13. 安心をもたらす顔(1)
令人安心的面孔
意識が徐々に混沌から浮かび上がり、私はゆっくりと目を開けた。視界に飛び込んできたのは、弱い朝の光で、窓の隙間から斜めに部屋に差し込み、薄暗い空間に冷ややかで暖かなニュアンスを加えていた。
私は目をぱちぱちと瞬かせ、頭が濃い霧に包まれたようにぼんやりとしたまま、視線を部屋の隅に向けた。
グレムは壁の隅にもたれて座り、両手を膝に重ね、全身から落ち着いた威圧感を放っていた。彼の目は血走り、部屋のドアをじっと見据え、まるで飛びかかる準備を整えた猛獣のように、いつでも侵入者を仕留める構えだった。ぼやけた視界の中でも、私は彼が一晩中目を閉じていなかったことをはっきりと察知した。
「一晩中、守ってたのか?」
私は嗄れた声で口を開いた。
彼は振り返り、黙って私を一瞥し、頷くと、立ち上がって手を差し伸べ、私をベッドから起こした。
「大丈夫だよな?」
彼の手のひらは厚く力強く、確かな力を伝えてきた。私はなんとか体を支え、体の痛みが少し和らいだのを感じ、頷いた。グレムはそれ以上何も言わず、私を支えてリビングへ向かった。
ここは衛兵隊が隊長に提供する住まいだった。飾り気はなく、簡素だが快適だった。室内の配置は極めてシンプルで、無駄な装飾はほとんどなく、グレムが贅沢を好まないことが明らかだった。
昨日、副隊長が傷を処理した後で去り、残ったのはグレムと、彼が一晩中休まなかった姿だけだった。
テーブルには簡単な朝食が置かれ、私は座ると、考えもせずにむさぼるように食べ始めた。一口一口が、久しぶりの救済のように温かく、現実味があった。しかし、最後のパンが腹に収まると、心に抑え込まれていた疑問が飢えで覆い隠せなくなった。
私は顔を上げ、グレムの目をまっすぐに見つめ、低い声で言った。
「マルキス城で一体何が起きたんだ?」
彼はすぐに答えず、ただ静かに私を見つめ、目が曖昧に暗かった。沈黙が空気を発酵させるように広がり、私の忍耐を細い糸で引っ張るようだった。最後に、彼は深く息を吸い、ゆっくりと口を開いた――
「二週間前、ハンターギルドの副会長マルコムが外部勢力と結託し、マルキス城に対するクーデターを計画したんだ。」
シンプルな一言が、突然降り注ぐ寒氷のように空気を死の静寂に凍りつかせた。私の息が少し止まり、体が無意識に固くなった。
その夜、城全体が混乱と恐怖に包まれた。何も知らない市民たちは窓や戸を固く閉ざし、通りから聞こえる戦闘の音や喧騒を遮断しようとした。しかし、血と死は夜の闇に静かに広がり、どんなに耳を塞いでも、殺戮の気配は無視できなかった。
マルコムの部下と城主トムリンの側近たちが激しい戦闘を繰り広げた。
本来なら、双方の勢力は互角のはずだったが、情勢は急速に傾いた。マルキス城の衛兵隊――秩序を維持すべき武装勢力は、城内が混乱に陥った時、静かに動かず、反乱を鎮圧することも、象徴的な抵抗さえもしなかった。
衛兵隊の沈黙が、両者の均衡を崩す鍵となった。
唯一、必死に抵抗を続けたのはイヴェットの家族だった。彼らはためらうことなく戦場に飛び込み、どんな犠牲を払ってもマルコムの勢力に立ち向かった。勝算がほとんどないとわかっていながら、彼らは剣を抜いて戦うことを選んだ。しかし、敵と我々の力の差はあまりにも大きく、この不均衡な戦いは結局、敗北を覆すことができなかった……
イヴェットは混乱の中で戦死した。トムリンとエリザは捕らえられ、今、マルキス城全体がマルコムの手に落ちた。
私は呆然と座り、胸の奥で怒りと無力感が絡み合い、思考が無数の破片に砕かれた。指の関節が力を入れすぎて白くなり、歯を食いしばり、額の青筋がわずかに脈打った。
マルキス城が……陥落した。
「くそくらえ、マルコム……」
私は歯ぎしりし、怒りが理性を飲み込みそうだった。手に持っていたスプーンが掌の中で変形し、「パキッ」と鋭い音を立て、ついに圧力に耐えきれず二つに折れた。金属の破片がテーブルに落ち、くぐもった音を立て、抑え込んでいた怒りがようやく吐き出す場所を見つけたようだった。
「そんなに心配するな。」
グレムの声は落ち着いていたが、まるで冷水をかぶせられたようだった。私は勢いよく顔を上げ、怒りが湧き上がった。
「心配するなだと!?」
