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乱世乙女の反撃  作者: violet
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狙われる王太子

王族の結婚には純潔を求められる。

だから、シャロンもサラも婚約期間が長くとも、そういうことはなかったのだ。

シャロンがこうなったからには、他家に嫁ぐのは難しい。


兄の婚約者を寝取ったフィルベリーは上機嫌であったが、すでに王太子との婚約が解消されていると知って、シャロンの魅力が半減して見えるのだ。

だが、イーストラ侯爵家は王太子の婚約者として選ばれる家柄である。

オーデア公爵家とは違う魅力がある。

しかも、貴族令嬢としての醜聞を外に出さない為に、侯爵はフィルベリーに力を貸すだろう。


へーミング帝国の助けを借りねば、王位は奪い取れない。

だが、へーミング帝国だけではダメなのだ。

イーストラ侯爵ならば、王太子派閥の重鎮として情報を得る事はたやすい。


ドウバイン王国で、クーデターが起こり、王太子は第2王子に斬り捨てられたと聞く。

それは近い未来の自分の姿である、とフィルベリーは思うのだが、ドウバインの元王太子との密約が無くなったというのは痛手である。


「侯爵、これからの話をしようではないか。

侯爵はご令嬢を王妃にと、望んでいるのだろう?

ならば、次期王の名前が、レイディンではなく、フィルベリーの方が都合よかろう」

甘い汁をチラつかせて、フィルベリーはイーストラ侯爵を誘う。


イーストラ侯爵も、レイディン王太子が非のない娘との婚約を解消したのは腹立たしい。

「ですが、王太子殿下は軍部も執政部も掌握されてます」

王太子派であるイーストラ侯爵は、実情を把握している。娘が婚約解消されても、王太子派から離れるつもりはなかった。

近いうちに王位の譲渡が行われると考えられているからだ。現王の権力はすでに奪われているに等しい。

だが、娘がこうなると話は違ってくる。


「簡単だ、兄がいなくなればいい。ドウバイン王国のように」

ドウバイン王国の事が刺激となって、睡眠不足のフィルベリーは思考能力が落ちている。

ドウバインでは何年もかけて準備がされ、冒険者で鍛えたアロイスの剣技も魔力も群を抜いている、というのが理解できていない。


「殿下、王太子殿下の警備は万全です。

しかも、側近のラムゼルは前回の剣術大会の優勝者です」

イーストラ侯爵の意見はもっともである。


「毒があるではないか。

討ち取る必要なないのだ。

侯爵ならば、毒を入れる機会もあるだろう?」

毒ならばヘーミング帝国から融通がきくはずだ、とフィルベリーは言わない。ヘーミング帝国と内通していることは機密である。



「どこかで、王太子殿下の飲まれる茶葉を入れ替えることは、出来るかもしれません」

顎に手を置き、考えながら侯爵は答える。

娘を王妃にし、フィルベリー殿下ならば御しやすいだろうと考える。

「犯人が探れないように、遅効性の毒がいいですね」



侯爵は娘を連れて帰り、フィルベリーは疲れを取る為に横になった。

眠れはしないが目を閉じて休養すれば、身体はずいぶん楽になる。

もう何日睡眠が取れていないのか、考えようとして放棄した。

考えても、寝れる訳ではない。


ドウバイン王国の新しい王太子は、前王太子が自分と交わした密約を見つけるだろうか。

やはり、自分が王位に就いたら、ヘーミング帝国とランデルウェア王国の両国側から攻め入るのが良いだろう。

フィルベリーはすでに兄を弑した後の事を考えて、高揚していた。



ヘーミング帝国からはすぐに毒が送られてきた。

帝国にとって、王位が誰であろうと大きな問題ではない。

国政を揺るがす事件が起きる事が重要なのだ。

ドウバイン王国は、王太子が変わり国の守りが強固になった。

今まで王家が暴走していたのを、新しい王太子と貴族が連携して体制強化に乗り出しているからだ。

帝国にとって、ドウバイン王国によりランデルウェア王国の方が攻め込みやすいと判断したのかもしれない。


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