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第四の魔女:消えた痕跡  作者: Test No. 55
第2卷 - 大学城編
83/105

25.大浴場と銭湯

挿絵(By みてみん)

 大浴池和澡堂


 夏の終わりの昼間のむっとした暑さに比べて、夜の大学城は次第に秋の気配を感じさせた。

 私はウォサルトとその仲間たちと豪華な夕食を終え、学院区の石畳の道をのんびり歩いていた。足元のサンダルが一歩ごとに「カツカツ」と響き、静かな夜に特に鮮明に聞こえた。

「泡泡洗?」

 私は疑問に思って尋ねた。

「小牛、まだ行ったことないのか?」

「うん。」私は頷き、足を止めずに言った。

「俺が前にローマ式の大浴場に行ったのと何が違うんだ?」

 ウォサルトと他の連中は大笑いし、私の質問が幼稚すぎると思ったようだった。

「へへ、違いは大きいぞ! ローマ式浴場? あれは貧乏人が洗うところだよ。」

 隣の大牛がすぐに言葉を継ぎ、誇らしげに言った。

「泡泡洗こそ、俺たちのボスにふさわしい! 生活を本当にわかってるやつしか楽しめない場所だぜ!」

 みんなが騒ぎ出し、口々に議論を始めた。

「前回の泡泡洗の小姐はマジで最高だったぜ!」

 一人が思い出を語り、陶酔した目をした。

「言うなよ、あのマッサージテクニック、超神! もう少しで我慢できなくなるところだった!」

 もう一人が興奮して手を振り、衝撃を強調した。

 私は列の後ろを歩き、血気盛んな議論を聞き、苦笑した。彼らの熱意と興奮が夜風に満ち、大学城の夜が活気に溢れているように感じた。

「血気盛んな若者たちだな……俺もだけど。」

 そう思いながらも、心の奥で彼らの話に少し期待を抱かずにはいられなかった。いわゆる「泡泡洗」、一体どれほど刺激的なんだ?


 寮の一階の共用浴室は私の生活で最も馴染みの場所で、ほぼ毎日そこで簡単に体を洗っていた。大学城に来てから、特別な経験と言えば、ランディに何度か連れて行かれたローマ式大浴場くらいで、そこは一食分の金で洗える。

 初めて大浴場に入った時、みんなの前で全裸になるのに恥ずかしさを感じ、手で体を覆い、ぎこちない歩きだった。しかし、ローマ式大浴場の雰囲気はそんな羞恥心を徐々に溶かした。

 石造りの建物は古い息吹を放ち、蒸気が広い空間を包み、まるで別の世界に入ったようだった。金を払って更衣室で服を脱ぎ、深呼吸して浴場へ入った。

 目に入ったのは中央の巨大な長方形の浴槽で、老若男女が静かに浸かり、楽しげな表情を浮かべていた。周囲はシャワーエリアで、散らばったシャワーヘッドの下で体をこすっていた。最初は開放的すぎて戸惑ったが、すぐに慣れた。


 隣で下品な話を聞きながら、頭にローマ式大浴場の記憶が浮かんだ。あの開放的な空間、大浴槽、蒸気満載の部屋――最初は恥ずかしかったが、後には前所未有のくつろぎを感じた。

 しかし、今夜の「泡泡洗」は全く違う体験のようだった。ウォサルトたちと店前に着くと、美しい若い受付の女性が笑顔で迎えた。

 彼女の声は甘く丁寧で、まるでVIPのように扱われた。みんなが服を脱ぐのを見て、私も静かに従い、期待が高まった。

 ここは大浴場の開放性とは対照的に、半個室の小部屋が並び、各々がプライバシーを保てた。私は空きの部屋のドアを押し、まだ立たないうちにウォサルトの大きな声が聞こえた。


