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第四の魔女:消えた痕跡  作者: Test No. 55
第1巻 - ハンター編(獵人篇)
5/66

3.1 狩りの始まり(2)

挿絵(By みてみん)

  鋼鎌尾蛇は樹々の間をくねりながら進み、その巨大で威圧的な体躯が静かに滑るように移動していた。それはまるで無音の黒い影のようであった。

 突然、冷気を帯びた蝶の群れが無音で鋼鎌尾蛇に向かって飛来した。それらの翅は樹間の微かな光を反射し、氷のような青い輝きを放っていた。それはまるで朝霧の中に舞う雪のように軽やかで静かだった。

 これらの青い蝶は「アイスバタフライキス」という氷属性の魔法であり、その威力は控えめだが、隠密性に優れており、待ち伏せに適していた。

 鋼鎌尾蛇の感覚はこの蝶たちの接近を察知していないようだった。蝶たちは静かに蛇の頭部の周囲を舞い、まるで何かの計略を準備しているかのように見えた。


 蝶の群れが蛇の頭上に留まると、それらは一斉に爆発し、小さな「キィ」という音を立てた。それと同時に冷風が吹き抜け、鋼鎌尾蛇の頭部は瞬く間に巨大な氷の塊へと変わった。

 突然の事態により、鋼鎌尾蛇は警戒態勢に入った。頭部を激しく振り、口を開けて氷の一部を振り払おうとした。その尾は動きに合わせて高速で周囲を横切り、まるで反射する雷光のように轟音を伴って振るわれた。

 次の瞬間、数本の樹木がその円弧を描く尾によって真っ二つに切り倒され、倒れる木々の幹が裂ける音が雷鳴のように森全体に響き渡った。

 鋼鎌尾蛇は素早く警戒状態に移行し、敵の所在を探ろうとした。そのとき、森の奥深くから鋭い飛翔音と共に石の塊が飛来した。それはまるでミサイルのように鋭く放たれ、通過する木々をことごとく穿ち、穴だらけにした。

 それは隊長の「ロックバスター」と呼ばれる土属性の魔法であり、その狙いは鋼鎌尾蛇の背部にある散熱器に定められていた。石弾は見事に命中し、大きな穴を開けたことで蛇の高速移動能力を奪った。


 その時、大叔が正面から姿を現し、大盾を構えながら一歩一歩鋼鎌尾蛇に近づいていった。鋼鎌尾蛇はそれを見て怒り狂い、即座に攻撃を仕掛けた。蛇の尾は巨大な鎌のように振り下ろされ、大叔に向かって空を裂く勢いで襲い掛かった。

「Power Up!」

 大叔が叫び、彼の力が一瞬で強化された。大盾をしっかりと構え、鋼鎌尾蛇の攻撃を受け止めた。

 ギィーン!

 鎌のような尾が大盾に激突し、金属の摩擦音と火花を散らした。その強烈な衝撃で大叔は数歩後退したが、体勢を崩さなかった。

 一方で、姐御は人間よりも大きな大剣を担ぎ、鋼鎌尾蛇に向かって突進していた。しかし、まだ接近する前に蛇の尾が半円を描くように振られ、彼女を斬りつけようとした。

 姐御は素早く身をかわし、大剣で尾の一撃を弾き返した。そのまま地面に転がり、体勢を整えた。

「簡単な連携でこの鋼鎌尾蛇を仕留めるなんて、甘く見てはいけないわね!」


 鋼鎌尾蛇の尾は連続攻撃を繰り出し、姐御はそれをすべてかわしながらも前進できずに足止めされていた。

 その間に、大叔は再び大盾を構えながら蛇に近づいていった。予想通り、鋼鎌尾蛇は大きな口を開け、彼を食いちぎろうとした。

 その瞬間、盾の後ろから小鬼ハンターが飛び出した。すでに弓にセットしていた凍結矢を全力で放ち、鋼鎌尾蛇の散熱器に再び命中させた。

 鋼鎌尾蛇は苦痛の咆哮を上げ、反撃のために急いで目線を大叔から小鬼に移した。その体はバネのようにしなり、小鬼に向かって猛然と飛びかかった。


 しかし、それこそが大叔の狙いだった。彼はすかさず側面に回り込み、大盾を使って鋼鎌尾蛇に強力な一撃を加えた。その衝撃で蛇は一瞬動きを止め、攻撃が中断された。

 小鬼はその隙を逃さず、鋭い目で蛇の頭部にある指令コアを見据えた。心の中でこの戦いを一気に終わらせる算段を立てる。

「Speed Up!」

 小鬼は軽く呟き、自らの体を加速させた。そして、大叔の肩に片足を乗せ、バネのように跳び上がると、背中から双剣を素早く引き抜いた。


「このガキめ!」

 大叔は小鬼を止める間もなく、ただ呆然と叫ぶしかなかった。

「小鬼、何をしているんだ!」

 隊長の声が遠くの樹林から響いた。この小鬼ハンターはまさにそういうタイプの狩人であった。天賦の才を持ちながら、常に独断専行で行動し、予測不能な動きを見せる。

 小鬼の視線は鋼鎌尾蛇の指令コアにしっかりと固定され、冷たい光を放つ双剣がその目標に迫っていく。


 しかし、彼が降下するその瞬間、大姐御の声が鋭く響き渡った。

「危ない!」

 同時に、鋼鎌尾蛇の尾が稲妻のような速度で振り下ろされてきた。空中にいる小鬼は回避する余地がなく、歯を食いしばりながら双剣を交差させて迎撃するしかなかった。

 ガキン!

