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第四の魔女:消えた痕跡  作者: Test No. 55
第3卷下 - 政変編
105/105

15. 計画始動(1)

挿絵(By みてみん)

 計畫開始


 アメリンの計画は以下の通りだ。

 ラファエルとグレイムはそれぞれ一隊を率い、城内の守備隊とマルコムの拠点に直行する。

 彼らの任務はシンプルだが極めて重要だ:最速で混乱を起こし、敵の陣形を乱すこと。

 アメリンは繰り返し念を押し、行動は迅速かつ果断でなければならない、目標達成後すぐに撤退せよ、決してぐずぐずせず、戦いに執着するなと。

 城内に混乱が広がると、アメリン、ナズ、レナは主力部隊を率い、城中の混乱に乗じて監獄に直撃する。彼らの目標は明確だ——トムリンを救出すること。これがこの計画の核心だ。

 しかし、アメリンは心の中でよくわかっていた。これが最も危険な部分だということ。マルコムはすでに彼らの到来を予期しており、監獄の内外は厳重な警戒態勢で、守備の多さは人を尻込みさせるほどだ。


 計画の最終着地点は西側の城門、ここが撤退の集合地点だ。

 全ての隊は任務完了後、迅速に集結し、混乱に乗じて山林への退路を開き、再びマーカス城の視界から姿を消す。計画全体の成功は速度と連携にかかっており、どの部分でもミスがあれば全盤崩壊する可能性がある。

 ラファエルは内心、主力を伴い、最も重要な監獄突撃に参加したいと切望していたが、アメリンは彼の要請をきっぱりと拒絶した。彼女は三人の強者で十分だと考え、ラファエルの任務も極めて重要だ:外周で敵を牽制し、主力を時間稼ぎする。彼は祖母の配慮を理解し、自分の位置が計画全体で極めて重要だとわかっていたが、心の中の焦燥と不安は依然として抑えきれなかった。

 夜色が深まり、全員がそれぞれの位置につき、行動の準備が整った。


 寒風がそよぎ、マーカス城の夜はいつものように冷たく静かだ。守備隊の拠点の灯りは弱く、ぼんやりと厚い石壁を映し出している。

 守備隊総指揮官、つまりマーカス城内で城主に次ぐ指揮官で、体格の逞しい中年男性は、この時自分の執務室に座り、不安げに窓外の闇を見つめていた。

 政変の前、マルコムは自ら彼を訪ね、引き入れようとした。しかし、彼は城主トムリンへの信頼を裏切る気はなく、マルコムと正面から敵対するつもりもなかった。

 結局、彼は自ら中立だと思う道を選んだ——兵を動かさず、手下の守備隊を拠点に待機させ、城内の風雲の変化を静観する。

 政変後、マルコムは順調に城主の座を奪取し、彼はこの「中立」のせいで深い恐怖に陥った。毎日不安に過ごし、いつかマルコムの粛清が自分の頭に降りかかるのではないかと恐れていた。


 今晩、彼はいつも以上に寒さを感じていた。冷たい風が厚い石壁を突き抜け、骨の髄まで凍えるようだった。彼は思わずつぶやいた。

「この天気、めっちゃくそ寒いな。もうすぐ雪でも降りそうだ。」

 不満を口にした後、彼はそばにあったカップを手に取り、熱いお湯を飲もうとしたが、カップはすでに空っぽだった。

 眉をひそめ、彼は入り口に向かって叫んだ。

「誰か、熱いお湯を持ってきてくれ!」

 外は静まり返り、なんの応答もなかった。彼は声を張り上げた。

「誰か来い!」

 それでも誰も答えず、彼は苛立ってつぶやいた。

「ちくしょう、誰もいないのか。なんてこった。」

 総指揮官はカップを手に取り、自身でお湯を取りに行くことにした。彼が立ち上がると、腰に下げた剣が軽く揺れ、金属がぶつかる音を立てた。彼は執務室を出て、廊下を進んだ。そこは死のように静まり返り、広々とした空間に彼の足音だけが響き渡った。


 廊下を半ば進んだところで、突然、異様な気配を感じた。背筋に冷たいものが走り、彼は素早く振り返り、手にした剣を瞬時に抜いた。次の瞬間、冷たい光が空を切り、剣同士がぶつかり合い、金属の衝突音が廊下に響き渡った――