「オットー入ったか?」

 声が蒸気に満ちた空気を貫いた。

「俺だ。」私は応じた。

「一番奥の部屋に来い、隣に座れ。」

「わかった。」

 私は素直に答え、声の方向へ中間の通路を進んだ。通路の両側はカーテンで覆われた部屋で、隙間から男客が女性の「泡泡洗」サービスを受けているのがちらりと見えた。


 通路の一番奥にウォサルトが開いた部屋に座っていた。彼は手を振り、隣を指した。

「これがお前の部屋だ。」

 私は頷き、自分の部屋に入った。すでに25歳くらいの小姐が待っていた。髪を綺麗にまとめ、首筋が露わで、体にまとった薄い服が動きに合わせて揺れた。

「こちらでお世話します。」

 彼女は柔らかい口調で、職業的な距離感があった。

「……」

 私は頷くだけで、中央の木の椅子に座った。彼女は木の盆を取り、温水を汲み、手を差し出して温度を試させた。

「この水温で大丈夫ですか?」

 彼女は跪き、水を手の甲に軽くかけた。

「大丈夫。」

 彼女は水を体にかけ、温かい流れが肌を滑り、すぐにリラックスした。彼女の熟練した手で泡が全身を覆い、柔らかい触れ合いが心を揺らした。

 不適切な「反応」を抑えようとしたが、彼女は慣れた様子で気にせず続けた。

 全身を洗った後、柔らかいリクライニングチェアに横になり、二度目の「泡泡洗」が始まった。泡が体を覆い、彼女の柔らかい指が滑り、マッサージの力加減が絶妙だった。

「この力加減で大丈夫ですか?」

 彼女は聞きながら続けた。

「気持ちいいよ。」

 私は正直に答え、体がリラックスし、頭の雑念が消え、言葉にできない心地よさが広がった。抑えていた「本能」が不思議と落ち着いた。


 リラックスに浸っていると、ウォサルトの大きな声が外から響き、くつろぎを中断した。

「大牛、小牛、そろそろ出てこいよ!」

 声にいつもの威厳と怠惰さが混じっていた。

「ボス、今楽しんでるのに!」

 隣から大牛の不満の声が聞こえ、他の笑い声が続いた。

 目の前の小姐は笑い、私を起き上がらせ、泡を洗い流し、タオルを渡した。私はタオルを巻いて出て、ウォサルトと大牛に合流した。

 ウォサルトは私を見て、意味深な笑みを浮かべた。

「小牛、まだ我慢できてるか?」

 私は肩をすくめ、淡々と答えた。

「マッサージを楽しんでたよ。」

 彼は肩を叩き、神秘的な口調で言った。

「後でまた楽しめ。今はついてこい。」

 彼は一番奥の部屋へ案内し、私は疑問を抱きながら従った。


 ドアを押し開けた瞬間、冷気が顔に押し寄せ、思わず身震いした。部屋の中は先ほどの「泡泡洗」とは全く異なる光景だった。さほど大きくないプールに透明な水が張られ、さまざまな大きさの氷塊が浮かび、冷たい空気が漂っていた。

 私は思わず眉をひそめ、体に鳥肌が立った。

「これは……?」

「訓練だ。」

 私が反応する前に、ウォサルトと大牛は同時に冷たいプールに踏み入った。二人のためらいない動きを見て、私は歯を食いしばり、続いて入った。

「ヒッ──」

 足先が水面に触れた瞬間、骨まで突き刺すような冷たさが走り、思わず息を吸った。この骨を凍らせる寒さが頭に直撃し、意志を凍てつかせるようだった。

 私は呼吸を整え、ゆっくり体をプールに沈め、数分かけて刺すような寒さに慣れた。


「受け取れ。」

 大牛が突然言い、手首輪を投げてきた。

 私は受け取り、よく見ると、中級の無色の駆動石が嵌められたブレスレットで、表面が淡く光っていた。

 手首につけた瞬間、ウォサルトと大牛が同時に動き、指を噛んで血を出し、腕に熟練のコードを描いた。赤い線が生き物のように活性化し、神秘的な仕組みを起動させたようだった。

 これがOverclockの起動方法だと知っていた。

 深呼吸し、彼らを真似した。血が滲む一瞬の痛みは、すぐに続く変化に覆われた。

 最後の線を書き終えると、ブレスレットの駆動石が眩しく光り、灼熱のエネルギーが体に流れ込んだ。負荷紋が手首から広がり、蟻の群れのよう全身を這った。

 全身が炎に焼かれるようで、息が詰まる熱さだった。しかし、氷水に浸かった部分は解放感があり、氷と火の交替が意志を撕くようだった。痛みと熱が奇妙なバランスをとり、苦しくも清醒だった。

 私は不快を堪えて二人を見た。彼らの上半身から蒸気が立ち、まるで噴火寸前の活火山のようだった。プールの氷塊が目に見えて溶け、霧が水面に上がった。


 やがて、プールの氷塊が完全に溶けきった。ウォサルトは私たちを見て、決断的に言った。

「もういい、解除しろ。」

 三人同時に強化状態を解除した。灼熱感が退くと、言葉にできない疲労と痛みが襲い、全身の骨が叩かれたようだったが、以前より痛みが軽かった。私は手を見下ろし、手の震えが収まり、疑問が湧いた。

