12.突如現れた大きな手
突如其來的大手
私の周囲は、すでに二十人の敵に完全に包囲されていた。
路地にいた通行人はすでに逃げ去り、代わりに現れたのは死のような静寂を湛えた目だった。影の中で冷たく光る視線、血と殺意が空気に漂っていた。彼らの足音は軽く、しかし死神が一歩ずつ近づいてくるように、私の心臓を叩きつけるようだった。剣を持つ者、短剣を握る者、さらには重い鉄鎖を振る者までいて、金属がぶつかり合う不気味な音が響いた。
血が私の脛から滴り落ち、地面の土に染み込んだ。このまま立ち止まれば、死ぬのは私だ。
私は体を低くし、槍の穂先をわずかに下げて地面につけ、身を少し前傾させた。まるで飛び出す準備を整えた野獣のようだった。痛みは私の動きを制限していたが、生死の瀬戸際で、躊躇は命を落とす代償となる。
「うおお――!」
最初に突進してきたのは屈強な大男だった。彼は巨大な斧を頭上に振り上げ、咆哮しながら私に振り下ろした。重い刃が空気を切り裂き、強烈な圧迫感が私の頭上を襲った。
真正面から受けるわけにはいかない。
私は即座に横に転がり、巨斧が地面に叩きつけられ、ドン!という音とともに石が飛び散り、地面に深い亀裂が走った。彼が斧を振り直す一瞬の隙をつき、私は地面を蹴り、長槍を彼の腹部に突き立てた。
革の鎧が衝撃の大部分を防いだが、槍の穂先はそれでも肉に食い込み、彼は痛みに耐えかねて数歩よろめいた。歯を食いしばり、目が赤く充血し、まだ戦う気力を失っていないのが明らかだった。
だが、彼を気にかける暇はなかった。なぜなら――
左右から二人の刺客が同時に飛びかかってきたのだ! 鋭い短剣と匕首がほぼ同時に襲いかかり、避ける時間がない!
私は長槍を素早く横に薙ぎ、右側の刺客をまず押し退け、左足で地面を強く踏み込んで重心を下げた。短剣が私の顎をかすめ、わずか一髪のところで喉を切り裂くのを免れた!
私は手を振り上げ、槍の柄の端を強烈な力で左側の刺客の顎に叩きつけた――
「バン!」
彼の頭が激しく仰け反り、目が一瞬で焦点を失い、叫び声を上げる間もなく地面に倒れた。
一人片付けた。残り十九人。
だが、得意になる暇はなかった。次の殺意がすでに正面から迫っていた――
「シュッ!」
弓兵が再び動き、破空音が聞こえた瞬間、私の体は本能的に転がった。
しかし、脚の傷が動きを鈍らせ、矢の先が肩をかすめ、服を裂きながら皮膚を削ぎ取った。焼けるような痛みが全身を駆け巡り、まるで熱した刃が傷口に押し当てられたようだった。私は歯を食いしばり、荒々しい息をつきながら、わずかな停滞も許さなかった。
もう一瞬遅れれば、死ぬのは私だ。
「ハアッ!」
私は最後の力を振り絞り、手に握った長槍を強く投げつけた。
槍の穂先が風を切り、猛烈な勢いで一人の刺客の胸を正確に貫いた。彼は目を大きく見開き、体が震え、口の端から鮮血が溢れ、倒れると同時に、私は前に転がり、地面に落ちていた短剣を拾い上げた。
汗と血が混ざり合い、滴り落ち、手に持つ武器は滑りやすくなっていたが、そんなことを気にする余裕はなかった。
完全武装の長剣士が私をロックオンし、落ち着いた足取りで近づいてきた。剣の刃は冷たく輝き、森のような殺気を放ちながら迫ってきた。
これは真正面からの近接戦だ。派手な技も、逃げ道もない。
剣が横に薙がれ、私は即座に一歩後退し、ギリギリで避けた。彼の攻撃は疾風の如く、剣の動きは落ち着きながらも鋭く、私の武器は小さな短剣しかない――機敏さ以外に何の利点もなかった。
「キン! キン! キン!」
金属のぶつかる音が途切れることなく響き、私はほぼ本能だけでかわしていた。剣が体をかすめるたび、死の冷気が背筋を走った。
「くそ……!」
脚の傷が動きを鈍らせ、敵はそれにすぐに気づき、じりじりと距離を詰め、剣の勢いはさらに激しくなり、私の退路を完全に封じた。
「バン!」
剣の柄で強く押され、私の体は冷たい壁に激しく叩きつけられた。衝撃で内臓が震え、胸が詰まり、視界がぼやけた。
