表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
乱世乙女の反撃  作者: violet
41/59

男達の暗躍

魔術で飛ばされて来た報告書を握りつぶして、レイディンは(きびす)を返した。

ラムゼルがその背中に声をかけた。

「決まりましたか?」


「ああ、陛下に会って来る」

短い言葉を残して、レイディンは執務室を出て行った。


もっと時間がかかると思っていた。

こんなに早くに決着がつくのは、アロイスが戻ってくるまで、優秀な人間が準備をしていたという事だ。

国は王だけでは成り立たない。

強い王と、優秀な執務官、統制のとれた軍が揃えば最強になる。

今は弱っているドウバイン王国だが、皆が同じ目標に向かうならば、すぐに立て直すだろう。

何より、アロイスは冒険者として各国を回った経験がある。

きっと民の心に添った王になるであろう。


先触れを出していたこともあり、父である王は王の執務室で待っていた。

「失礼いたします」

レイディンは、王の向かいの席に座った。

「人払いをお願いします」

王がいる場所は、常に護衛や侍従、執務官がいる。


「それほどの話か?」

「そうです。すでにドウバイン王国の件は報告がいっているのでしょう?」


ランデルウェア国王ピョートル2世が、手を外に振ると、側仕えの者達が部屋を出て行く。

その様子を確認して、レイディンは用意されていた茶の入ったカップを手に取った。

「ドウバイン王国の王太子がすげ変わりました。

次の王太子は強いです、数年もしないうちに国力を戻すでしょう」

レイディンが面白そうに言うので、王は不審に思う。

「何故、そんな事がわかる。新しい王太子を知っているのか?」


「ええ、とても」

カップを置いて、レイディンは王を見た。

「知己の仲、いえ運命共同体とでもいうべき友人です」


「どういうことだ! まさか、このことを知っていたのか?」

バン、と王がテーブルに手を突けば、カップが震えてカタカタと音を立てた。


「はい、知っていました。

私も王位を望んでいるのですよ、陛下」

ソファに深く腰を掛け、レイディンはおもむろに足を組んだ。


「いつかは順番に王に成る」

レイディンがそれを言っているのではない、と分かっていて王はそれを認めない。

呼び鈴をとり鳴らせば、すぐに護衛騎士が入って来るはずである。

王と王太子、権力の差は歴然としている。


「無駄ですよ。

私が何も準備していないとでも?」

レイディンがパチンと指を慣らせば、王の周りに魔術の渦が起こり、王が息苦しそうにする。

「隠してましたが、私は風を操れます。

陛下が鳴らした呼び鈴の音は、どこにも届いてません。そして、陛下の声という音も封じることが出来ます。

最近、王都の近くまで魔獣が現われたという報告は届いているでしょう?

何回も騎士団を派遣しているのですから。

その理由に、未だに気がつかないのですか?」

風を操れるから、誰も気が付かない聖獣の気配を知ることが出来き、後を追うことも出来た。

「聖獣は、もう聖殿にいません。

王都を守る聖獣がいないから、魔獣が王都に近づいてきているのですよ」

魔獣が出没し、その対処に時間がかかり、サラに会いに行けない日もあったのだ。


「何百年も聖殿で眠っておられたのだぞ、それを何故いないのだ!」

王は、ずっと聖獣は聖殿の地下で眠っていると思っていて、気にも留めていなかったのだ。


「陛下、貴方はフィルベリーに甘い。

フィルベリーがオーデア公爵令嬢にしたことも、薄々分かっていらしたのでしょう?

それどころか、ただ一人のオーデア公爵家直系の子が失く

なれば、オーデア公爵家を手中に納められるとさえ思っていたのでは?」

広大な公爵領は、王家にとっても魅力的な土地なのだ。

フィルベリーを婿にいれて操ろうとしたが、公爵は実権を優秀な娘に与えようとしていた。

「事故なんかじゃない、令嬢はフィルベリーに聖獣のいる穴に落とされたのだ」


「あれは事故でないといけない。

王家とオーデア公爵家が対立してはいけないのだ」


「陛下にとってはそうでも、私にとっては違います。

オーデア公爵にとっても」

「レイディン!」

側仕えや護衛を呼べないことに、ピョートル2世は苛立ちと焦り、レイディンに対する恐怖を覚えていた。


「もう聖獣はいません。この国も変わらねばなりません。

私の魔力は、陛下より大きい。抵抗されても無駄です。

しばらくは王でいてもらいますよ。

我が国は穏やかな、王位譲渡をしますから。

まず、(とどこお)っている私の婚約解消の手続きを進めてください」

話は済んだとばかりに、レイディンが席を立つと、呪縛から解放されたかのように王の呼吸が楽になった。


「王はこの私だ!」

ピョートル2世が剣を抜き、レイディン目掛けて斬りつけるが、レイディンはそれをかわして、自分の剣の鞘で王を叩きのめした。


「陛下が、私に優っているものはないんですよ。

アロイス・ゼン・ドウバインのように、私に血の粛清をさせないでください」

そう言って、レイディンは王の執務室を後にした。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