「いいだろ、この訓練方法。」

 ウォサルトは軽い口調で、慣れた様子だった。

「こんな方法があるなんて初めて知ったよ……」

 私は眉をひそめ、空のプールを眺め、感覚を振り返った。

「氷水がOverclockの副作用を一部相殺するんだ。一時的だけど、体が早く適応できる。」

 ウォサルトは説明し、手首を軽く振った。

「ボス、俺たち二人、2階くらいだろ?」

 大牛が自慢げに笑い、期待に満ちた顔だった。

「1.5階くらいかな、ははは!」

 ウォサルトは大笑いし、からかいながら言った。

「調子に乗るなよ。何度も訓練しろ! Overclockに慣れるのはお前らにいいことだ。」



 この世界の戦力階級システムは「七品+三階」を基盤とし、戦士の実力と技術能力を明確に分けた。

「七品」は純粋な戦力で、体力、剣術、戦闘知能などの総合指標を指す。

 一方、「三階」は駆動石の使用熟練度に関連し、魔法操作と制御技術の評価だ。

 マルキス城を離れる前、私の実力は5品に近づいており、今は確実にそのレベルに達している。

 駆動石の制御能力については、祖母の訓練を終えた後、1階のレベルと認められた。しかし、Overclockに関わる2階の能力については、祖母は指導を拒み、成人するまで待てと言い張った。彼女は、この力は強大だが、未熟な体ではその代償に耐えられないと考えていた。

 実際の戦闘では、戦力階級は参考にすぎず、勝負を決めるのは戦場での対応力と心理的な強さだ。ウォサルトは6品の実力を自称するが、初めて会った時、素手で戦って私がボコボコにした。

 競技場の高手は少なくとも6品以上だが、Overclockの熟練度は未知数だ。

 伝説では、七品+三階の満級を「十全」と呼び、ほぼ完璧な状態だ。天賦の才を持つ戦士が、無数の血戦を経て初めてその頂点に立てる。若者には遠い夢だ。



「コンコン。」

「入って。」

 曲線美の女性たちがドアを押し、氷の入ったバケツを持っていた。氷をプールに注ぐと、氷晶が散り、水面に浮かび、温まったプールに刺すような寒さを加えた。

 ウォサルトの視線が彼女たちを隠さず掃き、片眉を上げて一人にウィンクした。彼女は恥ずかしげに頭を下げ、頰を赤らめた。

 一方、大牛と私はプールサイドにぐったりで、動く気力もなかった。さっきのOverclock訓練が体力を消耗し、灼熱と冷気の交錯する疲労感に慣れなかった。

 私はゆっくり起き上がり、負荷紋の消えが予想より速く、体が軽くなった。

「まさか、ボスがここに連れてきたのは訓練のためだったなんてな。」

 私は感慨深く言った。

「まさかってなんだよ?」

 私は笑い、

「俺はボスが連れてきたのは……わかるだろ、へへ、Hなことかと思ってたよ!」

 言葉が終わると、冷たい水が飛んできて、予想外だった。


「オットー。」

「なんだ?」

「もう一手教えてやる。」彼の口調が急に真剣になった。

「毒や薬にやられたら、Overclockを起動して毒を追い出せ。」

 私は一瞬固まり、

「どこの天才が考えたんだ?」

「でも、できれば使わないで済むことを祈るよ。」

 彼の口調は平静だが、過去の影が感じられた。

「ボス、経験あるのか?」

 ウォサルトは少し黙り、答えなかった。だが、その目の表情がすべてを語っていた。私は肩をすくめ、追及しなかった。

 大牛は雰囲気が重くなったのを見て、割り込んだ。

「さあ、もう一回やるぜ!」

 私は彼を見て、ウォサルトに視線を移し、歯を食いしばって立ち上がった。

「よし!」

 再び訓練に没頭し、冷たいプールとOverclockの熱が体で交わり、痛みと力が衝突した。だが今回は、前より余裕があり、力をコントロールできた。

 終了時、プールは温水に戻り、氷が溶け、蒸気が立ち上った。私はプールサイドに寄り、訓練の収穫を感じた。そして女性たちが片付けに来た時、「訓練以外」の楽しみも、この旅の価値を実感させた。


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