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第四の魔女:消えた痕跡  作者: Test No. 55
第3卷上 - 逃亡編
86/105

2.逃亡の始まり

挿絵(By みてみん)

 逃亡開始


 二人について細長い廊下を進むと、突き当たりにある古びたドアが軋む音を立てて開かれた。重い音はまるで抑えられた息のようで、不安な予感を帯びていた。

 ドアの先は、何年も放置されたような倉庫だった。壁の隅には錆びた木箱や埃まみれの器具が積まれ、梁の間に蜘蛛の巣が垂れ下がっていたが、床は異様にきれいで、明らかに整理された跡が残っていた。

 案の定、倉庫の中央には巨大な魔法陣が静かに広がっていた。直径は10メートル近く、複雑な符文が絡み合い、まるで生き物のように微かな光を放っていた。淡い光が壁に映り、空間全体を神秘的で不気味にしていた。

 私は眉をひそめた。この規模の魔法陣は、その威力は言うまでもなく、尋常なものではない。心に不安が湧いたが、口には出さなかった。

「お前らはあっちだ。」

 ウォサルトが沈黙を破り、手を上げて床の一角を指した。

 板がこじ開けられ、隠された地下道の入口が現れた。大牛は一言も発せず、身をかがめて降りていった。


 私はその場に立ち、魔法陣をもう一度見つめ、ゆっくり振り返った。その瞬間、ウォサルトの姿が目に入った――彼は魔法陣のそばに立ち、微光を背に、顔の輪郭が深く浮かび上がっていた。目に笑うような、笑わないような表情を浮かべ、わざと私にウィンクした。

「どうした? びびったか?」

 彼はからかう口調で言った。

「この仕掛け……何に使う気だ?」

 私は思わず尋ねた。

 ウォサルトは笑って答えず、口元に指を当てて「シーッ」と合図した。その目の光に、背筋がぞっとした。

 私は喉を締め付けられ、絞り出すように言った。「……ありがとう。」

「礼なんかいいって。」彼は軽く笑い、腹立たしいほど余裕な口調で、

「俺がまだ機嫌いいうちに、さっさと降りろ。」

 何か聞こうとした瞬間、彼の声が急に冷たくなり、耳に寒風が吹き込むようだった。

「時間を無駄にするな。行け!」

 大牛が地下道から振り返り、「早く!」と急かした。

 私は歯を食いしばり、急いで従ったが、心の中で悪態をついた――

 くそ、こいつ、かっこよすぎるだろ!


 地下道のドアが重い音を立てて閉まり、大牛が懐から松明を取り出して火をつけた。薄暗い光が周囲を照らし、黙々と進んだ。壁には年月の侵食の跡があり、一歩ごとに靴底が擦れる音が静かな空間に響いた。

 狭い場所では、大牛が体を横にして進んだ。私は彼の後ろで靴の先を見つめ、頭には様々な場面や疑問が浮かんだ。

 10分ほど進むと、地下道が軽く揺れた。

 私は一瞬固まり、頭から埃が落ち、髪や肩に積もった。埃を払い、次の瞬間、凍りついた――胸に手をやったが、そこは空だった。

 メクロのネックレス!

 そのネックレスはメクロの遺品で、普段は肌身離さず持っていた。だが今夜、寝る前に外して引き出しに置き、ウォサルトの乱入で慌てて忘れてしまった!

「くそっ……」

 私は歯を食いしばり、低く呟き、不安が再び高まった。

 その時、大牛が足を止め、耳を澄ませた後、低く言った。

「ボスが始めた。急ぐぞ。」

 私は深く息を吸い、ネックレスのことを抑え、剣を握り、彼の歩みに追いついた。


 地下道の薄暗さは続き、松明の光だけが揺れ、曲がりくねった道を一歩一歩進んだ。時間が流れ、足音が心臓の鼓動と重なり、耳障りだった。さらに10分ほどで、上に続く階段が現れた。

「着いた。」

 階段を登り、木の蓋を開けると、土埃を帯びた冷たい風が吹きつけた。目の前は廃墟の家で、崩れた梁や瓦礫が散乱し、世に忘れられたようだった。

 大牛はドアのそばに近づき、壁の隙間から慎重に外を覗いた。動きは素早く静かで、廃墟の影に溶け込んだ。

「ここは南の郊外だ。」

 彼は振り返り、低く言った。

「この道を進めばデューク城に着く。馬は用意できなかった。殺し屋に気づかれるとまずい。」

 大牛は肩のバッグを下ろし、渡されたバッグは重く、装備や予備の武器、大量の紙幣が入っていた。

 私は頷き、言葉を控えた。その瞬間、言葉は無意味で、行動だけが感謝を伝えられる。大牛が一瞬黙り、拳を軽くぶつけた。その瞬間、静かな約束が交わされた。

「早く行け。」

 彼は拳を引き、壊れたドア枠に寄り、鋭い目で夜を見渡した。

「ここで待ち伏せする。追っ手が来たら、できる限り食い止める。」

 私は彼の目を見つめ、低く言った。

「気をつけろ。」

 大牛は答えず、手を振って急ぐよう促した。私は身を低くし、道端の草むらに飛び込み、這って進んだ。


 涼しい風が草の匂いを運び、足音は柔らかい土に吸収され、虫の音と夜風が不安な旋律を奏でた。私は焦りを抑え、冷静になろうとした。

 どれほど進んだか、山丘に登り、振り返った。視線は暗い野原を越え、そびえる大学城に落ちた。月光の下、街の輪郭は鮮明だったが、商業区は静かではなかった。

 猛烈な火が燃え上がり、火光が夜空を赤く染め、混乱と危機を映し出した。

 私は拳を握り、胸に酸っぱさが込み上げた。ウォサルトと大牛の姿が頭に浮かび、彼らが命がけで私の脱出を助けてくれている。私はただ、彼らの無事を祈った。


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