第一部 三章 無明を照らす灯火 守り神様5
その時、装甲トロールは、目の前の執拗な敵と、遠くの高台で騒いでいる人間たちを憎々しげに見比べた。そして、このままでは埒が明かないと判断したのか、あるいはこれ以上の消耗を嫌ったのか、大きく吼えると、棍棒を一振りして守り神様を牽制し、その巨体を翻した。
「グルルゥッ!」
低い威嚇の唸り声を残し、トロールは森の中へと逃走を始めた。木々を薙ぎ倒しながら、復讐を誓うかのような禍々しい気配を残して、あっという間にその姿は森の奥へと消えていった。
(逃げた…!?)
安堵よりも先に、驚きが僕たちを襲った。
トロールの姿が見えなくなると同時に、守り神様の頭上で弱々しく明滅していた輪の光が、プツリと完全に消えた。全ての力が抜けたかのように、その巨体はガクンと膝をつき、前のめりに倒れ込みそうになるのを辛うじて堪え、完全に動きを止めた。まるで、糸の切れた操り人形のように。
後に残されたのは、張り詰めた戦いの後の、重い静寂だけだった。
そして、目を転じれば、そこには戦闘の爪痕が生々しく残る、凄惨な光景が広がっていた。
村の入り口付近の家々は壁が崩れ、屋根が吹き飛んでいる。そして何より、父さん、母さん、そして自衛団の仲間たちが、皆、地面に倒れ伏し、呻き声を上げているのだ。装甲トロールの攻撃を直接受けた者はもちろん、吹き飛ばされて打ち付けられた者もいる。誰もが無事では済まなかった。
「父さん! 母さん!」




