表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
乱世乙女の反撃  作者: violet
3/59

サラの事情

「何故、お前はこんな所にいるのだ?

まだ贄の時期ではないゆえ、不思議のう」

クロエが思うのも(もっとも)もである。


「それが、私も状況が理解できてないところがあって。

確実なのは婚約者のフィルベリー第2王子殿下が、従妹アマンダと浮気していたことです」

サラは公爵令嬢として、穏やかに育てられている。

サラの祖母は王家から降嫁していて、王家の血も濃い。王や王妃からも可愛がられて、王子の婚約者になったのも自然の流れだった。

「私が公爵家の一人娘ということもあり、王太子である第1王子殿下ではなく、第2王子殿下が公爵家に婿入りする婚約です。

フィルベリー殿下から聖殿を教えると言われて、王宮の庭にある霊廟の地下に連れて来られて、無理やりこの穴に突き落とされたのです。

想像するに、浮気がバレていると知った二人が共謀して、オーデア公爵家を乗っ取ろうとしているのかと」

クロエは魔獣とはいえ、知能は高い。サラの説明で察したようだ。

「ふーん、つまり今頃王宮では、お前が我の穴に事故で落ちたと大騒ぎしているというのね」


「はい、聖獣様の穴に落ちる意味を知っている人間は、私が食べられたと思っているでしょう。

王子の婚約者がいなくなった事と、公爵家の跡取りがいなくなった事が同時に起き上がったのです」

ですから、とサラは続ける。

「私は絶対に家に戻ります。

私を穴に落として、笑顔を見せていた人間に制裁を加えてやります」


ニヤッ、とクロエの口角が上がる。

サラは綺麗な顔をしているが、柔らかいイメージで深窓の令嬢として何も知らず、大切に育てられたように見えるからだ。

公爵家の総領娘としての教育もされており、それを隠す能力もあるということだ。

「お前、面白いね。上の建物を吹き飛ばせばすぐに出れるぞ」

クロエには建物を吹き飛ばすのは雑作もないことなのだろうが、その建物は王宮だ。

聖殿は霊廟の地下にあっても、横穴の洞窟は王宮の下に広がっている。


「クロエ、それでは問題の解決はできない。

フィルベリー王子が私を穴に突き落としても、護衛達は止めなかった。

協力者がいるはずなの。それを誘い出すには、こっそりここから出たい」

それは公爵家にもいるのだろう。

サラがいなくなったとて、簡単にアマンダが後継になることはないのだ。


「そうだな。

ここから出るのは簡単だ。我がお前を抱いて、穴から飛び出ればいいのだからな。

その後だ。

我は何百年も外の事は、知らぬからな」

「分かりましたわ。

地下の聖殿の所に出られるのですね。

その後は、私が誘導します。王宮は子供の頃から、慣れ親しんでいますから、お任せください。

ましてや、この聖獣様の贄の事は秘密でしょうから、私が食べられたと思っているのは僅かな人間だけです。

堂々と城を出ればいいのです。

だから、手伝ってください」

サラは洞窟に落ちている装飾品を集めていて、クロエに手伝えと言うのだ。

「真っすぐに公爵邸に戻れば危険ですから、しばらく王都に潜伏します。

その生活費が必要です」

贄にされた人間が身に付けていた宝飾品で、生活費を出そうとしているのだ。


「生活費って、お前、風が吹いたら倒れそうなお姫様の見掛けで凄いな」

「領民の生活を領主が守らねばなりませんから、父から教育を受けています」

えへん、と胸を張るサラの胸はふくよかからは遠い。


「あはっは」

声を出して笑うクロエが、サラに手を差し伸べる。

「ほら、行くよ」


サラは、落ちていた古いストールに宝飾品を包むと、立ち上がりクロエの手を取る。

「クロエ、お願いしますね」

クロエは手に取ったサラの手を口元に持っていき、騎士のように口づけを落とす。


「あー、美味い」


「ちょっと、緊張感を返してー!」


クロエとサラ、顔を見渡して笑い出す。

クロエは握ったサラの手を引寄せると、その身体を抱きしめて、行くよ、と繰り返す。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