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乱世乙女の反撃  作者: violet
8/59

王太子も曲者

「殿下、ここは女性二人の部屋、夜も遅いのでお帰り下さい」

公爵令嬢にあるまじきストレートな言葉で、サラがレイディンを追い返そうとする。


「これが本当のサラ嬢か」

両手を組んで、、レイディンが楽しそうに言う。


「本当の意味が分かりかねますわ。誰でも多面性があるものですわ。

今の殿下のご様子は、王宮でお会いした王太子殿下とは違いますわ。でも、それも王太子殿下ご自身でしょう?」

サラは笑顔を作ると、言葉のトーンを変え、指の先まで神経を尖らせて優雅な仕草で、高位貴族らしく言った。


「これはご令嬢に配慮が足りず失礼した。明日、正式に訪問するとしよう」

王太子の正式な訪問、先触れがら始まり、大量の護衛と侍従を引き連れて来る、と言うのだ。

「いいか?」

勝利宣言の如くレイディンが言うのが、サラには悔しい。

「お忍びでいらした殿下など、人知れず葬ることが出来ましてよ」

昨日までなら、こんなこと言えなかった。

クロエに出会って、サラは変わった。


「それは王に成って寿命を迎えるより、楽しい死に方のようだ」

命を大事にする人間なら、こんな所に一人で来はしないだろう。

見つめ合っていたサラとレイディンだが、先に目を逸らしてのはサラだ。

「殿下がこんな方とは、知りませんでした」


「それは僕の方こそ驚いている。公爵令嬢の君がこんな所にいるんだから。

しかも君が手にしたのは、この国を壊す程の力を持っている聖獣殿だ。僕を殺すぐらい容易いだろう」

自分の事を言われたクロエは、フフン、と機嫌がいい。

「サラ、こやつよく分かっておるではないか。しかも、こやつの魔力はサラより強いぞ」


もう王太子を味方にするしかない、サラは覚悟した。

「今日あったことをお話します」

居酒屋で話したより詳しく、出来るだけ冷静に話そうとしたが、クロエが(いら)ついていった。


「その男がサラを殺そうというのか。

サラが生きていないと、極上の魔力が摂れぬではないか」

クロエにとって食事の質が問題らしい。


「サラ嬢、聖獣殿、どうか僕を貴女達の陣にお入れください。

我が弟とはいえ、聖獣殿の誓約者を裏切った事は許せる事ではありません」

レイディンは、クロエを(なだ)めながら希望を言う。

王子妃教育を受けたサラも、レイディンの考えは理解できる。

王にとって国が最優先なのだ。

王太子として育ったレイディンは、聖獣であるクロエを懐柔する為には何でもするだろう。

クロエは国にいれば頼もしい結界であるが、他国に行けば恐ろしい兵器になる。


「殿下の周りは信用できますか?」

侍女に裏切られたサラは、疑ってかかっている。


「僕が選んだ側近だ」


「そう・・」

サラは、それだけ言うと部屋にあったメモを手に取りサインをする。

「これを、オーデア公爵に渡して欲しいの」


レイディンはゆっくり立ち上がると、メモを受け取った。

「たしかに。

明日の夜、また来る」

入って来たように、窓に足を駆けると、ヒラリと外に消えた。


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