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乱世乙女の反撃  作者: violet
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男達の帰還

サラとクロエは、人々の観察が習慣となっていた。

時には屋台の女将と言葉を交わし、馴染みになったカフェや食堂で話の輪に入る。

それは小麦の値段の話だったり、隣国から来た商人の話だったりする。

そんな生活を続けて4日目に、アロイス達が帰って来た。


「クロエ―!」

アロイスが飛びつこうとして、クロエに避けられた。

それでもめげずに、クロエ、クロエと引っ付いていく。


後から来たセイダとクレマチスは、サラの側に来ると小さなブーケを取り出した。

「途中で花畑があったんだ」

「もっと豪華な花を貰い慣れているだろうけど」


元婚約者から、心のこもってない豪華な花は何度も貰った。

2つのブーケを手に持ち香りをかげば、青い草の香りと優しい野の花の香りが重なる。

「ありがとうございます。とても嬉しいです」


クン、と香りが漂ってきて、クロエは横にいるサラを見た。

嬉しそうだ。

誓約したとしても、感情が分かることはない。

だが、サラといると、今までなかった感情が生まれてくる。

サラが嬉しそうだと、クロエも温かくなる。これが嬉しいという気持ちだと理解する。


「アロイス、私に花は?」

豪華な美女のクロエには野の花ではなく、町の焼き菓子の方がいい、急いで帰ってきたのだ。

「すぐに買って来る」

飛び出そうとするアロイスの腕をクレマチスが掴んだ。

「ほら」

荷物の中から、小さな花束を取り出した。

「クロエにも用意してたんだ、お前から渡せよ」


アロイスが照れながら花束を受け取るとクロエの前に膝をついた。

「次は、もっと豪華なのを用意する」


「催促しないといけない男に、次があると思っているの?」

花束を受け取ったクロエは、花を1本引き抜くと、サラの髪に挿した。

「こっちの方が似合う」

満足そうなクロエにサラが礼を言うと、アロイスは自分の荷物から包みを取り出した。

甘い匂いに、クロエがニヤリを笑う。

「たしかに、花よりこっちがいいな」

耐え切れずにサラが笑い出すと、皆もつられて笑い出した。


「お帰りなさい、おケガはありませんか?」

サラが皆に声をかけながら、お帰りなさい、と言える自分が嬉しかった。



それから馴染みになった食堂で夕飯を皆で取って、魔獣討伐の話に盛り上がった。

「街道沿いに出没していた魔獣は2日で掃討できたんだ。

だけど、急に魔獣が湧いて出た。

森の奥の方から、まるで逃げるように猛スピードで大量の魔獣が飛び出して来たんだ。

それの討伐も追加になって、こんなに遅くなってしまった」

森の奥と聞いて、サラは森の奥の湖のほとりで訓練していた時に、クロエが魔獣はいないと言っていたのを思い出した。

クロエの気配で逃げたのが、街道の方だったのだろう、と確信した。


アロイスは次々に料理を注文して、クロエに貢いでいた。

「おやじ、美味い酒はあるか?」

アロイスの声に、厨房から主人がいくつかの酒瓶を持って来た。

「どれも、この近くで作られた酒だ。

この辺りは水が美味いんだ、酒もいいぞ」

では、コレとコレ、とクロエが選んでいる。

魔獣であるクロエは蟒蛇(うわばみ)である。それをアロイス達も知っているが、クロエの好きなだけ選ばせている。

魔獣討伐を終えた男達は、懐が豊からしい。


そんなクロエを見て、サラは思う。

こんなに食べるのも、飲むのも好きなのに、糧として摂取出来ないなんて。


アロイス達がいることで、いつもより遅くまで食事を楽しんで宿に戻った。




カタンと音を立てて、レイディンとラムゼルが姿を現した。

毎夜来るものだから、サラもクロエも来るのが当然となっていた。


「おや、ご機嫌のようですね」

ラムゼルがクロエの様子で、深酒したと聞いてくる。

「ああ、アロイス達が帰ってきたからな」

クロエが面白そうに話すのを聞いて、レイディンの眉が動く。

表情には出さないが、不機嫌である。


サラはレイディンが不機嫌なのが楽しい。

何故か、なんて答えは出したくない。

婚約者のいる人なんて、絶対にありえない。

「クロエ、お茶を淹れるわ。殿下と補佐官もどうぞ」

そうして毎夜の報告会が始まった。


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