11.魔女の伝説
「魔女」という言葉の起源については、もはやその真実の源をたどることはできない。伝えられるところによれば、この言葉が初めて登場したのは、すでに破損して一部しか残っていない古代の遺物の中だったという。
断片的な解読によると、この語は旧人類の時代に由来しているらしい。当時の人々は、こうした神秘的な存在を「巫女」と呼んでいたようだ。両者の意味合いは完全には一致しないものの、いずれも自然や超自然の力を操る女性を指していた。
断片的に残された記録や語り継がれてきた物語の中で、魔女の姿は幾度となく形を変えてきた。しかし、その本質だけは変わることがなかった――魔女とは、常識を打ち破り、力を掌握する存在である。
文化や時代の違いによって、魔女はさまざまな象徴的意味を持たされてきた。
1.神秘的な魔法の使い手
最も古い伝説において、魔女は自然あるいは超自然の力を操る者として描かれている。雷を呼び、風雨を操り、あるいは目に見えぬ力で運命を変えることができるとされた。
一部の物語では、魔女は邪霊や悪魔と契約を結び、禁断の魔力を手に入れる者として登場する。このような魔女はしばしば危険の象徴として描かれ、暗い森の奥深くに住み、人間の世界に対して無関心、あるいは敵意を抱いているとされた。
2.賢き薬草師
一方で、ある伝統文化の中では、魔女はまったく異なる姿で現れる。彼女たちは知恵の象徴であり、薬草療法や民間医術に精通した女性であった。
自然界の神秘を理解し、傷を癒し、命を救う力さえ持っていたという。
こうした魔女は邪悪とは見なされず、むしろ村にとって欠かせない存在であった。しかし、あまりに超越した知識は時に誤解や恐怖を招き、彼女たちは追放されたり迫害されたりすることもあった。
3.超自然的または伝説上の存在
神話や童話の中で、魔女はさらに多くの伝説をまとって語られてきた。こうした物語において、魔女は畏敬すべき存在であり、尖った帽子をかぶり、長い鼻を持ち、空飛ぶ箒に乗って夜空を舞い、黒猫やカラスといった動物を伴っていることが多い。
その力は強大でありながら、必ずしも邪悪とは限らない。
時には英雄に知恵を授ける導き手であり、また時には試練を与える者として、物語の主人公が向き合わねばならない存在として描かれる。
4.力や反逆の象徴としての存在
いくつかの古代文献において、魔女の姿は次第に新たな意味を帯びるようになった。彼女たちはしばしば、自立し、反逆し、そして力強い女性の象徴として描かれている。
伝統に挑み、自由を求め、知識と力を武器にして抑圧や不正に立ち向かう。こうした魔女は、まさに力と知恵の化身であり、新時代の女性の象徴そのものであった。
この大陸において、「魔女」という呼び名はもはや神話的なイメージを超え、世界に影響を与える存在の代名詞となっている。
彼女たちの力と行動は歴史の中に深く刻まれ、繁栄と破滅、希望と恐怖を同時にもたらした。
これらの魔女たちは空想の産物ではなく、かつて実在した伝説の人物であり、その逸話はいまも語り継がれている。
第一の魔女――起源の魔女
第一の魔女はすべての始まりであり、後の時代には「起源の魔女」として崇められた。
彼女の物語は旧王朝が建国されるよりも前、混沌とした暗黒の時代に始まる。それは人類史上、最も不安定で荒廃した時代だったと伝えられている。
彼女は未知の領域から来た力を手にし、それを「駆動力」と名づけ、新たなる人類へと授けたという。
この力こそが人類に黒潮との戦いにおける鍵をもたらし、それまでただ生き延びるしかなかった人類に、初めて運命を覆す可能性を与えたのだった。
起源の魔女の叡智は世界を変革し、旧王朝は彼女を太陽神の化身として崇拝し、その姿を祈りの聖壇や壁画に刻み込んだ。
彼女は人類の啓蒙者であり、精神的な導き手として、文明全体に希望の火を灯した存在である。
その本名はすでに歴史の彼方に失われてしまったが、人々は今なお、彼女の知恵と献身こそがこの大陸の平和の礎であると信じている。
第二の魔女――不敗の魔女
もし第一の魔女が文明の伝播者であったならば、第二の魔女はその文明を守る刃であった。
彼女は後の時代に「不敗の魔女」と呼ばれ、勇気の象徴として語り継がれた。歴史上最も強大な女将軍にして、旧王朝における黒潮抗戦の英雄である。
彼女の名は常に戦場と共にあった。卓越した指揮能力によって軍を統率するのみならず、自ら最前線に立ち、黒潮への恐怖を兵士たちの勇気へと変えてみせた。
史実において、不敗の魔女は聖女ジャンヌ・ダルクの如き英雄として語られ、数多の決戦を勝利へ導き、人類に安住の地をもたらした。
彼女の鎧と戦旗は人類の意志の象徴となり、最も暗い時であっても、彼女が戦場に姿を現せば、兵たちの心には再び不滅の闘志が灯るのだった。
第四の魔女――災厄の魔女
前の二人の魔女が光輝に満ちた存在であったのに対し、第三の魔女の登場は破滅と恐怖をもたらすものであった。
彼女は世に「災厄の魔女」として知られ、とりわけ「第四の魔女」という名で記憶されている。なぜならこの大陸の言語において「四」は「死」と音が似ているからである。
この災厄の魔女――メクロは、近代における最恐の伝説である。
メクロの物語は、まるで災厄の記録そのものだった。
彼女は未知の力と卓越した知略をもって人類の平和を破壊しようと試み、その過程で数千の命が奪われた。
その真の目的は今なお明らかではないが、彼女の行動は大陸全土の勢力図を一変させるほどの影響力を持っていた。
最後の記録において、メクロは神秘的に姿を消しており、多くの憶測と恐怖を残している。
ある者は、彼女は敗北した邪悪の化身だと語り、またある者は、彼女はいまもなお闇の中に潜み、再び現れる時を待っているのだと信じている。
この三人の魔女の逸話は、人類の歴史における光と影を体現するものであり、力という存在の二面性を明らかにしている。
起源の魔女は希望と知恵を、不敗の魔女は勇気と守護を、そして災厄の魔女は破壊と恐怖を象徴しているのだ。
彼女たちの物語は後世の詩歌や文学に数多く取り上げられ、この大陸の人々の心に深く刻まれた伝説となっている。
この地の歴史において、魔女という存在が忘れ去られることは決してなかった。光であれ闇であれ、彼女たちの影響は至る所に存在し、それはまるで運命の刻印のように、常に人々に問いかけている。
――力そのものには善悪はない。運命を左右するのは、力を握る者の意志なのだと。