「キン!」

 総指揮官はかろうじてこの不意の一撃を防いだが、剣の刃が胸をかすめ、服を裂いた。目の前に立つ黒衣の刺客は顔を覆い、冷酷な目つきで立っていた。明らかに彼を生かして帰すつもりはない。

 総指揮官はすかさず「Speed up」を発動し、身体が一瞬で加速、剣の影が廊下を旋風のように駆け巡った。しかし、黒衣の刺客の速度は彼にまったく劣らなかった。狭い空間で二人は激しく交戦し、剣の影と火花が交錯する中、総指揮官は徐々に後退を強いられた。

 彼の心は動揺し、刺客の正体を推測しようとしたが、一瞬の気の緩みが命取りとなった。相手の長剣が毒蛇のように防御をすり抜け、彼の脇腹に深く突き刺さった。

「うっ!」激痛に息をのんだ彼は、左手で傷口を押さえ、右手の剣を握り締め、緩めることなく二人を隔てるように構えた。刺客のフードの下、冷酷な瞳が彼をじっと見つめ、背筋が凍る思いだった。

「お前は誰――」

 言葉を終える前に、刺客が再び突進してきた。剣先が目の前で残像と化し、動きはあまりに速く捉えきれなかった。

 彼はそれが「連突刺」だと分かっていたが、知っているだけではどうにもならない。身体が意識に追いつかなかった。

 二度の金属音の後、立て続けに二つの剣撃が無情にも彼の胸を貫いた。彼は大きく後ずさり、みじめに地面に倒れ込み、弱々しい声で懇願した。

「待、待ってくれ……」

 刺客は容赦なく、最後の一撃を上から振り下ろし、彼の命を奪った。総指揮官の身体は重く倒れ、冷たい床に血がゆっくりと広がっていった。

 刺客は影の中に立ち、目の前の死体を見下ろした。彼の金色の瞳は冷酷で感情がなく、静かにささやいた。

「一人目、守備隊の総指揮官。」



 その後間もなく、マーカス城の夜は大混乱に陥った。炎は狂った風が巻き上げる巨大な波のように、通りや家々を飲み込み、夜空を不気味な赤に染めた。煙が立ち上り、鼻をつく臭いが空気中に広がり、慌てふためく叫び声や急ぐ足音が四方から響いてきた。

 ラファエルとグレイムがそれぞれ率いる小隊は、鋭い刃のように敵陣に切り込んだ。彼らの行動は正確かつ迅速で、特攻隊の如く拠点に突入し、容赦なく衛兵を打ち倒し、施設を破壊し、そして一面を炎の海に変えた。

 その後、彼らは夜の闇に消え、荒れ果てた廃墟と呆然とする敵を残した。マーカス城の夜は、炎の輝きに照らされ、まるで終末のような凄惨な光景と化した。


 城内の別の場所、喧騒から遠く離れた暗い路地裏では、一団の黒い影がひっそりと潜んでいた。彼らは無言で、濃い闇に身を隠し、視線は遠く離れた目標——北西に位置する監獄に注がれていた。

 それは孤立した建物で、高くそびえる壁が監獄全体を囲み、壁の上では時折衛兵が巡回していた。この時、城内の騒動に気を取られ、監獄の内外の衛兵たちが次々と外に出て、何が起こっているのかを確認しようとしていた。

 監獄からさほど遠くない空き地で、三人の黒衣の者が巨大で複雑な魔法陣の上に立っていた。魔法陣にはルーンが刻まれ、蠢くような光を放っていた。

 中央の黒衣の者は袖から駆動石を取り出し、慎重にそれを魔法陣の中心に置いた。その後、三人はそれぞれ魔法陣の三つの要所に杖を差し込んだ。

 偶然通りかかった住民がこの光景を目撃し、驚きの声を上げた。

「何をするつもりだ――」

 言葉が終わる前に、魔法陣が突然眩い光を放ち、駆動石は強烈な圧力に耐えきれず一瞬で粉々に砕けた。その粉は細かな光の粒となって空中に浮かび、すぐに魔法陣に吸収された。

 光はますます強くなり、三人の黒衣の者の姿をほとんど飲み込むほどだった。低く力強い呪文の声が響いた。

「二階・大地の裂け目!」

 大地が震え始め、魔法陣の前の地面に細い亀裂が生じた。その亀裂は生き物のように急速に広がり、やがて激流のように監獄の方向へと蛇行していった。地震の轟音は耳をつんざくほどで、周辺一帯を揺さぶった。


