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乱世乙女の反撃  作者: violet
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サラとアマンダの対面

アロイスの館には、サラとクロエしかいない。


アロイスとセイダは事後処理で、帰っては来ない。

むしろ王宮の制圧をしているぐらいである。

父王の病気は快復の見込みはなく、早々にアロイスが王位に就くことになるだろう。


「クロエ、アロイスがいなくて寂しい?」

サラが街で買った焼き菓子をテーブルに置くと、クロエがすぐに手を延ばす。

「寂しいは、ないかな。

地下では、ずっと一人だったから。サラが側にいるし。

どうして?」

人間のような感情は少ないが、一人の意味が分かるようになったクロエである。

誓約者のサラの存在は大きい。


サラがクロエの横に座って(もた)れ掛かる。

「サラは寂しいの?」

クロエに聞かれると、サラは首を横に振る。

「クロエがいるから、寂しくない。

クロエと一緒なら、このままどこに行っても大丈夫だと思う。

でも、今、何してるのかな、って思うの」


「レイディンか?」

クロエが、最近来てないよな、と続ける。


サラは頬を染めたが、肯定はしない。

「殿下には、婚約者がいるから」

会いたい、の言葉は言えない。

自分が、アマンダと同じような事は絶対にしたくない。


ウィン、とサラのペンダントが光って、レイディンとラムゼルが現われる。

「すごいタイミングだな、お前のことを話してたんだぞ」

クロエが手にした菓子を、レイディンに向ける。


ラムゼルがお土産のロールケーキの箱を差し出すと、クロエは凭れているサラをレイディンに差し出した。

「ほら、連れていけ。寂しがってたぞ」


「クロエ! そんな事、言ってない」

反論するサラの手を、レイディンが取る。


「私は、会いたかったよ。これなくって悪かった」

レイディンに言われれば、サラは顔を赤くするばかりだ。

「連れて行きたい所がある。

ランデルウェア王宮の騎士団の牢だ。そこに、アマンダ・ミモリアがいる」


アマンダの名前が出て、ビクンとサラが小さく震えた。

「大丈夫、私が一緒だ。

それよりも、ひどい状態なので覚悟した方がいい」

「どういうこと?」

サラがレイディンを仰ぎ見れば、流れた髪をレイディンの指がすくいあげる。


「フィルベリーが彼女を拷問した」


事情が分からないサラはクロエを見た。

「一緒に行くよ」

クロエは妖艶に微笑んで、ロールケーキの箱を置いた。



王宮に魔術封じがあっても、王太子レイディンはアクセスポイントに転移が出来る。

庭園の聖殿に転移すると、クロエの魔力で騎士団の地下に移動した。


アマンダは、尋問室から牢に移されていた。

床に横たわり丸くなってはいるが、その身体はピクピク震えて、血の匂いが充満している。

痛い、痛い、と呟く声が響いて、サラは眉をひそめた。


「アマンダ」

子供の頃は仲の良かった従妹の名前を呼んだ。

年の近い女の子同士ということで、アマンダは公爵家に出入りしていたのだ。


呼ばれて振り向いたアマンダの顔を見て、サラは悲鳴がでそうになるのを押さえた。

豊満な身体と、目元が自慢だった顔は、大きく腫れて、皮膚はどす黒くなっている。手は変な方向に曲がっている。

「サラ」

アマンダも、サラを見て腫れて細くなった目を見開いた。

「殺したはずだ。

あんたなんか、公爵令嬢だというだけで・・、」

アマンダは言葉途中で、ゴフゴフと咳と一緒に血を吐く。その血は褐色で、身体の中で出血しているということだ。

「あんたのせいで」


それはこっちのセリフと思いながら、サラは何も言わずにアマンダを見ていた。

「殿下、アマンダは治療を受けているの?」

サラが後ろに立つレイディンに確認すると、していない、と返事が返ってきた。

「では、ここで楽にしてやる必要はないわね」

自分の手で殺そうと思っていたけど、フィルベリー王子に裏切られた気持ちを思いしらせたのなら、それでいい。


サラが牢から出ようと背中を見せると、アマンダが叫んだ。


「助けて!

お願い、助けて! サラ!」


冷えた牢で、大けがのアマンダは弱っていくだけだ。痛い、痛いと言いながら。


サラは振り返ることなく牢を出て行く。

クロエはサラに付き添い、レイディンとラムゼルはサラを見ていた。

王妃になるのは、きれいごとだけではない。

レイディンは、サラの横顔が美しいと思った。


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