 巨大な鎌の尾と双剣が激突し、火花が四散した。小鬼はなんとかその一撃を防いだが、その衝撃でまるで野球のボールのように吹き飛ばされ、遠くの茂みに叩きつけられた。葉影に包まれ、彼の姿は見えなくなった。


 姐御の目が鋭く光り、熟練の彼女はこの一瞬のチャンスを決して逃さなかった。小鬼の状態を気にする余裕はなく、尾の牽制を失った今、彼女はすぐに目標に向かって駆け出した。

「Power Up!」

 低く呟きながら、彼女の体内から強大な力が湧き上がり、一瞬で全身に充満した。彼女は両手で巨剣をしっかりと握りしめた。

 一歩一歩前進する中で、彼女は巨剣を高々と掲げた。剣の刃は陽光を受けて冷たく鋭い光を放ち、この命を懸けた戦いに応えるように輝いていた。

 彼女は深く息を吸い込み、全神経を集中させて鋼鎌尾蛇の背部に露出している金属装甲を凝視した。そして、巨剣を振り下ろすその瞬間、空気を切り裂くような鋭い音が辺りに響いた。


 巨剣は容赦なく鋼鎌尾蛇の金属装甲に叩きつけられた。重い衝撃音と共に、剣の刃は熱いナイフがバターを切るかのように鋼鎌尾蛇の体内に食い込んだ。

 金属と剣がぶつかり合い、鋭い摩擦音を立てながら、巨剣は装甲を貫通し、その内部の機械組織に達した。

 致命的な一撃を受けた鋼鎌尾蛇の巨大な体は不自然に震え始め、やがて動力を失った巨大な機械のように地面に崩れ落ちた。

 かつて恐怖を与えていたその目の光は一瞬にして消え失せ、尾も無力に垂れ下がり、全身から生気が失われた。


 しかし、この一撃は鋼鎌尾蛇の命を絶つだけでなく、その内部に隠された自爆装置を作動させてしまった。蛇が倒れた直後、体内から低い嗡鳴音が聞こえてきた。その音は徐々に大きくなり、鋭い警告音と共に空気を震わせた。

「ピー、ピー、ピー!」

 3回の警告音が森全体に響き渡り、死神の到来を告げるかのように鳴り響いた。その音はまるで破滅を予告する角笛のようだった。

 数秒後、鋼鎌尾蛇の体は急激に膨張し、耳をつんざくような爆発音と共に四散した。金属片が空中に飛び散り、森全体に破片が降り注いだ。


 戦いの煙が徐々に晴れていき、大地には鋼鎌尾蛇の残骸が広がっていた。四方に散らばった破損した肢体や砕けた鱗片は、戦いの激しさと残酷さを物語る荒涼としたパズルのように見えた。

 姐御と大叔は無言のままこの戦場を歩き回り、鋭い鷹のような目で残骸の中から宝物を探していた。

 ブラックタイドで最も貴重なドロップ品、それは駆動石である。

  この石はブラックタイドのエネルギーの核心であり、強大な力を秘めている。駆動石はさまざまな装備や魔法を作るための重要な素材だ。そして、高ランクのブラックタイドに至っては、その核心から外殻まで全身が宝物と言える。

 ギルドが研究チームを派遣し、ブラックタイド全体を研究や分解のために回収することさえある。その価値は計り知れない。


 ブラックタイドは四つのランクに分類されており、山突獣や鋼鎌尾蛇はCode-3に属し、最下位のブラックタイドの一つである。経験豊富な狩人チームにとって、これらのモンスターを討伐することは大きな損傷を伴わずに済むことが多い。

 しかし、技術や戦略をまだ身につけていない新人にとって、最下位のブラックタイドでさえ致命的な脅威となる。これまでに無数の初心者が彼らの前で倒れ、その代償は非常に大きかった。


「おっ、見つけたぞ、見つけた!」

 姐御が突然声を上げ、一塊の壊れた装甲の中から無色の駆動石を取り出した。

「この石、けっこう大きいわね。悪くない、悪くない。昨日の山突獣なんて、一番小さい石しか落とさなかったのよ。まったく酷かったわ。」

 一方で、大叔は依然として残骸の中を黙々と探していた。その目は動き続け、まだ使えそうな部品を探している。

「まあ、これらの部品でも少しは金になるだろう。少なくとも、無駄足ではなかったな。」

 彼は低く呟きながら、器用な指で目の前の残骸を次々と調べていた。


 駆動石はそのエネルギー強度によって低位、中位、高位に分類され、それ以上には伝説級と呼ばれるものがある。中位以上の駆動石には、赤、青、緑、黄などの希少な属性が付与されることが多い。

 見習いの持つ杖には中位の青石が埋め込まれており、氷や水属性の魔法の威力を大幅に強化することができる。このような装備は初心者の狩人にとって非常に貴重であるが、その代償として、見習いはまだ返済できていない借金を背負っている。


 少し離れた場所では、隊長が無言で頭を振っていた。その目線は前方の二つの姿に注がれていた。

 小鬼ハンターは木に逆さまにぶら下がり、なんとかそこから脱出しようともがいていた。一方、見習いはその隣でどう手伝えばいいのか分からず、戸惑いながら立ち尽くしていた。


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