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乱世乙女の反撃  作者: violet
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王都ハルシャラ

初めて訪れたドウバイン王国の王都ハルシャラ。

王都にあるアロイスの隠れ家には、魔法陣が設置してあって、転移で行くことが出来た。

アロイスとセイダは、顔がバレると困るのでフードを被っている。

レイディンとラムゼルは王宮に戻ったので、サラ、クロエ、アロイス、セイダの4人である。


町は活気にあふれ、賑わいを見せている。

「串肉が食べたい」

早速クロエが、屋台を物色している。


「あら」

サラはお金を出そうとして、値段に驚いた。

国が違えば物価も違う、それは当然だが、自国であるランデルウェア王国よりはるかに高い。

アロイスも、眉を閉めている。

「俺が国を出る前は、これ程ではなかった」


「あんた達、よそから来たのかい」

串屋のおやじが、金を払うアロイスに串を手渡しながら聞いてくる。

「ああ、あっちこっちを流れて冒険者をしている。4年程前にもこの国に居たんだ」

「いろいろ上がってしまって、値上げしないとやってけなくってね。

味は自慢だから、保証するよ」

美味そう、と受け取った串をクロエに渡すが、アロイスは他の店に視線をおいている。


どの店も高いだけでなく、街の大通りにさえ浮浪者がいる。

貧困層が多いという事だ。

そして、警備のためか軍人が巡回しているようだが数が多い。


「嫌な考えしかないわね」

サラの言葉に、アロイスは返事をしない。

アロイスだって、国を出ても情報は持つようにしていた。

父である王から、王太子のコールハンに政権を移行しているのは知っている。

そして軍部に力を入れていることも、知っている。


軍は金がかかる、それを(おぎな)うのに物価が大きく上がる程、税を取るのは間違いだ。

クレマチスに死を覚悟させるほどの強要を()いたコールハン。

スペアとして育ったアロイスだが、王に成るべき教育は受けている。

それとは遠い王都の様子に、表情に出しはしないが苦しくなるばかりだ。


野菜と肉を買い込み、隠れ家に戻ると、早速仕込みにかかる。

セイダが肉に下味をつけ、サラがスープを作る。

アロイスがサラとクロエの為に客間の準備をしている間、クロエがソファに転がっている。

野営の時の、いつもの光景である。

だが、クレマチスがいない。


「ご飯できた?」

待ちきれずにクロエが食堂に来て、椅子に座る。

クロエがクロエらしくって、サラに笑みがもどってくる。


食事の時間にサラは切り出した。

「何も知らないのは、嫌なの。

どうして、私は狙われたの?」


手にしていたフォークを横に置いて、アロイスは両肘をテーブルにつくと手を組み額を乗せた。

「少し古い話になる」

アロイスが語り始めたのは双子の兄話だ。


「俺は、この国の王子として双子で生まれた。片割れの名前はコールハン、王太子になっている。

双子はスペアとして同じ教育を受ける。

セイダとクレマチスは、俺達の側近候補として幼少の頃から側にいた。

他にもいるのだが、彼らはコールハンの側近として王宮にいる。

俺は王になる気はなかったが、コールハンは欲深い性格で、俺の存在は不安要素だった」

アロイスが語るのは、子供の頃から競わされた双子という兄弟。

「双子なのに、似てないんだ俺達。顔も性格も。

魔力までも違った。俺の方が魔力が多く、コールハンの方が魔術を組むのは優れていた」

アロイスを見るセイダの表情から、アロイスがコールハンにどう思われていたかというのが、よく分かる。

魔力の多いアロイスを次期王にと、押す声があったのだろう。


「コールハンは、隣国の姫と婚約して立太子した。

結婚すると、幾人かの有力貴族令嬢を側妃とした。

そうして、俺は城を出た。セイダとクレマチスがついてくるとは、思ってもいなかった。

王子と高位貴族なんて、市井(しせい)に出れば役立たずだって思い知った。

子供の頃からの付き合いだし、4年の間、俺達は助け合ってきたんだ」

アロイスは、コップの水を一口飲むと、サラとクロエを見た。


「そのうち、クレマチスが情報を流しているのを知った。

妹がコールハンの側妃だからな、拒否出来ないんだろうし、情報を流す事で俺は無害だと伝えていたんだろう。

だが、コールハンはきっとクロエとサラを手に入れようとしたんだろう。

クロエは巨大な魔力があって、しかも俺が傾倒している。

クロエを従えるには、サラを使うのが一番だ。

サラが拉致られた様子を考えると、コールハンは、サラが人質として使えるなら、傷つけろとでも指示していたのかもしれないな。

もしくは、ランデルウェア王国を狙っているなら、サラを殺してクロエを暴れさせて、ランデルウェア王国を弱らせろ、だったのかもしれない。

魔法陣で転移すれば、サラを追いかけてクロエが来るはずだと考えていたのは間違いない。

サラ自身に興味を、持ったのかもしれないな。

兄のコールハンは、そういう人間なんだ」


「それで?」

サラは、アロイスを睨みつける。

「まさか、クレマチスがこんな事になって、泣き寝入りするって?

私は、殺されかかったのだもの、絶対に許さない」


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