アマンダの末路
オーデア公爵家では、サラの葬式がまだ執り行われなく、アマンダは焦っていた。
フィルベリー王子と連絡が取れなくなって、不安が大きくなっている。
王子が侍女に手を出しているのも知っている。
自分と連絡が取れない王子が、他の女に手を出すのではと思ってしまうのだ。
ビョルンセン伯爵次男ヨルイドが、正式にオーデア公爵家に養子に入った。
子供の頃はサラの夫候補とはいえ、武官の道に進んでいる。
ヨルイドの父は、ビョルンセン伯爵家に婿養子にいったオーデア公爵の弟だ。アマンダとも従兄にあたるが、王国騎士団に所属しているので、文官を統べているオーデア公爵の養子を受けるとは予想外だった。
サラ亡き後、オーデア公爵家を引き継ぐのは、ヨルイドの兄もアマンダの兄もそれぞれの家の嫡男なのでアマンダ自身しかないと、アマンダもフィルベリーも考えていた。
街のホテルでヨルイドを誘惑するのを失敗したアマンダは、ヨルイドから連絡を受けた父親から謹慎させられていた。
男を誘うふしだらな娘、オーデア公爵血流の恥としかりを受けて、公爵家から援助を切られた為に、父親から部屋から出ないように監視を付けられているのだ。
ヨルイドを誘惑した後に殺そうとしていたのは、誰にも知られていないから、アマンダは、すぐに謹慎も解けると思っている。
謹慎が解けたら、フィルベリーに連絡して、ヨルイドを引きずり落とす相談をしようと思っていた。
ヨルイドもいなくなれば、オーデア公爵家の後継は自分しかいない。
オーデア公爵領と資金が欲しいフィルベリーは、アマンダを大事にするしかないのだ。
そうなれば、侍女や他の女に手を出すのを止めさせよう。
アマンダは、ヨルイドを処理した後の想像を膨らませていた。
連絡が取れないアマンダは、フィルベリーが悪夢に苛まれている事を知らない。
オーデア公爵邸では、使用人の入れ替えが行われていた。
公爵は、時間をかけて裏切者を炙り出していた。フィルベリー王子と関係を持っていた侍女と、買収された御者や下働き。
解雇され放逐され、行方不明となっている。
公爵にとって、娘サラを陥れた者達に、当然の処分をしたのだ。
フィルベリー王子と姪のアマンダは、公爵にとって娘サラの仇である。
レイディン王太子から、サラが生存の為にドウバイン王国にいるのは聞いているが、詳細までは分からない。
そして、フィルベリー王子と繋がっていたドウバイン王国王太子が殺されたと一報が入った。
フィルベリー王子は原因不明の睡眠障害で執務が出来ない程に消耗している、と王太子から情報を受け取った。
だが、サラを苦しめた王子もアマンダも簡単に処刑はしない。
アマンダは部屋を抜け出して、王宮に向かっていた。
オーデア公爵が潜ませていた者が、アマンダが部屋から出れるように監視の穴を開けていたのだ。
アマンダは以前もらったフィルベリーからの手紙を持っていた。
それは、王子の部屋来るように書かれていた。
これがあれば、王宮の警備も通ることが出来き、王子の私室に案内される。
もう、何度も通った王宮だ。
悪夢に悩まされて、フィルベリーは睡眠が取れず興奮状態が続いており、それを埋めるように女を部屋に引き入れていた。
コンコン、警備兵がフィルベリーの私室の扉をノックすると侍従が扉を開けたが、アマンダを見ると顔色を悪くする。
フィルベリーの侍従は協力者であるので、アマンダとも面識がある。
アマンダは侍従の様子を見て、部屋に押し入ると、奥の寝室に向かった。
バン!
アマンダが扉を勢いのまま開けると、裸の女の悲鳴があがる。
「きゃああ」
後ろから止めに来た兵士がアマンダを拘束するも、体調を崩して執務を休んでいる王子が女を連れ込んでいるのは、騒ぎで駆け付けた者達の目に入った。
「殿下!」
アマンダの声が王宮に響く。
フィルベリーは兵士に、連れていけ、と一言っただけで、アマンダを庇う事はなかった。
「浮気者!」
それは、アマンダがサラにしたことが、自分に降りかかってきただけだった。
抵抗するアマンダは、兵士達に引きずるように連れていかれた。
この騒ぎは直ぐに王に伝えられ、王太子と対立している王は頭を抱えた。




