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第一部 序章 病弱な少年と、村の守り神5
体調の良い日を見計らっては、「守り神様」の場所へ通うようになった。
来るたびに、まず祭壇に手を合わせ、それから心の中で守り神様に断りを入れて、観察とスケッチを繰り返す。スケッチブック(と言っても、父さんがくれた古い帳面だけど)と炭のペンを持って、像の姿を様々な角度から描き写し、気づいたことをメモする。時には、そっと表面に触れてみたり、落ちていた枝で軽く叩いてみたり
(もちろん、これ以上壊さないように、そして守り神様を驚かせないように、細心の注意を払って)。
誰にも言えない、僕だけの秘密の時間。
病弱で、どこか周囲から浮いていた僕が、初めて見つけた心から没頭できること。
僕はこの時、まだ知らない。
このボロボロの「守り神様」への好奇心が、僕をこの世界の深い謎へと導く旅の始まりになるなんてことを。
ただ、今は目の前の未知なる存在に夢中だった。
その静かな、壊れかけた佇まいの奥に、何かとてつもない秘密が隠されているような気がしてならなかったから。