第一部 二章 光る輪 日常3
「あの時は本当に肝を冷やしたぞ。ゲルダが巨大な岩トカゲの尻尾に気を取られて、真正面からの突進を見逃したんだからな!」
父さんが大袈裟な身振りで話すと、母さんがむっとした顔で言い返す。
「あら、あなたこそ! あの洞窟で、罠にかかった私を助けようとして、自分がもっと深い落とし穴に落ちたじゃない! あの時の情けない顔ったら!」
「そ、それは状況が…! 君が無茶するからだろ!」
「なんですって!」
二人の言い合いはいつものことだ。僕たちはくすくす笑いながら聞いている。でも、二人は決して本気で怒っているわけじゃない。話の最後には、必ずお互いのすごいところを褒め合うのだ。
「まあ、でもゲルダのあの時のパワーはすごかった。岩トカゲを真正面から受け止めて、私に弱点を狙う時間を作ってくれたからな。あの連携があったから勝てたんだ」
「あなただって、あの落とし穴から魔法で無理やり飛び出してきて、魔法でトロールの攻撃をそらせてくれたじゃない。あの冷静な判断がなかったら、私は潰されてたわ」
失敗談で笑わせながらも、最後は互いを尊敬し、認め合っているのが伝わってくる。そんな二人の話を聞くのが、僕たち兄妹は大好きだった。
特に、母さんが敵の注意を引きつけている間に、父さんが冷静に弱点を見抜いて魔法で仕留める、という連携の話は、何度聞いてもワクワクした。
*
そんな穏やかな夜の後、僕の体調はまた崩れた。




