処刑より重い罰
王子私室に侵入したアマンダは、王宮の地下牢に入れられていた。
ミモリア子爵家に連絡はいったが、度重なる不祥事の娘に子爵は貴族籍からの除籍を提出した。
アマンダがサラの婚約者である王子を誘惑し、それがサラの行方不明の原因であると兄であるオーデア公爵から資金援助を切られたのだ。
オーデア公爵の妹と結婚するにあたり、公爵家が持っていた子爵の爵位を受けたものの領地などない。
派閥の仕事をこなして援助金を受けていたのだ。
自室で謹慎をさせていたアマンダが、王子に会いに行って、王宮で問題をおこしたのだ。
末っ子に生まれた女の子として甘やかして育てたが、貴族の娘として躾もしたはずだと、アマンダの父であるミモリア子爵は身辺整理をしていた。
嫡男はオーデア公爵家に謝罪に行ったまま帰って来ない、次男は自分の実家に行かせた。
子爵は、オーデア公爵家に子爵位を返すつもりだ。
「アマンダ・ミモリア、房を移る。こちらに来なさい」
カチャンと鍵が開けられ、3人の兵士がアマンダを連れ出した。
「ここは貴族牢なので、騎士団にある平民の牢に移る」
平民の牢屋。
アマンダは子爵の娘だ、どういう事だ。
「私の父は子爵です」
それに、王子は自分の恋人なのだ。オーデア公爵領を手に入れるには、自分を手放せないはずなのだ。
兵士はアマンダを可哀想とは思わないが、平民の牢屋で貴族だともめられても困るので、知っている事を話した。
機密事項ではないし、既に貴族の間には知れ渡っている。
王太子が公示したのだ。
「ミモリア子爵夫妻は娘の責任を取って、自害された」
え?
兵士の言葉が、理解できない。
理解したくない。
アマンダは立ち止まって、身体が震えたました。
「う、あ、あ、」
アマンダが頭を両手で抑えて、床に座り込んだ。
父が自害した?
フィルベリー王子は自分を助けてくれない、捨てられた。
「おい、立て!
移動するんだ!」
兵士がアマンダの腕を取って立ち上がらせる。
クスクスと笑いながら、アマンダが歩くと、兵士が怪訝そうに眉をひそめた。
「フィルベリー殿下は公爵令嬢を殺したのよ!
サラ・オーデア公爵令嬢は行方不明じゃない、殿下が殺したのよ!」
アマンダは声の限りに叫んだ。
「私は見たの!庭園の聖堂の地下に行けばいいわ!!」
殿下だけが助かるなんて許せない。
「口止めに、公爵家の侍女も殺したの!」
「おい、黙れ!」
兵士の一人がアマンダを拘束し、残りの二人が前後をかためて騎士団の牢に向かうも、フィルベリー王子の名が出れば、人の注目が集まる。
「フィルベリー殿下は、ヘーミング帝国と繋がっているのよ!」
それが自分の命を脅かすと分からずに、アマンダは叫び続ける。
「その女に虚言癖と、王族侮辱罪を付けておけ」
そこに現れたのは第2王子フィルベリー。
睡眠が取れなくなって、異様な興奮が続き女を抱いて沈めていたが、身体の疲労が癒されるわけはなく、執務が出来ない状態の時にアマンダが来たのだった。
アマンダはフィルベリーの計画を知っているのだ、迂闊な事を話さないかと見に来たら、アマンダの声が聞こえたのだ。
オーデア公爵領を手に入れる為に必要な女だったが、こうなると邪魔でしかない。
睡眠が取れない精神に、アマンダの叫び声は頭が割れるように響く。
うるさくて仕方ない。
「その女は、俺が尋問する。拷問室に連れていけ」
兵士は、アマンダを平民の牢に移動させろと言われているが、王子が拷問室にと言えば、逆らうわけにいかない。
そして、拷問室と聞いて、アマンダが悲鳴をあげた。
「いやあああ!」
眠れなくって、苛ついているフィルベリーは、アマンダで鬱憤をはらそうと考えた。
この女は生きていては、何を話すかわからない。
今も大声で叫んでいるではないか。
拷問室でアマンダを拷問具に繋ぎ、兵士を下げさせると、アマンダとフィルベリーだけになった。
「ようアマンダ、いろいろ叫んでたな」
フィルベリーが鞭を手にすると、アマンダが息を飲んだ。
「イライラしてんだよ。
楽しませてくれよな」
フィルベリーがアマンダの頬を殴ると、アマンダは繋がれた鎖を大きな音を立てながら倒れこんだ。
ガチャ、ガチャッ!!
「これ、何かわかるか? 爪をはがす道具だ」
フィルベリーが楽しそうな笑みを浮かべて、それをアマンダに見せる。
「ぎゃああああ!」
アマンダの悲鳴が拷問室に響いた。
「そうか、女を拷問室に連れて行ったか」
口角を上げたレイディンが、報告を受けていた。
「拷問室の事は、記録に残して置けよ。
女の家には、フィルベリーとやり取りした手紙があるだろう。
フィルベリーの手の者より先に、手に入れろ」
レイディンに頷いたのは、アマンダを平民の牢に移そうとしていた、3人の騎士だった。




