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第一部 三章 無明を照らす灯火 ノアの戦い5

父さんと兄さんが街へ旅立ってから、村に残された僕たちは、ただ彼らの無事と、助けが来ることを祈るしかなかった。


村の状況は、依然として厳しかった。負傷者の多くは動けず、薬師のおじいさんも寝る間を惜しんで看病にあたっていたが、薬草は日に日に底をついていく。村全体に暗い影が落ちていた。時折、森の方から聞こえる獣の遠吠えに、人々は装甲トロールの再来を恐れて怯えた。


そんな中、僕はほとんどの時間を、集会所で寝込んでいる母さんのそばで過ごしていた。母さんは一番の重傷者の一人で、吹き飛ばされた際の打ち身が酷く、意識は朦朧としたまま、時折苦しそうな呻き声を漏らしていた。その姿を見ていると、胸が締め付けられるようだった。


(僕にできることは……)


僕は、寝込んでいる時に掴みかけた、マナで体を治すという可能性に賭けてみることにした。無謀かもしれない。でも、何もしないでいるよりはずっといい。

僕は母さんの手を握り、目を閉じて意識を集中した。


(母さんの体の中のマナ…乱れている…弱々しい…これを、僕のマナで整えることはできないか…?)


自分の体で試したように、母さんの体の中のマナの流れを「イメージ」し、それを正常な状態に戻す「手順」を頭の中で組み立てようとする。


(傷ついた部分…小さな粒が壊れている…これを元通りに…血の流れが滞っている…これを押し流す…痛みを感じる糸の働きを、少しだけ鈍らせる…)


僕の持てる限りの集中力と、断片的な知識、そして「母さんを助けたい」という強い想いを込めて、自分のマナをほんの少しだけ、母さんの体に流し込んでみる。

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