『ブランコは今日も錆び付いて悲鳴をあげる』
昔から揺れるものが大好きで、ゆりかごに始まり、風に揺らされる風鈴や、ギシギシ音を立てて揺れるブランコを、ただじっと眺めているのが幼い僕の日常だった。僕はそれがきっと不安定ではかなげな物体として、揺れるという動作を愛していたのだと思う。
揺れるものが好きなのは今でも変わらないが、高校生になった僕は、揺れる物体よりもさらに見ていて面白いものを見付けてしまった。それは正確に言えば見えるはずの無いもので、だからこそ覗き込む為に存在する僕の目が、渇いた喉を潤すために必死になってオアシスを探し出すように、その見えないもの見たいと求めるのだ。
錆び付いたブランコのように悲鳴をあげながら揺れる人間の心は、常に不安定で、実にはかなげだ。愛に揺れたり、金に揺れたり、情に揺れたり、嘘に揺れる。揺れ動く感情自体を制御出来ずに困惑する人間が、僕は妙に愛おしいのだ。
神谷真之。鏡に映る君はどうだ。今何を考えている。考えてもいない事を考えているのでは無かろうか。僕を知っているだろう? 当たり前だよな、鏡に映ったって、君はどうにも僕でしか無いらしいから。
僕も揺れるなら、君も揺れ動くだろう。とりあえず人間なんだから、その悲鳴を響かせて、誰かが止めてくれるのを待つべきなんだよ。
――End――
どうも、呟木心葉です。
最後まで読んで頂き、ありがとうございました。
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本当にありがとうございました。
……では、また。
By.つぶりん