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第一部 一章 僕らの秘密基地 雨音と、石像の涙2

見たこともない四角い箱が光ったり、鉄の塊が空を飛んだり、数字や記号が複雑に並んだ数式だったり……。そんな、この村の生活とは全くかけ離れた、現実感のないイメージ。それが何なのか、どこから来るのか、僕にはさっぱりわからない。でも、その断片に触れるたび、言いようのない懐かしさと、同時に強い違和感を覚えるんだ。まるで、自分が自分じゃないような、そんな奇妙な感覚。



季節は少しだけ巡り、畑の緑が濃さを増した頃。

僕は相変わらず、体調の良い日を見つけては、村はずれの「守り神様」――あの不思議な人型の像の元へ通っていた。


来るたびに、まず祭壇に手を合わせる。「今日も来ました。少しだけ、見させてくださいね」と心の中で唱えてから、帳面と炭ペンを取り出す。

守り神様のスケッチは増える一方だ。正面、横、後ろ、欠けた指先、歪んだ表面、後頭部の輪っか……。気づいたこと、疑問に思ったことを書き添える。誰に見せるでもない、僕だけの記録。この世界の他の何よりも、僕の興味を強く惹きつける謎の塊。それが、あの守り神様だった。


初めて間近で見た時から、特に気になっていた部分がある。

その像は、両腕に何か奇妙なものを取り付けていた。

右手には、鈍い銀色に光る、直角に曲がった分厚い金属の棒のようなもの。何かを支えたり、固定したりするための部品だろうか? でも、角は妙に鋭利に見えるし、全体がひどく頑丈そうだ。まるで、間に合わせの剣か何かのように、不格好に握られているように見える(L字ブラケット、という言葉が頭の片隅で囁いたような気がした)。

左腕には、もっと大きな、円盤状の金属部品が取り付けられていた。周囲にはゴツゴツとした歯がたくさんついていて、まるで水車のようだ(スプロケット、という言葉が頭の片隅で囁いた気がした)。 これもひどく分厚く、頑丈そうで、まるで盾のようだ。


どちらも、像本体と同じように古びて傷だらけではあったけれど、明らかに後から取り付けられたような違和感があった。なんでこんなものを? どこから持ってきたんだろう? 頭の中の記憶の断片がざわつくけれど、答えは見つからない。ただ、


「なんだろう、これ……でも、何か知ってるような気がする……」


という、もどかしい感覚だけが残る。

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