表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
第四の魔女:消えた痕跡  作者: Test No. 55
第1巻 - ハンター編(獵人篇)
2/61

1. 巨獣の前で、ちっぽけな人間(1)

挿絵(By みてみん)

 在巨獸面前,渺小的人類


 荒野にて、一つの巨大な金属の丘が信じられないほどの速度で駆けていた。陽光がその巨大な身体に降り注ぎ、冷たい金属の線が浮かび上がる。

 よく見ると、それは丘ではなく、イノシシに似た形状を持つ機械の巨獣だった。

 その咆哮は雷のように大地を轟かせ、鼻先から大量の蒸気を噴き出し、まるで咆哮する戦神のような迫力があり、恐怖を感じさせるほどだ。巨獣の鼻の両側にある鋭い牙は、まるで巨大な刃のようで、陽光の下で致命的な冷たい輝きを放っている。

 その牙の先端には鮮血が残っており、刃を伝って滴り落ち、荒れた大地に染み込んでいく。血の赤と金属の冷たさが対比することで、この怪物の残忍さと脅威が余すところなく表現されている。


 少し離れた場所で、一人のハンターが必死に逃げていた。彼の呼吸は荒く、額には冷や汗が浮かび、足を止める余裕など全くなかった。

 その機械の巨獣は彼を目でしっかりと追い続け、巨獣の歩みが速まるたびに、大地が揺れ、砕けた石が四方に飛び散った。巨獣の速度は驚異的で、その巨大な身体から想像される鈍重さを全く感じさせない。

 そうこうしているうちに、巨獣はあっという間にハンターの背後に迫った。


「早く!今だ!」

 ハンターは叫び声を上げた。その声には絶望と焦りが混じっていた。その叫びと同時に、大地が震え、彼の背後に突然石の壁がせり上がり、彼と機械の巨獣の間に立ちはだかった。

 これは地の魔法——「石の庇護」だった。

 実は、ハンターは一人ではなかった。少し離れた岩陰から、仲間が発光する杖を掲げて緊張の目でこの生死を分ける瞬間を見守っていた。

 だが、事態は予想通りには進まなかった。機械の巨獣が石壁に突進すると同時に、轟音を伴って壁は紙のように脆く砕け散った。


 砕けた石が飛び散る中、ハンターは一瞬安堵した表情を浮かべたものの、それはすぐに緊張に戻った。彼が振り返った瞬間、すでに避ける余裕はなく、機械の巨獣の牙が容赦なく彼の身体を貫いた。鮮血が噴き出し、牙を赤く染め、乾いた大地に降り注いだ。

 ハンターの命は血液とともに少しずつ失われていき、彼の頭は力なく垂れ下がり、その目には驚きと無念が宿っていた。

 少し離れた場所でその光景を目撃した仲間の顔には、恐怖と絶望が広がっていた。

 彼女の足は震え始め、機械の巨獣は血まみれの牙をゆっくりと持ち上げ、冷たい目を彼女に向けた。それは次の獲物の運命を告げているかのようだった。


 女ハンターはその光景に怯え、足がすくんでしまった。なぜ彼女一人だけがここまで逃げ延びてきたのか、ようやく思い至る。残りの三人の仲間はどうなったのか?そのとき、彼女は機械の巨獣の身体に付着した多くの血痕に気づいた。

 彼女の視線は巨獣の目と交わった。途端に全身が硬直した。逃げたいと思ったが、力の入らない足が命令を聞かず、杖を頼りに動こうと試みたものの、足の力が抜けてその場に倒れ込んでしまった。

 これが彼女にとって初めての狩猟だった。目の前の状況にまったく心の準備ができていなかった。隊長はかつて胸を張って彼女に約束していた。

「俺と一緒に狩りに行けば大丈夫だ。」

「来ないで……」

 後悔する暇もなく、耳元に重い足音が近づいてきた。地面に座り込んだ彼女は、その巨大な存在が迫る圧迫感をより一層感じた。大地は揺れ、地面の小石が飛び跳ねた。

「まだ死にたくない……」

 彼女は手足をばたつかせながら必死で後ろに這い、突然感じた地面の「温かさ」——彼女が座っていた場所から何か不明な液体が流れ出していることさえ気に留めなかった。

「待って……」

 言葉を言い終える前に、巨大な影が彼女の視界を完全に覆った。死の静寂の中、その巨大な金属の足が高く持ち上げられ、彼女に向かって降り下ろされる。

「いや——」

「待て!」

 その瞬間、遠くから幼い声が響き渡った。

「ちっ、間に合わなかったか。」



 しばらくして、一人のハンターが草原を駆け抜けていた。全力で走りながら、冷静に周囲を観察している。

 背後では機械の巨獣が怒りの咆哮を上げながら追いかけてくる。このハンターは、その巨獣が「山突獣さんとつじゅう」と名付けられたことを知っていた。それは巨大な怪物で、体の大きさはハンターの数十倍にも及び、その全身は厚い金属の外殻に覆われている。まるで古代の戦車が蘇ったかのようだ。