 監獄の囲い壁の上の衛兵たちは、激しい揺れの中で壁に手を当て、なんとか体を支えようとした。突然、監獄の内部から天を揺るがすような轟音が響き、その後に息をのむような静寂が訪れた。

 彼らが顔を覗かせてみると、驚愕の光景が広がっていた――監獄の地面に巨大な裂け目が生じ、まるで恐ろしい傷口のように監獄全体を貫いていた。囲い壁が崩れ落ち、瓦礫が四散し、一部の施設も一緒に崩壊していた。

 崩れた囲い壁のそばで、数人の衛兵が慎重に近づき、状況を確認しようとした。

 しかし、鬼魅のような冷たい光が一閃し、黒衣の者の手に握られた武士刀が空中に冷ややかな弧を描き、動きを止めた。衛兵たちは叫ぶ間もなく、胸に鋭い痛みを感じ、声もなく地面に倒れ、血痕が急速に広がっていった。

 漆黒の影が血の海の中に立ち、まるで地獄から現れた死神のようだった。覆面の黒衣の者がゆっくりと顔を上げ、黒い布の下で暗紅色の両目が冷たく光り、狩りをする野獣のように周囲をじっと見据えた。

 突然、耳をつんざく警鐘の音が夜空を切り裂いた!

 囲い壁の上の衛兵が異変に気づき、急いで警鐘を鳴らして警告を発した。その音は監獄内の騒動を呼び起こし、巡回していた無数の衛兵が反応し、武器と魔法の杖を手に、監獄前の空き地に急速に集結した。彼らは緊張した面持ちで、両手で武器を固く握り、暗闇の中で侵入者の姿を捜した。

 黒衣の者はわずかに首を傾け、後ろに手を振って仲間を急がせた。次の瞬間、闇の中から数人の影が静かに現れた。二十人余りの黒衣の者たちが音もなく姿を現し、まるで潮のように広がっていった。

 その中でも、最前列に立つ二人の女性が特に目を引いた。一人は小柄で愛らしい体型ながら、自身の体格に全く似合わない巨大な長槍を担ぎ、槍の刃は夜の闇の中でかすかに光っていた。もう一人は優美な姿で、手に持つ騎士の剣は監獄内で燃える炎を映し、冷たく無慈悲な輝きを放っていた。


「進め!」

「うおおおおお!」

 低く響く命令の声とともに、すべての黒衣の者たちが矢のように飛び出し、監獄前の空き地に突進した。

 衛兵たちはそれを見て、素早く防衛線を張り、両手で魔法の杖や符咒を掲げ、夜風に呪文の詠唱と怒号が混ざり合った。一瞬にして、元素の力が空き地で炸裂した――

 火球が灼熱の波を伴って襲いかかり、地面から岩石の弾が飛び出し、重々しい圧迫感を放ち、氷の錐が刃のように空気を切り裂き、死の軌跡を描いた。戦場全体が、元素がぶつかり合う煉獄と化した。

 最前列の黒衣の者は振り返り、仲間が全員揃っていることを確認すると、ゆっくりと右手を上げ、刀の鞘を押さえ、ゆっくりと長刀を収めた。

「カチャ――」

 刀が鞘に収まる澄んだ音が、喧騒の戦場でひときわ鮮明に響き、まるで殺戮の合図のようだった。彼は身を低くし、両足で軽く地面を蹴り、息を死水のように静め、血に飢えた野獣が今にも飛びかかるかのように力を蓄えた。

 その時、数人の衛兵が一斉に飛びかかり、人数の優位で敵を抑え込もうとした。

「抜刀斬!」

 刀の光が閃き、目が眩むほど眩しく、しかし一瞬で消えた。次の瞬間、血が噴水のようにほとばしり、数人の衛兵の体がその場で硬直し、目を見開いたまま、何が起こったのか理解できていないようだった。やがて喉から血の線が滑り落ち、彼らは音もなく地面に倒れ、足元の石板に鮮血が広がった。

 最初の攻撃が下され、乱戦が本格的に始まった。

 二十人余りの黒衣の者たちが、百人を超える衛兵の群れに恐れることなく突入した。刀と剣の光が空中で交錯し、炎と氷の欠片が舞い、血が雨のように降り注ぎ、暗紅色の泥濘と化した。

 叫び声、怒号、不甘のうめき声が交錯し、血なまぐさい交響曲を奏でた。監獄の内外は混乱と死に席巻され、夜の静寂はすでに失われ、果てしない戦意と殺戮だけが残った……

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