荒々しく息をつきながら、震える短剣を握りしめたが、反撃する力はもう残っていなかった。
周囲の敵が包囲網を狭め、冷たい光がきらめき、いつでも私を地獄に送る準備ができていた。このままでは、本当に逃げられないと悟った。
「どうやら……最後の賭けに出るしかないか……」
その瞬間――
「ピィ――!」
耳をつんざくような笛の音が路地に響き渡り、頭皮がしびれるほど鋭かった。直後、路地の入り口と奥の闇から、数人の人影が猛スピードで飛び出してきた――
「ドゥーク城の衛兵隊だ!」
「くそっ、なんでこんなに早く来たんだ!?」
刺客たちは一瞬で散り散りになり、互いに視線を交わすと、ためらうことなく迎撃を始めた。路地に再び喧騒が響き渡ったが、今度は私が標的ではなく、衛兵隊と刺客たちの乱戦が始まった。
私はその混乱の中、なんとか壁にすがって立ち上がり、額の冷や汗を拭い、口元に苦い笑みを浮かべた。目の前の長剣士が微動だにしなかったからだ。
彼は冷たい視線で混乱する状況を一瞥し、再び私に視線を固定した。まるでこの狩りの標的は最初から最後まで私一人だけであるかのようだった。
彼はゆっくりと近づき、長剣が微かな光の中で凄惨な輝きを放ち、まるで死神が鎌を振り上げ、私の命を刈り取る準備をしているようだった。
もう逃げ道はなかった。
「ドン!」
その時、背後から突然、耳を聾するような轟音が響いた。
振り返る間もなく、山のような太い腕が背後の壁を突き破った。
「ゴゴッ!」
レンガが砕け、埃が舞い上がり、その腕の筋肉は岩を削り出したかのように、青筋が浮き上がり、人間離れした力強さを放っていた。投げ斧が雷鳴のような勢いで飛び出し、目の前の長剣士を直撃した。
長剣士は反射的に剣を構えて防ごうとしたが、強烈な衝撃が剣を弾き飛ばし、斧は深く彼の肩に食い込み、鮮血が空中に咲き乱れた。彼は数歩よろめき、最後には地面にドサリと倒れた。
私は目を大きく見開き、頭の中が真っ白になった。
「何だこれ……?」
その巨大な腕は容赦なく、砕けた壁を突き抜け、私の肩を掴んだ。その力はあまりに強く、抵抗の余地などなかった。痛みで思わずもがいたが、その蛮力は一切の隙を与えなかった。
次の瞬間、腕が強く引っ張り、私はそのまま砕けた壁の中に引きずり込まれ、視界が真っ暗になった……
「隊長、いい大人がそんな泣き方して、みっともないですよ?」
低くからかうような女性の声が響いた。
「ううう……」
獣のような荒々しいすすり泣きが聞こえ、私は目をこじ開けた。視界はまだ少しぼやけていたが、ベッドの脇に立つ見覚えのある人影ははっきりと見えた――熊、グレムだ。
彼は、かつて祖母の家で一緒に過ごした幼馴染で、いつも笑いながら私とじゃれ合っていた少年だった。今、彼はドゥーク城の衛兵隊の隊長になっていた。
あの壁を突き破って私を救ったのは、まさに彼だった。
記憶の中のグレムは、陽気で騒がしく、少年らしい無邪気さを持っていた。だが、目の前にいる男は――高く屈強で、肩幅は広く、全身の筋肉は岩を削り出したように頑強で、どっしりと山のように落ち着いていた。鎧は冷たく金属の光沢を放ち、腰に佩かれた剣が下がり、もはや昔の野原を走り回るだけの子供ではなく、歴戦の戦士であることが明らかだった。
時の流れが私たちを変えたことに、感慨を覚えずにはいられなかった。
だが……今の彼は、めちゃくちゃに泣いていた。
グレムはすすり泣きながら、鼻水と涙で顔をぐしゃぐしゃに拭い、ほとんど顔を揉みくちゃにしていた。その滑稽な姿に、思わず笑いそうになったが、同時に言いようのない温かさが胸に広がった。
「もういいよ、熊。」
私は弱々しい声で、呆れたように言った。
「ううう……」
私の声を聞いて、グレムはさらに激しく泣き出し、まるで何年分もの感情を一気に吐き出すようだった。
