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乱世乙女の反撃  作者: violet
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夜の王都はキケンがいっぱい

王宮から逃げ出した二人は、王都で宿を探していた。

夜遅くに荷物もない若い女二人で、着ているのは汚れたドレス。

怪しさ満点である。

しかも、サラの顔がバレるのを恐れて、高級宿には泊まれない。


「悪いね、部屋がいっぱいだんだよ」

これで断られるのは3軒目である。

宿の主人の態度に、機嫌が悪いクロエを(なだ)めながら、サラは宿からでる。


「大丈夫よ、王都にはたくさん宿があるから」

サラだって心細い。公爵令嬢として育って、こんなことしたことない。

だけど、負けたくない。

誰も逃がすものか、死んだと思わせる為にここに潜んでいなければならない。

「ほら、後で手を舐めさせてあげるから、人間に怒らないで」

クロエが暴れたら大騒動になる、王都は半壊、自分が生きていることもバレる。


「サラ、人間がこっち見ているけど、あれは男?」

何百年も地下の洞窟で寝ていたクロエには、何もかも知らないことばかりだ。

宿にとっては怪しい二人だが、やましい事をしようとする連中には女二人は好まれる。

「そうよ。ここではダメだけど、他の人がいないとこだと潰してもいいわよ。

クロエが一緒だと、心強いわ」

それは、サラの本心だ。

今までなら、夜の街で男がついてくるなど怖くて仕方なかったろう。

クロエが横にいるだけで大丈夫だと思えるし、聖殿の穴に落とされた時に、自分に害を与える人間にかける情けなど無くなった。


クロエがサラの腕を引っ張り、通りの物陰に身を隠した。

急に二人の姿が消えた事で、男達が追いかけようと走り出した。

どうやら男は5人いたらしい、二人が隠れている所を通り過ぎた最後の男の腕を、クロエが後ろから掴んで自分達が隠れている所に引きずり込んだが、身体の大半がはみ出ている。

先頭の男達は、最後の男がいなくなった事に気づかず道の先を確認に行った。


それは、あっという間の事で、男は声をたてる間もなかった。

クロエは男の顔を片手で掴むと、地面に叩きつけたのだ。

グチャ、という音で男の後頭部が潰れて血が横にはじけ飛び、男は動かなくなった。

「他のも、ヤルか?」

妖艶な美女だが、クロエは魔獣なのだ。

あまりの素早い行動で、あっけに取られて見ていたサラは、首を横に振った。

「見せしめには十分よ。それより、男達が戻って来る前に行こう」

サラとクロエの姿を見つけられなかった男達は、すぐに戻って来てこの男を見つけるだろう。

サラは、クロエが返り血を浴びてないのを確認すると、クロエの手を取り反対方向に走った。

走りながら冷静に考えている自分に、サラは驚いていた。


もう人が死んでも、感じなくなった・・




「あんたたち、こっちおいで」

通りの居酒屋から声がかかる。見れば、恰幅のいい女性が扉を開けてサラ達を呼んでいる。

「事情がありそうだけど、こんな時間にこんなとこにいちゃいけないよ」


宿も見つからない、ならず者達に目を付けられ、この女性がいい人か、悪い人かなど分からないけど、いざとなればクロエがいる。

「クロエ、あの女性の所に行こう」

街の様子に興味津々なクロエの手を引いて、サラは居酒屋に入った。


「そこに座っておくれ」

女性が居酒屋の片隅のテーブルを指して、スープを置いた。

「うちの自慢のスープだよ。身体が温まるよ」


いろいろあって、食事を摂る余裕などなかったが、これは安全なのだろうか、と思っていると、クロエが躊躇なく飲み干した。

「上手いが、サラの方がウマ・・」

サラがクロエの口を手で塞ぐ。

絶対に誤解されるような事を言おうとした! サラの中で危険警報がなる。

クロエがサラの手を舐めて、サラが手を離して後ずさる。

何度されても、慣れるものではない。

「あー、上手い」


「アハハ!」

その様子を見ていた客から、笑い声が聞こえる。

どうやら、若い男のようだ。

「ごめん、ごめん、俺はアロイス・トランシー、傭兵とか冒険者とかしている」


「この人が、あんた達を見つけて、困っているようだって。俺が声かけるよりいいからって、アタシに頼んできたんだよ。お代はアロイスが払うから、遠慮しないでいいよ」

居酒屋の女将だという女性が、サラ達のテーブルに食事を置いていく。


サラが躊躇している間に、クロエは次々と口に入れていく。

魔獣のクロエを毒見と考えても無理があるが、大丈夫だろう、とサラもスープを口にはこぶ。


お腹が空いていたと感じた。


ポロリ、ポロリ、涙が頬をつたう。


「うわぁ、もったいない!」

向かいに座っていたクロエが、椅子を倒してサラに駆け寄る。


ペロン。


あまりに急な事で、サラはクロエを止められなかった。


「うわあああ!」

「きゃあ!」


注目を集めていただけに、皆に見られて声があがる。

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