私は一気に立ち上がり、彼の襟を掴んだ。椅子の脚が床を擦り、耳障りな音を立て、部屋の空気が一瞬で凍りついた。自分が衝動的すぎることはわかっていたが、この瞬間の怒りは感情を抑えきれなかった。
グレムは動じず、私の怒りに眉一つ動かさなかった。ただ、厚い手のひらを上げ、私の手の甲を軽く叩いた。
「アメリン先生が反攻の準備を進めている。」
彼の声は低く、揺るぎない確信に満ち、まるで鉄や石に刻まれた約束のようだった。
「婆さん?」 私は目を大きく見開き、声を抑えて尋ねた。口調には切実な希望が混じっていた。
「彼女は今どこに?」
「引退ハンターの村で準備を進めている。もしかしたら、すでにマルキス城に潜入しているかもしれない。」
彼の言葉が終わらないうちに、私はためらうことなく口を開いた。
「今すぐ出発する。」
グレムはすぐには答えず、首をわずかに傾け、視線をゆっくりと私の脚に落とした。
「せめて傷が治るまで待てよ。」
私は彼の視線を追い、昨夜負傷した脛を見下ろした。治癒術のおかげで矢の傷は癒え、傷口には薄い瘢痕が残るだけだった。
だが、動くたびにわずかな痛みが残り、ここがかつて受けた重傷を完全に回復していないことを思い出させた。
理性はグレムが正しいと告げていたが、心の焦りは待つことを許さなかった。私は深く息を吸い、なんとか思考を落ち着かせ、目の前の男を見上げた。
「熊、俺を助けてくれるよな?」
私はわざと彼の子供時代のあだ名を使い、彼の感情を揺さぶろうとした。この行為は少し卑怯かもしれない。過去の絆を利用して圧力をかけるようだったが、今の私には他に選択肢がなかった。
グレムは一瞬動きを止め、眉をわずかにひそめ、遠い昔の記憶に引き戻されたようだった。彼はゆっくりと拳を上げ、低い声で言った。
「その言葉を待ってたぜ。」
私の胸の重圧が少しだけ軽くなり、まるで暗いトンネルの中に一筋の光が見えたようだった。前途は険しくても、少なくとも――私は一人じゃない。
私は弱々しい笑みを絞り出し、拳を上げ、彼と軽く拳を合わせた。
私たちは素早く準備を整え、出発の準備をした。
私は衛兵隊の制服に着替え、この装いは人目を避け、余計なトラブルを防ぐのに役立つものだった。グレムは腰の装備を整えながら、簡潔に言った。
「まず、ある人に会いに行く。それから出発だ。」
私は特に質問せず、黙って彼の後ろについてドゥーク城の通りを進んだ。
意外なことに、この制服の効果は想像以上だった。普段なら通りを歩く際、人の視線に気をつけ、疑いやトラブルを避けるため常に警戒していた。
だが今、その見えない圧力は完全に消え、私は堂々と群衆の中を歩けた。石畳の道を踏むと、周囲の通行人たちは遠慮がちに道を譲り、視線には畏敬と従順が込められていた。
私はふと気づいた。この制服は単なる変装ではなく、権威の象徴だった――そしてその権威は、普通の市民が簡単には逆らえないものだった。
私たちはいくつかの路地を通り抜け、目立たない旅館の裏口にたどり着いた。
グレムは慣れた様子でドアを押し開け、受付の者に軽く頷いた。相手は特に何も尋ねず、軽く頭を下げ、帳簿の整理に戻った。
私は彼について狭い廊下を通り、きしむ木製の階段を上って二階へ向かった。彼は古びた木のドアの前で立ち止まり、軽く二回ノックした――
「コン、コン。」
しばらくして、ドアの向こうから声が聞こえた。嗄れて、しかし温かみのある声だった。
「来たよ!」
私は一瞬立ちすくんだ。
その声……懐かしく、聞き覚えのある声だった。記憶の中の映像が突然浮かび上がり、私は思わず息を呑んだ。ドアノブが回る音がし、ドアがゆっくり開き、佝僂ながらもまだしっかりとした人影が現れた。
私たちの視線が交錯した瞬間、時間が止まったかのようだった。
彼女の表情が凍りつき、私もその場に立ち尽くした。まるで記憶の波に激しく洗われたようだった。
「アン婆さん?」 私の声は震え、自分が夢を見ているのではないかと疑った。
「ララ!」 彼女は驚喜に満ちた声で私の愛称を叫んだ。
次の瞬間、私が反応する間もなく、彼女は素早く歩み寄り、両手で私の手を強く握った。その力は大きくなかったが、抑えきれない切実さと感動が込められていた。
彼女の手のひらの温もりを感じ、心臓が一瞬強く震え、喉に酸っぱさがこみ上げた。私は数秒呆然とし、口を開きかけ、結局、彼女の風霜に耐えた手を強く握り返した。
