18.格闘訓練
格鬥訓練
「はぁ……はぁ……」
呼吸が荒く乱れていくのを感じる。胸の奥が火に焼かれているように熱く、さっきの連続攻撃で溜まった疲労が、なかなか治まらない。
ユリが、目の前に立っていた。
彼は、これまで一度も勝てなかった相手。
拳にはグローブ、脚にはレッグガードを装備しているのに、それでも彼の俊敏さはまったく衰えていないように見える。
いつも通り、ユリは一定のリズムで安定した足取りを保ち、一歩一歩がまるで計算されたかのように正確だった。
彼はすべての訓練項目に精通していて、卒業も間近だろう。
私はその姿を目で追いながら、心の中にたった一つの願いを抱く。
——彼がこの場を去る前に、一度だけでいい。どの種目でも構わない。彼に勝ちたい。それさえ叶えば、もう思い残すことはない。
練習試合が始まったとき、私は迷いを捨てることに決めた。全力でいく。
出し惜しみは一切せず、ユリに向かって突進し、拳と蹴りを嵐のように繰り出した。
スピードで彼のリズムを崩し、不意を突こうとしたのだ。
……だが、現実は甘くなかった。
私の一撃一撃は、まるで読まれているかのように軽やかにかわされ、空を切るだけ。
たまに当たっても、彼の熟練した防御で完全に吸収され、まったく効果がない。
その防御はまるで岩のように堅く、逆に私は猛攻の隙を突かれて何度も反撃を受け、一度は足払いで派手に転ばされ、情けない姿で地面に倒れ込んだ。
もし防具がなかったら、今ごろ顔は腫れ上がっていたかもしれない。
私は荒い息を吐きながら、頭の中の雑念を必死に振り払い、目の前の状況に集中しようとした。
ゆっくりと、一歩ずつ前へと歩を進め、ユリとの距離を詰めていく。
攻撃範囲に入ったそのとき——
彼は頭部を守るそぶりさえ見せず、どこか見下すような目で私を見つめてきた。まるで「お前なんか相手じゃない」と言わんばかりに。
その態度に、胸の奥で何かが燃え上がった。
私はすかさず一歩踏み込み、左手でジャブを繰り出す。狙いは彼の顔面——だったが、彼はわずかに身をひねるだけで、拳は空を切った。
だが、問題ない!
すぐさま逆の手でストレートを打ち込む。今回は狙いも完璧。
「これで防御を崩せれば……!」と願ったが、ユリは肩を回転させて、軽々とその拳を受け流す。拳は彼の肩をかすっただけで、決定打にはならなかった。
しかし、まだ終わらない!
最初の二発はあくまで誘い——本命は次だ。
私は素早く腰をひねり、右脚を高く振り上げた。狙いは彼の頭部。
高速のハイキックが唸りを上げ、まさに命中寸前——そう思った瞬間。
ユリは、まるで時間が止まったかのように、上体をギリギリまで後ろに反らした。
信じられない角度だった。
私の足先は、彼の顎のすぐ前をかすめるように通り過ぎ……あとほんのわずか、届かなかった。
しまった!
大きくバランスを崩した私は、すぐに体勢を戻せなかった。
次の瞬間、支えとなっていた左足に強烈な衝撃。
ユリのスイープキックが直撃し、私は一気に体の重心を奪われ、そのまま無様に地面へと倒れ込んだ。
倒れた私は、悔しさと屈辱で胸がいっぱいだった。
歯を食いしばり、疲労と怒りを押し殺して、すぐに立ち上がる。もう一度攻撃を仕掛けるために。
……だが、どれほど必死に挑んでも、ユリは余裕のある動きで防ぎ続けた。
私の攻撃はまるで水に石を投げたかのように、何の反応も返ってこなかった。決して一撃を通すことができなかった。
さらにもう一度、怒涛の連撃を放つ——だが、呼吸は完全に乱れ、心臓の鼓動はまるで壊れた太鼓のように乱れていた。
胸の中は鉛のように重く、両手は次第に言うことをきかなくなっていく。
振るう拳はどれも、まるで重い鎖に繋がれているかのようだった。
額からは汗が滝のように流れ、目に入り、視界を刺す。
それを拭おうと手を伸ばしたそのとき——ユリの口元が目に入った。
……彼は、笑っていた。
その瞬間、私はようやく気づいた。
自分の疲労が、どれほど顔に出ていたかを。
足は重く地面に縫い留められ、もう前に進む力さえ残っていなかったのだ。
この場面の息詰まる緊張感と、ラフィールの悔しさがしっかり伝わるよう丁寧に訳しました。
この後の展開も翻訳が必要でしたら、どうぞご遠慮なくお知らせください。
もう、動けなかった。
私はただ、なんとかその場に立ち続けているだけだった。
そのとき、ユリのジャブが素早く迫ってきた。
拳が防御の上に次々と叩き込まれ、「パン、パン、パン」という音がグローブ越しに伝わってくる。
どれも探りを入れる程度の軽い打撃だったが、それでも確かに拳の圧力は感じ取れた。
頭の中で直感が叫ぶ——次はボディだ。
これはよくある攻撃の流れ。だからこそ、私はすぐに一歩後ろへ下がり、腕を少し下げて胴体を守った。
果たして、その予感は的中した。
ユリの拳がちょうど私の腕に当たり、右下腹部にかすかな痛みが走る。
もしこの一撃を防げていなかったら、今頃もっとみっともない姿になっていただろう。
ふっと息をついた、その瞬間だった。
ユリが腕を振りかぶり、後ろ手のパンチを繰り出そうとしているのが見えた!
脳内で警報が鳴り響く。
私は反射的に頭を下げ、顔をグローブの後ろに隠し、心の中で祈った——
どうか、この一発はしっかり防げますように……!
だが、何かがおかしかった。
期待していたような強烈な衝撃は来なかった。
鉄槌のような一撃が、なぜか……感じられない。
そのとき、不意にアゴに衝撃が走った。
ユリの拳が、想定外の角度から私の防御をすり抜けてきたのだ。
——アッパーカット!
鋭く正確なアッパーが、私のアゴを突き上げた。
防具が衝撃をある程度抑えてくれたとはいえ、その一撃は十分すぎるほど強く、私は頭をのけぞらせた。
バランスを失った身体は、次の瞬間、ドシンと尻もちをついて地面に倒れた。
耳がキーンと鳴り、頭の中はぼんやりと霞んでいた。
世界が遠く、曖昧になっていく感覚。
防具のおかげで衝撃はかなり抑えられていたはずなのに、身体からは力が抜けていくような感覚が残っていた。
見上げた先には、ユリの姿。
そこに立つ彼の周囲には、勝者としての風格が目に見えるほど漂っていた。
「勝者、ユリ!」
審判の声が耳に届く。
その響きは、あまりにも明確で、容赦なかった。
私は地面に座り込んだまま、心の中でただ一つの問いを繰り返していた。
——また……負けたのか……?