 その2本の牙は陽光を浴びて鋭く輝き、まるで鋭利な刃物のようにハンターを切り裂こうとしている。

 牙がどんどん近づいてくるのを感じ、ハンターは緊張感を覚えながら叫び声を上げた。

「Speed up!」

 彼は素早く身体強化スキルを発動し、草地の上で巧みに跳び上がった。右足で石を踏みつけ、その反作用を利用して左方向へと大きく跳躍する。

 山突獣はその巨大な身体ゆえに方向転換が間に合わず、前方の障害物を無理やり砕きながら突進する。鼻孔から大量の蒸気を噴き出し、怒りに満ちた咆哮を上げながら再びハンターに向かって突進してきた。


 前方には盛り上がった岩の台地が見えた。ハンターはためらうことなくそこに足を踏み入れ、高く跳び上がった。その高さは二階建ての建物ほどにも及ぶ。彼は空中で素早く身体を反転させ、弓を引き絞り、その矢を山突獣の急所——牙の間にある鼻の部分に狙いを定めた。

 そこには散熱器が隠されており、それが弱点だった。

「火焔のほのおのや!」

 彼は低く呟きながら弓弦を放した。その瞬間、矢は燃え盛る炎となり、目標に向かって飛んでいった。

 山突獣は素早く反応し、鋭い牙を激しく振って火焔の矢を弾き返した。燃え上がる矢が金属の火花を散らしたものの、それを阻止することはできず、むしろその巨獣をさらに激怒させた。

 ハンターに向かって再び飛び掛かってきた。

 ハンターは地面にしっかりと着地すると、すぐに両手に双剣を構え、口元で軽く愚痴をこぼした。

「やっぱりそう簡単には命中しないか。」


 次の瞬間、山突獣が重く地面に着地し、土埃を巻き上げた。その鼻孔から再び熱い蒸気が噴き出し、怒りが頂点に達したかのようだ。

 その時、前方から大小二つの火球が飛んできて、山突獣の顔面に命中した。直後に爆発音が響き渡り、それは散熱器が爆発した音だった。濃い煙が立ち上り、山突獣の高頻度な動作を維持するための機能が失われた。

 煙がわずかに晴れた瞬間、ハンターは矢のように山突獣に向かって突進した。

 彼は巨獣の鋭い牙を巧みに双剣で防ぎながら、もう一方の短剣を左目に突き刺した。そこには監視装置のような赤い光を放つ装置があった。

 短剣は正確に命中し、監視装置は瞬時に火花と黒煙を噴き上げた。山突獣は苦痛の咆哮を上げたが、ハンターはその反撃を避けるように素早く後方へと跳躍した。


 山突獣は激しく身をよじらせ、蒸気を排出して散熱しようとしたが、壊れた散熱器ではわずかな熱気しか漏れ出せなかった。

 それでも巨獣は再び突進を試みたが、視界が損なわれたため、ハンターに容易にかわされ、大きな岩に頭から激突してしまった。

 その瞬間、山突獣の緊急冷却装置が作動し、元々密閉されていた金属の外殻が四肢の太腿部分で弾け飛び、内部構造が露わになった。蒸気と共に埃が舞い上がり、その煙は巨獣の残された視界を完全に遮断した。