「久しぶりだね、アン婆さん。」
私は低い声で話し、声には抑えていた感情がようやく出口を見つけたかのような震えが混じっていた。
アン婆さんの目元がわずかに赤くなり、私の腕を軽く叩き、部屋に招き入れた。
部屋の内装は質素で、数脚の木製の椅子が小さなテーブルを囲み、壁の隅には古びた旅行鞄がいくつか積まれていた。ここが彼女の長期の住まいではなく、一時的な拠点であることは明らかだった。
私と彼女はテーブルを挟んで座り、グレムは遠慮なく床にどっかりと座り、壁に寄りかかった。まるでこの気楽な姿勢に慣れているようだった。
「よかった……本当に良かった……」
アン婆さんは震える声でつぶやき、まるで独り言のように、あるいは私の無事を確かめるように呟いた。彼女は私の手を強く握り、その手のひらには年月が刻んだ皺がびっしりとあり、指先は少し冷たかったが、私の心をこれまでにない温かさで満たした。
「アン婆さん、俺は大丈夫だ。心配しないで。」
私は彼女を安心させようと、口元に無理やり笑みを浮かべた。
しばらくの挨拶の後、事の経緯が徐々にわかってきた。政変が起きた後、婆さんは私が巻き込まれて危険にさらされているかもしれないと気づき、すぐに人を派遣して大学城で私の行方を捜させた。
一方、アン婆さんは急いでドゥーク城に向かい、グレムと合流して次の行動の準備をしていた。ドゥーク城で予想より早く私を見つけたことで、彼女たちはようやく一息つけたのだ。
「アン婆さん、俺は本当に大丈夫だよ。」
私は低い声で言い、大学城からの逃亡劇を簡単に話した。アリーについては軽く触れるにとどめ、重要でない細かいことだけを話した。
アン婆さんは静かに耳を傾け、目に深い憂いがあったが、それ以上に安堵と慰めが感じられた。彼女は再び私の手を握り、まるでその感触で私の無事を確かめるようにしていた。
「ララ、会えて本当に良かった……」
彼女は涙を浮かべながら低くつぶやいた。
私は彼女を見上げた。この私を本当の孫のように見てくれる老女の目には、今、愛情と気遣いが溢れていた。いく年も離れていたのに、互いの深い絆は決して薄れていなかった。その瞬間、どんな嵐を経験しても、彼女の支えと守護があることを私は理解した。
アン婆さんが身をかがめ、ベッドの下から二つの木箱を一つずつ引き出した。彼女は軽く箱の蓋を叩き、振り返って私たちに言った。
「箱、ちょっと重いよ。運ぶの手伝ってくれる?」
「これ、何だ?」
私は疑問に思って彼女を見、視線が木箱とアン婆さんの間を行き来した。
アン婆さんは直接答えず、微笑んで頷き、開けてみるよう促した。私とグレムは互いに視線を交わし、同時に手を伸ばして箱の蓋を開けた。蓋が完全に開いた瞬間、私の息が止まった。
一つの箱には現金がぎっしり詰まり、緑と金の微光を放っていた。もう一つの箱には駆動石が満ち、まるで透き通った宝石のように眩い輝きを放っていた。この世界では、駆動石は希少なエネルギー源であるだけでなく、現金と同等の価値を持っていた。
「こんなにたくさん、どこから……」
私は吃りながら尋ね、視線は石と紙幣に釘付けのまま、信じられない思いだった。
「卒業した子たちが協力してくれたんだよ。」
アン婆さんは少し頭を下げ、声には誇りと感慨が混じっていた。彼女は私たちを見上げ、続けた。
「みんながグレムみたいに立ち上がれるわけじゃない。自分の生活や家庭を持ってる子もいるけど、それでも彼らは力を尽くして、これらの資源を集めるのを手伝ってくれたんだ。」
「……」
私は黙り込み、喉が何かに詰まったように言葉が出なかった。心に湧き上がる感情は言葉で表現できず、感謝と同時に罪悪感が押し寄せた。
アン婆さんは私の躊躇に気づき、前に進み出て、そっと私の手を取った。
「私がここに来たのは、グレムの助けを求めるためだけじゃない。これらの資金を集めるためでもあった。でも一番大事なのは、君を、ラファエル、迎えられたことだよ。」
彼女の口調は優しかったが、言葉には揺るぎない確信が込められていた。
「これで、君のお婆ちゃんもずっと心配しなくて済む。」
私の胸がわずかに震え、ゆっくりと頷いた。アン婆さんのこの言葉は、まるで無言の約束のようだった。どんな嵐が来ても、彼女は私たちのために空を支えてくれるのだ。




