第一部 三章 無明を照らす灯火 救いの手2
その時、父さんは何かを決意したように、ゆっくりと体を起こした。まだ足元がおぼつかない様子だったが、その背筋には、いつもの温厚な父さんとは違う、厳しい覚悟のようなものが感じられた。
父さんは、集まっていた村の主な大人たち――動ける自衛団員や、村長ゲオルグさんに向かって、はっきりとした声で言った。
「このままでは、助からない者が出てしまう。村の薬では限界がある。私が…街へ助けを求めに行く」
「街へ!?」
「アレンさん、しかしあなたのその体では…!」
大人たちがざわめく。一番近くにある「大きな街」、砦のあるウィルバーグという街だったはずだ。そこまでは、歩いて丸二日はかかる。しかも、道中には森があり、どんな危険があるか分からない。ましてや、今の父さんの体では…。
「私が行くしかない」
父さんは、きっぱりと言った。
「幸い、私は腕と顔をやられただけだ。足はまだ動く、休めばまた魔法も使える。だが、一人では心許ない…」
父さんは、集会所の入り口で心配そうに様子を見ていたカイア兄さんに向かって、力強い声で言った。
「カイア、お前も来てくれ。道中の手伝いと大事な役目がある。万が一、私に何かあった時、お前が村に戻り、状況を伝えるんだ。」
「えっ…俺が? 」
カイア兄さんは驚き、一瞬戸惑ったような顔を見せた。
父さんに何かあった時のための役目。それは兄さんにとって、より重い責任に感じられたかもしれない。しかし、兄さんはすぐに村の惨状と父さんの決意を理解したようだった。顔を引き締め、真っ直ぐに父さんを見つめ返すと、力強く頷いた。
「……わかった、父さん。俺が行くよ。必ず、父さんの伝言を村に持ち帰る。…ううん、父さんと一緒に、助けを連れて帰ってくる!」
その声には、もう子供っぽさはなく、託された役目を果たそうとする覚悟が宿っていた。