 煙の中から、二つの影が静かに現れた。一人は巨大な剣を持つ女ハンター、もう一人は大斧を握る中年の男性ハンターだった。

 兩人幾乎同時に行動を開始した。巨剣は山突獣の左前脚を深く切り裂き、露出したケーブルを断ち切り、油が勢いよく飛び散った。一方、大斧は右前脚に深い傷を与えた。

 山突獣は反撃しようともがいたが、左前脚が動力を失い、倒れ込みそうになりながらも、残りの三本の脚で何とか立ち上がった。

 その時、巨獣は最後の咆哮を上げ、狂ったように突進を繰り返した。しかし、ハンターたちは距離を取り、巨獣が力尽きるのを静かに見守った。

 やがて、火球を発射した魔法使いたちもゆっくりと前線に合流した。


 山突獣が徐々に力を失い、ついに巨大な身体が地面に崩れ落ちた。

 その瞬間、一本の矢が正確に右目に撃ち込まれた。同時に、双剣のハンターが猛禽のように山突獣に飛びかかり、露出した指令核心に短剣を深く突き刺した。

 核心が砕ける脆い音とともに、山突獣の全ての動作が止まり、その後三回の短い警告音が響き渡った。

 次の瞬間、巨獣の身体は大きな爆発を起こし、この激しい戦いに終止符を打った。



 山突獣——このような生体機械獣は、「黒潮(くろしお、Kuroshio、Black Stream)」として知られている。その名前は、この生物に遭遇した人々の心に消えることのない痕跡を残している。

 新人類はそれを「黒潮」と呼び、その存在はまるで未来から遺棄された怪物のようで、現在の科学技術の範疇をはるかに超えたレベルを示している。それはまるで異なる時空からもたらされた異物のようだ。その背後にある謎は、どんな解釈をしてもただ深まるばかりである。


 黒潮の内部には「駆動石くどうせき」と呼ばれるエネルギーキャリアが存在している。この駆動石は、黒潮が自爆した後に残るわずかな残留物の一つであり、ハンターたちが狩猟する主な戦利品となっている。

「駆動石」または「魔導駆動石」とも呼ばれるそれは、魔法を使用するための媒介であり、通常は武器に埋め込まれてその性能を大幅に向上させる。また、魔法の反作用による圧力を受け止める機能も持っている。

 黒潮の外殻は精密に鍛造された金属で構成されており、それはまるで貫くことのできない鎧のようである。金属の表面は星のように冷たく輝き、その一つ一つの板が極限まで設計されており、非常に頑丈だ。

 これらの金属構造は防御の盾であるだけでなく、無言の威圧感をもたらし、近づく敵にその冷酷さと無慈悲さを宣告している。

 その堅固な鎧の下には、高度に知能化されたAIの頭脳が隠されている。この冷たい知能の核は、潜在的な脅威をすべて計算し、精密な判断で動作を決定する。

 その行動は冷徹で無情であり、一つ一つの命令が、獲物の運命に対する最終的な裁決のようである。無数の命がこの存在の前で、かつてない恐怖と無力感を味わってきた。


 黒潮の出現は、まるで天災のようだと言われている。大陸の南に広がる暗い深淵から突如湧き上がり、旧人類時代の終焉を告げる存在となった。それらは瞬く間に大陸全体を覆い尽くし、黒い波のようにすべてを呑み込んだ。

 その足跡は大地に深い傷跡を残し、かつて繁栄していた都市を廃墟と化し、賑わっていた街道を荒廃させた。それは言葉で表現できない時代であり、人類のかつての栄光と希望は黒潮の前で紙のようにもろく崩れ去った。

 時が経つにつれ、新人類が台頭してきた。彼らはかつてのように成す術もなく滅びることを選ばず、勇気と知恵を持ってこの災厄に立ち向かった。無数の試行錯誤と戦いを経て、ついに黒潮を打倒する唯一の秘訣を見つけ出した。

 ハンターたちは黒潮の動きの中から弱点を見つけ出し、それに応じた攻撃を加えることでその活動能力を徐々に削ぐ。そして、すべての弱点が破壊されたとき、黒潮は大幅に弱体化する。

 最終的に、指令核を破壊するか致命傷を与えることで黒潮は引き金を引かれたように爆発し、その暗い記憶は火の光の中で燃え尽きる。


 現在、黒潮はすでに大陸の南側、長城の向こう側へと追いやられている。この大陸を横断する長城は、まるで巨大な石の龍のように山脈の背に沿ってうねりながらそびえ立っている。その姿は古くから堅固であり、人類文明の象徴とされてきたが、現在では黒潮と新人類の最後の防衛線となっている。

 長城は「長城連盟」によって管理されており、その中央部分には「マークィスマークィスじょう」と呼ばれる一つの町がそびえ立っている。この城は長城全体で唯一の出入口である。

 この町は、長城に輝く宝石のような存在であり、防衛の要塞であると同時に希望の灯台でもある。その城壁は鋼鉄と石塊で築かれ、長城の本体と一体化しており、南方から迫る黒潮の侵攻を堅実に防いでいる。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