第一部 二章 光る輪 日常1
僕たちが守り神様のために「小さなお家」を作ってから、しばらく穏やかな日々が続いていた。村はずれに建てた手作りの建物――僕が心の中で「お社」と呼ぶようになったそれは、幸い風雨にも耐え、静かに守り神様を包んでいる。
僕の体調も比較的安定していて、そんな日は午前中に父さんの授業を受け、午後は決まってお社に通った。守り神様を観察し、スケッチブックに記録を残す。お社があるおかげで、雨の日でも濡れる心配なく、じっくりと守り神様と向き合えるのが嬉しかった。
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父さんは村のみんなにいろんなことを教えていた。その授業は、村の集会所で行われる。僕やカイア兄さん、ミア、それに村の他の子供たちが数人集まって、文字の読み書きや簡単な計算を教わるのだ。時々、父さんは魔法使いの経験から、魔法についても話してくれた。
「いいかい、魔法っていうのは不思議な力だけれど、誰にでも簡単に使えるものじゃない。一番大事なのは、強く『こうなってほしい』と願う心、そして頭の中でその結果をはっきりと『イメージ』することなんだ」
父さんは、子供たちにも分かるように、ゆっくりと言葉を選びながら話す。
「例えば、ここに小さな火を起こしたいとする。ただ『燃えろ』と願うだけじゃダメなんだ。指先に小さな火種が生まれて、それがパチパチと音を立てて、だんだん大きくなっていく様子……その熱さや明るさ、匂いまで、まるで目の前で起きているかのように、ありありと思い描く。それが『イメージ』するということだ」
父さんはそう言って、指先にほんの小さな、頼りない灯火を灯してみせる。子供たちから「おぉー」と歓声が上がる。
「詠唱、つまり呪文はね、そのイメージを助けたり、周りのマナを集めやすくしたりするためのおまじないみたいなものだと言われている。言葉そのものより大切なのは、あくまで術者の心とイメージ。だから『イメージできない魔法は使えない』って、昔から言われているんだよ。色々なものを見て、経験して、想像力を豊かにすること。それが、魔法使いへの大事な一歩なんだ」




