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乱世乙女の反撃  作者: violet
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言葉の威力

朝になっても、サラはベッドから出れなかった。

全身、筋肉痛である。

クロエの訓練で逃げまどった結果だ。

サラは普通の貴族令嬢だ、散歩でさえ運動というような生活だったのだ。


ベッドの中で、レイディンから貰った紙を見る。

明記されている名前も覚えるほど、何度も見た。

絶対に引きずり落としてやる。

フィルベリー殿下に、後悔と絶望を与えたい。

言葉に魔力を込める事が出来たら、私を捨ててアマンダを選んだことを後悔するだろう。

『死ね』と言ったら、死ぬだろうか。

いったい、どれだけの人数で何度、私を殺す計画を立てたのだろうか。

クロエの誓約者となり、この魔法も身に付ければ、圧倒的魔力を持つ。

足元にひれ伏しさせれば、命乞いをするだろうか。

助けてくれ、許してくれと、泣きわめくだろうか。


暗い考えばかりが頭に浮かんできて、サラは泣いていた。

これじゃ、フィルベリー殿下と同じレベルの人間になってしまう。


それが、いけない事なの?

自分を殺そうとした人間を許すことなんて出来ない、憎い。

そんな自分は醜い、と思う自分は見栄を張っているだけなの?


ペロン。

不意に頬を舐められた。犯人はクロエである

「あー、美味しい! サラの涙は最高!」


ふふふ、サラに笑いがこみ上げてくる。

クロエがいる。

クロエがいる限り、私は殿下のようにはならない。

もっと高い所から、殿下を見下してやる。

聖女にはなれないけど、普通の人間だから、憎くって、怖い。


「私は壊す専門で、治癒は出来ないのよ。

身体が泣くほど痛いんだね」

クロエは、サラが筋肉痛で泣いていると思っているらしい。


言葉に魔力が含まれてなくとも、クロエの言葉は、サラを元気にさせる。


これが言葉の力、言の葉。

 

言葉は、喜ばせることも、苦しめることも出来る。

どうせなら、喜ばせる言葉がいいな。


「クロエ、ありがとう」

サラが笑顔をみせた。

「それだ、(わず)かだが魔力がのってる」

クロエがペロと舌なめずりをして、美味いと(つぶや)く。


「言葉に魔力があれば、それでも美味しいの?」

では、体液を供給しなくともいいの、とサラは思った。


「これだけでは足りないが、美味い。

この間アロイスの唾液を飲んで、まずくはないが、サラのとは比べ物にならない」

平気な顔で言うクロエに対して、サラが真っ青になった。

「アロイスとキスしたってこと!?

そんな簡単にしちゃダメ!」

「人間で言う食事だぞ?

魔力を唾液で摂取しただけだ」

サラは、クロエに人間の性教育の必要性を知った。

そうしないと、サラの唾液が欲しいと言うに決まっている。


さっきまで考えていたフィルベリーの事は、サラの思考から消え去ってしまった。

「いったい、いつそんな事したの?」

「野営で、サラが寝ている時だな。

アイツも魔力を隠しているが、魔力だけならサラより大きいぞ。

だが、サラの方が美味い」

宮廷にいるような上辺の賞賛ではなく、クロエは本心から誉めているのは分かるが、全然嬉しくない。

でも、公爵令嬢の自分より魔力が大きいって、アロイスは平民ではないと思っていたが、それだけではなく高位貴族、もしくは王族。


他国の王族?


何のために、平民の冒険者の振りをして、この国にいるの?


あそこで、私達を助けてくれたのは偶然?


サラは王子教育で得た、近隣諸国の情報と王族のリストを思い出していた。


言葉に魔力を込めれるようになったら、アロイスに試してみよう。

もう利用される側には、ならない。

そして、クロエと逃げるわ。




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