新たな夜明け
私の意識が途絶えた後、残された仲間たちは、制御者の残党を掃討し、都市を解放した。ミドリの懸命な治療と、サキをはじめとする仲間たちの献身的な看病のおかげで、奇跡的に私は一命を取り留めることができた。
制御者の支配から解放された都市には、少しずつ活気が戻り始めた。生存者たちは再び集い、協力して生活を立て直そうとしていた。ミドリの医療知識は、多くの人々の命を救い、サキは、その勇敢さと身軽さで、新たな希望の象徴となっていった。
そして、アカリの遺志は、皆の心に深く刻まれていた。彼女の燃やした炎は、恐怖を払い、未来を照らす灯火として、語り継がれていった。
数年後、都市はかつての賑わいを取り戻しつつあった。崩れた建物は修復され、新たなコミュニティが形成された。子供たちの笑い声が響き、人々の顔には、穏やかな表情が戻ってきた。
私は、都市を見下ろす丘の上に立ち、その光景を静かに見守っていた。体にはまだ傷跡が残っているが、生きている喜びを深く感じていた。私の「視る」力は、以前よりもさらに研ぎ澄まされ、より鮮明な未来を捉えることができるようになっていた。そして、未来をほんの少しだけ変える力も、わずかながら制御できるようになっていた。
隣には、成長したサキが立っている。彼女は、今やコミュニティの中心的なリーダーの一人となり、人々を力強く導いている。
「あの時、あなたがいてくれなかったら…今の私たちはどうなっていただろうか」
サキは、遠い目をしながら呟いた。
私は、優しく微笑んだ。
「私たちは、一人では生きていけなかった。アカリの勇気、ミドリの献身、そして、皆の強い意志があったからこそ、ここまで来られたんだ」
ふと、空を見上げると、一羽の鳥が、青い空を自由に羽ばたいていた。
その時、私の目に、数年後の未来の映像が流れ込んできた。それは、都市がさらに発展し、緑豊かな美しい場所になっている光景だった。人々は笑顔で暮らし、子供たちが希望に満ちた目で未来を見つめている。そして、その中心には、アカリの炎を象った、巨大なモニュメントが建てられていた。
私は、その未来を確信した。アカリの犠牲は決して無駄ではなかった。私たちの戦いは、確かに実を結び、新たな夜明けをもたらしたのだ。
遠くから、子供たちの歌声が聞こえてくる。それは、かつて私がアカリに歌って聞かせた子守唄だった。
私は、サキと共に、ゆっくりと丘を下り始めた。足取りは軽く、心は希望に満ちていた。ゾンビが溢れた世界は終わった。私たちが生き抜き、戦い抜いた先に、新しい未来が待っている。
空はどこまでも青く、私たちの未来を祝福しているようだった。これは、終わりではない。始まりなのだ。希望に満ちた、新たな世界の。