その横で、短髪の女性が私の傷を手際よく処理していた。彼女の動きはキビキビとして、包帯を巻く手つきは一切無駄がなく、長年の訓練を受けたプロだと一目でわかった。反応や態度からして、グレムの部下だろう。
彼女はグレムの泣き声には構わず、冷たく一言付け加えた。
「次は矢を抜きますよ。かなり痛いですよ。」
その口調は淡々と、まるで日常業務をこなしているか、あるいは避けられない試練を私に通告するかのようだった。
私は深く息を吸い、苦労して頷いた。
その時、大きな手がそっと私の手を握ってきた。
グレムだった。
彼の手は荒々しく広く、まるで熊そのものだったが、今この瞬間、異常な安心感を与えてくれた。
「……やれ。」
「はい。」 短髪の女性は簡潔に答え、ためらうことなく矢を抜いた。
「うううあああ――!」
痛みが津波のように押し寄せた。
傷口から炸裂する激痛が、まるで引き裂かれるような焼ける感覚となって頭に突き刺さった。私はグレムの手を死に物狂いで握り、指の関節が白くなるほど力を込めた。歯を食いしばったが、叫び声は抑えきれず、全身が張り詰めた弓弦のように震え、額には冷や汗が滲み、息が荒くなった。
「終わりました。」
「……」
短髪の女性は短くそう告げ、血にまみれた道具を置いた。私はベッドにぐったりと倒れ込み、息を切らしながら、全身がまるで水から引き上げられたように脱力していた。指一本動かすのも億劫だったが、なんとか片手を上げ、弱々しく親指を立てた。
彼女は眉を少し上げ、意外そうな表情を見せたが、何も言わなかった。グレムは鼻をすすり、ようやく小さな笑みを浮かべたが、目元はまだ赤く濡れていた。
「副隊長……俺の弟に治癒術を使ってやってくれないか?」
グレムの声は少し落ち着きを取り戻していたが、話し方は相変わらずゆっくりだった。
「隊長がそう言うなら、断れませんね。」
副隊長は軽く笑い、部屋を出て行った。
彼女が去った隙に、私は力を振り絞ってグレムの腕を掴み、目をしっかりと彼に固定した。
「マルキス城は無事なのか?」
私の声は嗄れていたが、視線は彼を強く見つめていた。
グレムの表情が一瞬で暗くなった。
彼は少しの間黙り込み、視線を落とし、手を軽く握りしめた。まるでどう切り出せばいいか考えているようだった。結局、彼は首を振って低く言った。
「詳しい話は後でな。」
「今だ!」
私はほとんど叫ぶように声を上げ、心臓が激しく鼓動し、体内で焦りが炎のように燃え上がった。私はもがきながら起き上がろうとし、彼の襟に手を伸ばしたが、グレムに簡単にベッドに押し戻された。
「今はお前は休まなきゃいけない!」
グレムの力は私の記憶よりもはるかに強く、ほとんど労せず私を抑え込んだ。彼の口調には怒気が含まれていたが、それ以上に心配と強い意志が感じられた。
私は力なく崩れ落ち、心臓が巨大な石に押し潰されたように息苦しかった。視界が徐々にぼやけ、グレムの顔が目の前に映るが、彼の顔には隠しきれない憂いが浮かんでいた。
一体何が起きたんだ……
その時、副隊長が戻ってきた。彼女は熱いスープの入った碗を持ち、表面には細かく刻まれた薬草が浮かんでいた。濃厚な香りが部屋に広がった。
「スープを飲みなさい。体力を補充すれば、治癒術の効果も上がるよ。」
彼女は落ち着いた口調でそう言い、碗を私に差し出した。
心は焦っていたが、今の体の状態ではもう持ちこたえられなかった。私は碗を受け取り、苦労して数口飲み込んだ。薬草の苦味が舌に広がったが、同時にわずかな温かさも感じた。
飲み終えると、副隊長は短い杖を取り出し、治癒術を始めた。
温かいエネルギーが全身に流れ込み、まるで春のそよ風が傷口を優しく撫でるようだった。痛みが徐々に和らぎ、疲れた筋肉が緩み、張り詰めていた神経がほぐれ始め、意識もどんどん朦朧としていった……
「熊……」
睡魔に襲われる最後の瞬間、私はまだ諦めきれずに小さく呟いた。
結局、疲労には抗えず、私の意識は闇に沈んだ。




