天を覆うごとく押し寄せてきた。
「おおおっ!!! 轟天雷!」
三人目の敵はすでに目の前に迫っていた。
両手で大剣を高々と振りかぶり、山岳のごとき重量を持つ刃が横薙ぎに振り下ろされる。
空気を裂く轟音と共に、暴風のような圧力が襲いかかってきた。
――避けきれない!
奥歯を噛み締め、ほとんど躊躇もなく、俺は両手で剣を正面に構えて防御する。
「ガァン!!!」
衝撃は想像を遥かに超えていた。
火花が飛び散り、長剣を通して衝撃波が腕に走る。
痺れは瞬く間に全身を駆け巡り、両手は制御できぬほど震えた。
一撃の威力はあまりにも強大で、足元が砕けるように地面から離れ、身体は空へと弾き飛ばされる!
耳元を風が切り裂き、天地が激しく反転する。
次の瞬間――
「ドンッ!」
背中が地面に叩きつけられ、激痛が脊椎を駆け抜ける。
そのまま慣性に引きずられ、数メートルを滑り、土に長い傷跡を刻んだ。
「ぐっ……咳ッ……」
喉奥に鉄の味が込み上げる。
だが俺は歯を食いしばり、溢れそうな血を無理やり飲み下した。
全身の骨が砕け散ったかのような感覚に襲われながらも、痛みに構っている余裕はない。
腕の痺れと背の激痛を押し殺し、素早く地を蹴って身を翻す。
そして再び、剣を構え直した。
敵は一瞬の猶予すら与えてこなかった。
ようやく体勢を立て直した瞬間、三人は再び猛攻を仕掛けてくる。
刀光、剣影、槍尖――その全てが暴雨のごとく襲いかかってきた。
俺は全力を振り絞り、回避と防御を限界まで駆使するしかなかった。
「ギン! ギン! ギン!」
金属が打ち合う音が途切れることなく響き渡り、武器の間からは絶え間なく火花が飛び散る。
俺の姿はまるで風に舞う落葉のように翻弄され、暴風雨のごとき攻撃に晒されながら、必死に避け、必死に受け流す。
その一動作ごとに足場は際どく揺らぎ、全身を伝う冷や汗で衣はすでに濡れきっていた。
動きは徐々に硬直し、腕は鉛のように重くなっていく。
振るう剣は、一振りごとに鈍さを増していった。
――おかしい。
胸の奥で違和感が膨らむ。
この熾烈な連撃の中に、あるはずのものが欠けている。
リズム、圧力、攻防の流れ……ひとつ足りない。
一人、いない。
「しまった!」
危機感が稲妻のように脳裏を走る。
考えるより先に、視線は本能に突き動かされるまま足元へと走った。
その刹那、泥の間から微かな光が滲み出すのを捉える。
光は瞬く間に地面を伝い、不可思議な波動が地の底から噴き上がった。
脳裏に禍々しい予感が閃く――しかし思考を繋げるよりも早く、異様なエネルギーは地を這い広がっていく。
三人の敵は同時に動きを止めた。
そして寸分違わぬ動きで後方へと跳び退く。
その整然たる行動は、徹底的に訓練された者のそれ。
彼らの瞳に浮かぶ冷笑は、いっそう不気味さを帯びていた。
――まるで最初から仕掛けていた罠に、俺が自ら足を踏み入れるのを待っていたかのように。
「ゴォォォ――ッ!!!」
次の瞬間、大地が激しく震動した。
泥土が裂け裂けに引き裂かれ、鋭利な岩の棘が獣の爪のごとく地底から狂ったように突き出してくる。
数十本もの岩槍が土を破り、大気を切り裂く。
その一つ一つに殺意が宿り、目にも留まらぬ速さで迸った瞬間、俺の周囲は一面、死地へと化した。
考える暇はない。
全身の力を振り絞り、後方へ跳ね退く。
足裏に力を込めて蹴り出し、身体をひねって横へ翻った。
最前列の岩槍を紙一重で回避する。
だが――速い!
予想を遥かに凌駕する速度で、すぐ傍の岩槍が俺の体を掠めて突き抜ける。
身を滑らせて避けたはずが、左腿だけは完全に逃れられなかった。
「ぐっ……!」
裂けるような痛みが左腿を走り、背中に冷汗がどっと溢れ出す。
布は裂け、深い傷が肉に刻まれた。
鮮血が一気に噴き出し、泥に広がり赤く染め上げていく。
「……ッ!」
歯を食いしばり、息を呑む。
しかし立ち止まる暇などない。
焼けつく痛みを無理やり押し殺し、身を横へ転がして必死に攻撃範囲から脱しようとした。
周囲では岩槍が次々と突き出し、土塊と礫が狂ったように飛び散る。
鋭利な破片が頬を切り裂き、熱い痛みが肌を走った。
大腿の激痛をこらえ、顎が砕けるほど歯を噛み締める。
どうにか死地を転がり抜けたものの、勢いを殺しきれずに地面へ叩きつけられた。
重く、無様に。
背中に焼けつくような痛みが走り、腕を突っ張って地を支えるが、震えが止まらない。
腿の傷口からは鮮血が絶え間なく溢れ出し、布を瞬く間に染め上げる。
血は脛を伝い、泥に滴り落ち、暗紅の痕を広げていった。
空気は濃密な血臭に満たされ、甘ったるく吐き気を催すほどの匂いが漂う。
――深手ではない。だが……速度が落ちた。
腿の傷は急所を外れていた。
だが一度筋肉を動かすたびに、裂けるような痛みが全身を蝕む。
まるで繊維が一本一本、引き裂かれていくかのように。
震える痛みに耐え、歯を食いしばって立ち上がる。
だが、身体の動きは確かに鈍っていた。
「当たったか?」
「間違いない、もうあの速さは出せまい。」
冷笑と共に響く声は、勝利を手中に収めた者の傲慢さに満ちていた。
まるで、俺が倒れる姿をすでに幻視しているかのように。
剣を杖代わりに、どうにか立ち上がる。
左腿の傷は止まることなく血を流し、重心をかけるたびに痛みは倍増する。
だが、ここで一瞬でも弱さを見せれば終わりだ。
奴らは飢えた狼のように、血の匂いに群がり、俺を引き裂くだろう。
左腿の負傷で、速やかな回避は不可能になった。
今の俺はまるで屠殺を待つ仔羊。
遠くに立つ術者の剣盾手は、自ら仕掛けた「岩の竹林」を冷ややかに見下ろし、
その口元には自惚れに満ちた笑みが浮かんでいた。
奴は急いで攻め入ることもせず、悠然とその場に立ち続ける。
――わかっているのだ。俺がすでに、逃げ場のない絶境に囚われていることを。




